第58話 警察内のヒーローとの顔合わせ

 翌日、警察側のヒーローとの面談が行われることになった。



 国家ヒーローの中には、当然警察に所属するヒーローもいる。


 通常の警察官の資格に加えてヒーローとしての資格も保持するため、エリートとしてみなされているのだが……激務であるため、人気という点では今一つらしい。





 僕たちヒーロー科一年グループが、石塚いしづかの案内で、警察署内の小会議室に入っていく。


 席にかけてくつろいでいるように言われたため、椅子に腰かけて待つことにした。





 しばらく待っていると、石塚をはじめとして、四人が入ってきた。


 この四人が芙士ふじ警察署の、ヒーロー部担当らしい。





「初めまして。このグループのリーダーをやっている、永瀬英二ながせえいじといいます」


 中年くらいの人が、僕達に挨拶してくれる。





「永瀬……あれ? そういえば学校の先生も永瀬だけれども……?」


 顔立ちが少し似ているため、気になって思わず僕の口から言葉が出てしまった。





「ああ、彼は弟だよ――そうか、君たちが期待の一年生たちというわけだな」





 どうやらめあちゃんを救出したことを、弟経由で聞いていたらしい。


 視線がやや、穏やかなものに変化する。





「へえ~。ってことはかなり、期待できるということだよな! 頑張ろうぜ!」


 後ろにいた若い男性が、声を上げた。





「こら小早川こばやかわ、自己紹介の途中だぞ……全く」


 どうやらこの小早川という若者は、少し先走る傾向があるようだ。





「おっと、失礼。俺の名前は小早川尚こばやかわなお。こんな名前だが男だ。「なおちゃん」とか言ったら遠慮なくぶっ飛ばすから、そのつもりでいてくれ」


 かなり物騒な自己紹介である。





「警察官である前に、ヒーローだからな……我が強い人間が多くて、大変なのだよ」


 永瀬がぽつりと、つぶやいた。





「私は中村薫なかむらかおるです。よろしくお願いします――この小早川みたいなバカが警察のヒーロー部の平均だとは思わないでいただけると、助かります」





 こちらはこちらで、結構辛辣である。


 知的な感じを受ける、そこそこ美人な人だ。





「は、初めまして。新島にいじましずくと申します。主にオペレートを担当させていただきます。よろしくお願いします」





 小早川と同じくらいの年齢の、若い女性が最後に名乗った。


 ちょっと大ぶりなメガネをつけていて、内向的な印象を受ける。





「今回ヒーロー科に担当してもらうのは、このヒーロー部との連携ということになる。何かしらの異常を発見したらすぐにヒーロー部に連絡し、指示を仰いでほしい」





 石塚が僕たちに、説明してくれた。


 基本的に僕たちは、異常が無いかチェックすること、そしてヒーロー部に連絡することが任務となるらしい。


 そのため積極的な交戦を行うよりも、連絡の方が重要であることが伝えられた。





「もっともヒーロー部も人数が少ないからな……場合によっては現状維持のために、ある程度その場で戦闘してもらう可能性もある」





 永瀬隊長を含めて、行動できるのはわずか三人だけなのだ。


 当然そういう事態は容易に想像できる。





「警察の上部に、ヒーローが警察に入るのを嫌がる動きがあってな……全く愚かとしか言いようがないのだが」





 ヒーローと警察では、指揮系統が異なることになり、またヒーローにはある程度独自の権限が付与されている。


 そのため警察官の中に、ヒーローが加わることを嫌がる動きがあるらしい。





「特に室井むろいという奴は、本当に腹が立つ……上に対してはヘコヘコして、こちらに対しては嫌がらせを行ってくるような外道だからな」





 そんな人間もいるのか……。


 今回の任務に口を出してこなければ、いいのだけれども。

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