第19話 橋脚

次の日、睡眠と食事を終えた一行は施設の出入り口の外側にいた。


アライさんは首からオイナリサマのお守りをさげ、SS天候制御場で見つけた大きなリュックサックを背負っている。


中にはプラスチックの容器に入ったサンドスター、同じく施設で見つけた書類や応急手当品、ジャパリまんとボトルに入ったが入れてある。


フェネックは胸ポケットに地図とコンパス、首からは双眼鏡を下げている。


ミミ「戦いは助手とアムトラ、サーバルにまかせて、フェネックは周囲の警戒を頼むですよ。アライグマ、お前は荷物運びですよ」


フェネック「わかったー」


アライさん「おまかせなのだ、アライ隊、しゅっぱーつ、なのだー」


フェネック「はーいよっ」


アムトラ「おー」


サーバル「いっくよー」


フェネックのが方向を確認したのち、ぽつぽつと草原をジャパリフジのほうへ向かう一行。


途中、フェネックが大小セルリアンの集団を見つける。


ミミ「(アライグマはここでフェネックを守るですよ)」


アライさん「(おまかせなのだ)」


アライさんは静かにリュックサックをおろす。


ミミが空から不意をついて戦端を開き、アムトラが大型セルリアンを、サーバルが小型をねらう。


フェネック「終わったみたいだよ」


アライさんがその三人の姿を確認できるころには、辺りにサンドスターが散らばっていた。


アライさん「ふへー、アライ隊はやっぱり無敵なのだ」


アライさんはオイナリサマと一緒にサンドスターを回収する。


アムトラ「ここらへんだよ」


フェネックが地面をなでる。


フェネック「…やー、たしかに地面がやわらかいねー。粘り気もありそうで、思わず掘り返したくなっちゃうよ」


アライさん「やめるのだ、フェネック」


ミミ「ふむ…ジャパリフジへの距離はまだまだあるですね。さて…どうしたものか」


フェネック「ふーん、ジャパリフジってあんな色してるんだー」


フェネックが双眼鏡をのぞきながらつぶやく。眼前には、赤黒い大山がそびえている。


アライさん「違うのだ。アライさんが知っているジャパリフジはもっと違う色をしていたのだ」


サーバル「んん?あれ、なんだろー」


フェネックは双眼鏡を構えなおし、そちらの方を見る。


フェネック「んー?アライさん、ちょっと見てみてー」


アライさん「どれどれなのだ」


何やら石造りの柱が見える。


アライさんはのぞき込み、しばらく観察したのち、「それ」にそって視線を動かし始めた。


アライさん「(あそこから伸びているのだ)むう、アライさん思うにジャパリラインの線路なのだ。あそこから地面のしたにもぐっているようなのだ」


フェネック「ちょっと待ってて」


フェネックは地図を取り出す。


フェネック「ははー、この線かな」


アライさん「きっとそうなのだ!むむっ、フジサファリ。この駅はジャパリフジに一番近いのだ」


サーバル「あれを伝っていけないかな?」


アライさん「むぅ…ほとんど崩落しているのだ。落ちた残骸も見つからないのだ。きっと地面に沈んでしまったのだ…」


ミミは少し考えこんでいた。そして、切り出した。


ミミ「よし…フェネックの案でいきますよ」


フェネック「へ?」


ミミ「運ぶですよ。少しづつ…線路の橋脚を使って。あの距離なら…おそらく不可能ではないのです」


アライさん「頼めるのだ?」


ミミ「助手、やるときはやるですよ」


一行はジャパリラインの残骸のほうへと歩みだした。


ミミ「ここから地下へ伸びているようですね」


アムトラ「ここを通っていけば、天候制御場?の下に出られるのかな」


フェネック「とてもやりたいとは思わないけどねー」


ミミ「さっさと始めるですよ」


ミミは先にフレンズたちを運ぶ予定の橋脚に飛び、入念にその様子を調べる。


ほどなくして戻ってきた。


ミミ「フェネックから運ぶのです。そしてサーバル、アムトラ…アライグマの順にするです」


フェネック「はいよー」


ミミは運び始めた。


軽い順、といっても元「けもの」ほどの差はないが、万が一のことを考えてだ。


アムトラを乗せようとしたときに異常を認めたときにすぐに中断できる。


アライさんを最後にしたのは、お守りを持っているからだ。


ミミ「フェネック、サーバル。なるべく橋脚の真ん中のほうにいるですよ」


フェネック「わかったー」


サーバル「すっごーい。空を飛んだのなんて初めてだよ!」


ミミ「サーバル、あまりはしゃぐんじゃあないですよ。たぶん、この先橋脚はどんどん不安定になっていくですよ」


ミミは続けてアムトラとアライさんを運ぶ。


それを橋脚から橋脚へと繰り返す。


ミミ「ふむ…ここは橋げたが残ってるですね」


サーバル「これなら歩いて行けるんじゃない」


そういってサーバルは駆け出した。


ミミ「サーバル!よすのです」


フェネック「サーバル!」


橋げたが崩れ始めた。


フェネック「わー!」


サーバル「うみゃあああぁぁぁ!」


アムトラ&アライグマ「あぁっ!」


橋げたと一緒に落下するサーバル。


フェネックは急いで橋脚の露出した側に避難する。


ミミが急降下してサーバルを空中でキャッチ、そして橋脚に戻る。


橋げたは地面に落下し、土煙とドロドロの飛沫ひまつをあげ、そして沈んでいく。


ミミ「何を勝手なことしてやがりますか!こんなところから落ちて埋まったらだれも助けられないですよ!フェネックの話を覚えていないのですか!!」


サーバル「うう…ご、ごめんね」


ミミはアムトラとアライさんを運ぶ。


アライさん「サーバル、無事でよかったのだ。助手、大丈夫なのだ?」


ミミ「ふぅ、少し休むですよ」


サーバルはしょげている。


オイナリサマが現れて言った。


オイナリサマ「サーバル、先走っちゃダメですよ。さあ、みんなジャパリまんでも食べましょう」


アライさんがリュックサックからジャパリまんを取り出した。


アライさん「あっ、ジャパリまんが転がったのだ、待つのだ。…わっ、とっとっと」


アライさんが橋脚から落ちそうになるのをアムトラが引っ張り戻す。


アライさん「助かったのだ…アムトラ、ありがとうなのだ」


オイナリサマはため息交じりに手の幻影を頭に当てている。


ミミ「…先が思いやられるのです」


そして、食事を済ませた一行は再び、橋脚渡りを再開した。


ミミ「この橋脚は傾いているのです。その向こうのも…」


ミミが他のフレンズの待つ橋脚に戻ってきた。


ミミ「ここからは二人づつ移動するですよ。落っこちても助けられないので覚悟するですよ。アライグマは落ちる前にお守りを残していくです」


アライさん「うう、落ちないように気をつけるのだ」


ミミは今度は橋脚にフレンズが二人のみ残るような形で運んでいく。


フェネックが双眼鏡をのぞく。


フェネック「んー、なんだか地面の様子が変わってきたね」


サーバル「なんだかキラキラしてるよ」


ミミがアムトラとアライさんを一つ手前の橋脚に運び終え、次の橋脚にフェネックとサーバルを運ぶために飛んできた。


フェネック「助手ー、なんか地面の様子が変わってきたよ」


ミミ「そのようですね…このまま続けても大丈夫かちょっと調べるのです。お前たちおとなしくしてるですよ」


フェネック「気をつけてねー」


ミミは低い位置を飛んだ。


ミミ「(ふむー、赤黒い何かの結晶が地表を覆っているのです。しみだしたセルリウムが固まったものでしょうか。何にしてもこの上を歩くのは危険すぎるのです)」


ミミが橋脚の上に戻ってきた。


フェネック「どうだったー」


ミミ「よくわからないのです。とりあえず続けるですよ」


しばらく後。フェネックが双眼鏡をのぞいた。


フェネック「んん、大きな建物が見えてきたよ」


サーバル「あれがアライさんの言っていた駅、かな!」


フェネックとサーバルの耳がピコッと反応する。


サーバル「助手、ちょっとアライさんとアムトラのところで休むってー」


フェネック「うん、そうみたいだねー」


そうして、ついに、フジサファリ駅まで一行を運び終えた。


オイナリサマは手を体の前に掲げ、集中しはじめた。


オイナリサマ「はぁあああああ!」


まばゆい虹色の光が部屋を満たす、駅はかつての姿をとりもどしていく。


ミミ「さすがの天才助手もくったくたなのです…頭サーバルになりそうなのです」


オイナリサマ「おつかれさま…ワシミミズク、よくがんばりましたね…」


フェネック「どもどもおつかれー、ありがとー」


アムトラ「助手大変だったね、ゆっくり休んで」


サーバル「うう、迷惑かけてごめんね、ありがと」


アライさん「あとはアライさんたちにまかせるのだ。アライさんたちが宝探しをしている間、ゆっくりと休むのだ」


ミミは苦笑いを浮かべながら言った。


ミミ「面倒ごとを起こすんじゃないですよ…外へ出てはダメなのです」


オイナリサマは駅舎の建物に結界で張った後、言った。


オイナリサマ「その前にごはんにしましょう」


フェネック「そうもいかないみたいだよー…」


オイナリサマ「!!」


一同はハッとなる。

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