平成15年11月14日

 ある日、彼女の遺体を買い取った。昔、彼女を買うために貯金していたから、一括で払うことが出来た。あと数万持っていれば、彼女を救えたのかもしれない。

「お久しぶりです、オーナー。」

「来ると思ってたよ。」

「ミオ…212を引き取らせてください。」

「悪いけど、は商品なんだよ。」

「分かりました。幾らですか?」

「1500万、くらいかな。」

「はい。」

札束がぎゅうぎゅうに詰まった袋を半ば投げるように置いた。

「また来てねー。」

「誰が来るか、人殺しが。」

僕は小さく呟いた。



 死んでから初めての夢を見た。とても甘くて、とても苦い夢だった。私の人生の一部なのだろう。あの人は元気だろうか、心配だ。だって多分あの人は、私のことが好きだったから。今さっき気付いたから確証はないのだけど。私も、名前くらいあげればよかった。



 

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