地獄の日【前】

体育祭。それはクラスが団結し、優勝を目指すという絆が深まる素晴らしい行事である。そう一部を除いて。

僕のような運動音痴にとっては地獄であり、苦しい行事である。中学までは1日だけだったが、高校に入ると何故か2日に増えていた。同級生共は「2日ってまじ?よっしゃー!」とか喜んでいるがちょっとはこっちのことを考えてください。クラスで誰がどの種目に出るかが、決められるときなるべく疲れないやつにしようと、綱引きや、玉投げに立候補したが、見事なまでに全て負け台風の目と、5人6脚に出ることになってしまった。そして最も嫌だったことは「えー、長縄は全員参加です。」長縄が全員参加であることだ。もう体育祭の後僕は灰になるのだろうと、思いつつ、時間は流れていった。

家に帰り、筋肉痛で痛む足を那心は踏みながら「ははは!おにぃが運動してるまじうけるんだけど!」「那心ちゃん。お兄ちゃんは筋肉痛で痛いんだマッサージとかしてくれない?」「今頃マッサージしても遅いから。まぁ冷えピタでも貼っとけば?」その夜僕は筋肉痛で痛めた部位を冷えピタで冷やし寝た。

朝起きても筋肉痛が酷いちょっとはマシになったが痛いこのには変わりない。二人三脚ではチームメイトに「ちょっと聖華くんもっと歩幅合わせてくんない?」とか「コーナーリング早くしてよ!」など運動音痴&帰宅部の僕に無理難題を押し付けてくる。

台風の目だってそうだ「セイお前足引っ張ってんじゃねぇよ」と言ってくるのだ。そして皆口を揃えて言う言葉は「聖華ってさ勝つ気あんの?」と言う。

正直言うぞ僕は勝ち負けとか関係ないんだ。ただ安静にそして安全に終わりたいだけなんだ!と言いたいが、流石に言える訳でもなく僕はひたすらに練習をした。

そして日は流れ本番1日目。1日目は出る競技はなくひたすらに選手達の汗と涙の結晶とやらを日差しの強い中じっと見ていた。そして1人の選手がその場で倒れる。その選手は僕のクラスメイトだった。「おい、アイツって次の綱引き出るよな。」「え!私委員会で仕事あるし。」「空いてる選手っていたっけ?」クラスが慌ててる中僕は死を感じた。怪我人が出た場合代わりに出なければならないという地獄のルール今この場で1番暇な人物は1人しかいない。そう、僕だ。「そういえば聖華くんって当番とかなかったよね。」「じゃあセイ出てくれ!」ほらきた。何故だ僕が何をしたっていうんだ僕はただ平和に過ごしたいだけなのに。そう心の中で嘆きながらも僕は「わかりました行ってきます」と言い、観客席を出て、綱引きへ行った。

結果は、勝利。クラス一の大食い大多喜くんが腹にロープを巻き付け仁王立ちし、1歩も動かず、圧勝に終わった。「ナイスだ大多喜!お前がいてくれて良かったぜ!」「大多喜くんカッコイイ!」など、本日のMVPである大多喜くんを皆が拍手をし、出迎えた。僕には「お、セイおつかれー」言っただけだった。あと1日僕のメンタルと、体力は限界に達していた。

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