第44話 ヒーローとネットワーク
体育祭が終わり、通常の授業が戻ってきた。
「今日は、ネットワークについて講義を行う」
「現在ヒーローの戦闘範囲は、陸、海、空にとどまっていない。その最たる例がネットワークであり、第四の戦場といわれている」
メモを取りながら、熱心に授業を受ける。
「ネットワークは、現在
家にもネットにつなげるパソコンがあるので、他人事ではない。
バグ以外にも、ウイルスソフトなどのような悪意を持った存在があるため、注意が必要なのだ。
そのためセキュリティソフトの需要と機能の強化は、IT業界全体の最優先課題となっている。
「また、ヒーローの中にはネットに適応した者たちも存在する。これを『ネットダイバー』と呼び、ネット空間の治安維持には欠かせない存在になっている」
ネットダイバー……ネットの中で、バグたちと戦うヒーロー。
この人たちのおかげで僕たちは、ネットの利便性を手放さずに済んでいるのだ。
「実は私の知り合いにも、ネットダイバーが存在する。それも世界でもトップクラスの存在であり、今週の金曜日にはその人物の力を借りて、ネット空間での実習を行うつもりだ」
!?
僕たちも、ネット空間に入ってバグと戦うの!?
「本来は二年生の、
その言葉を最後に、今回の授業は終了した。
「ネットの中に入る……なんだか緊張してきたよ」
僕が
「いったいどんなところなのか、楽しみだな。特に掲示板をチェックしたい」
久朗はむしろ、楽しみにしているようだ。
「バグにも俺の拳が通用すればいいのだがな」
「大丈夫ですよ。デバイスも武器も持ち込み可能なはずです」
それならば僕たちの戦闘能力も、十分に発揮できそうで一安心である。
「にゃ。私もネットダイバーの資格、持っているにゃ」
え!?
みかんちゃん、資格を持っていたの!
「守先生の言うネットダイバー、心当たりがあるにゃ。遊びながらバグを倒す、滅茶苦茶な力を秘めたヒーローにゃ」
そんな人が協力してくれる、実習……なんだか少し、緊張してきた。
「私だと自分だけしかネットに入れないんだけれども、その人ならば全員で入っても余裕にゃ。あの人に会えるというだけでも、今回の実習は受ける価値があるにゃ」
みかんちゃんが、いつもの眠そうな目ではなく、本気の目をしている。
かなりその人のことを尊敬しているようだ。
「あ、あとネタ晴らしになるけど、ネットの中では重力が働かないにゃ。宇宙空間で戦うような感覚なので、地面がない所では注意が必要にゃ」
それは聞いておいて、本当に良かった。
恐らく先生たちはいきなり放り込んで、あたふたする僕たちを楽しもうと思っていたのかもしれないけれども……。
「ホームページのような安定した場所では、重力が働くにゃ。それ以外の場所は重力がないので、レイヴンみたいに飛行できるタイプが有利になるにゃ」
みかんの説明が続く。
なんだか先生よりも、詳しいような……みかんちゃんはどうやら、自分の興味のある分野に関してはすごく勉強するタイプのようだ。
「無重力になることを知っているだけでも、パニックを起こさなくて済むと思うにゃ。意地悪な先生を少し驚かせてやろうにゃ」
みかんが少し悪い顔で、ほくそ笑んだ。
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