第18話 贈り物

耳をつきあわせて書類とにらめっこする五人と一柱。


ミミ「ふむー、どうやらパークセントラルの何かがセルリウムによる汚染を広げていたですよ」


ミミ「そして、それがジャパリフジに達して、ある程度の規模の汚染に達したとき…アライグマの言っていたジャパリフジが火を吹き、セルリアンの大量発生につながった…推測にすぎませんが、そう考えるのが自然ですよ」


オイナリサマ「なるほど…ありえますね」


アライさん「もう一度地下に行ってみるのだ?」


ミミ「そうしたいですが…状況を考えるにおそらくこれが最新の情報だと思いますですよ。この拠点をつぶされるリスクを冒してまでやる価値はないと判断するですよ」


アムトラ「ジャパリフジへはどうやって行こう?」


フェネック「助手が空を飛んでみんなを運んだらどうだろー?」


ミミ「無茶言うなですよ、遠すぎ高すぎなのです。良い風が吹いたところで、助手一人でもたどり着けるかわかったもんじゃないのですよ」


このとき、記録によれば750mあったジャパリフジは、山体が崩壊しているものの、まだ標高500mほどはあり、ジャパリパーク一の高さだ。


ふもとからの標高差が大きく、数字以上に高く感じる。


フェネック「そっかー」


サーバル「うーん、どーしよー」


アムトラ「むーん、」


オイナリサマ「…」


アライさん「とりあえず、行けるとこまで行って調べてみるのだ」


ミミ「そうですね、サーバルみたいに無神経に跳ね回らなければ大事には至らないのです」


サーバル「ううー、ごめんねー」


サーバルがしょげているのをオイナリサマとアムトラが励ます。


ミミ「サーバルの足が回復するのを待って、見にいくですよ。いっそこの施設を空っぽにしたほうが安心安全なのです」


アライさん「よーし、じゃあそれまで宝探しの続きをするのだ!」


フェネック「はーいよー」


アムトラ「えーっ…」


ミミ「地上からセルリアンをわかせるんじゃないですよ」


オイナリサマ「上の部分だけにするのですよ、あと、先に言った大事な部屋には近づかないように」


アライさん「わかったのだ」


アライさんがバタバタとせわしなく施設を駆け回る。


やがて、アライさんが何かを持ってフェネックと戻ってきた。


ミミ「お、それは何なのです」


アライさん「ふっふっふっ、ちょっと外へ出るのだ」


アムトラ「(ウズウズ)」


サーバル「アムトラも行ってきなよ。わたしは後で見せてもらうから」


アムトラ「えっ、うん…ありがとう」


アライさん「ちゃんとサーバルにも後で見せてあげるのだ」


サーバル「ありがとー!」


オイナリサマ「どこへ行くのです?」


アライさん「結界の外へは出ないのだ!」


アライさんたちは制御場の出入口のすぐ外にいた。


アライさん「フェネック、のぞいてみるのだ」


フェネック「どれどれー、やー、すごいよアライさーん」


フェネックは双眼鏡をのぞいて声を漏らした。


フェネック「なるほど、この部分で…おぉ~、くっきり見える」


ミミ「どれ、助手にも貸して見せるのです」


ミミは半ば強引にフェネックから双眼鏡を取り上げた。


ミミ「むむ、これはすごい…」


アムトラ「ボク、ボクにも見せて!」


ミミ「もうちょっと見せるのです…」


その後、アムトラもうれしそうに双眼鏡をのぞいている。


アライさん「フェネック、あれをあげるのだ」


フェネック「えー、いいの?アライさんが見つけたお宝だよ?」


アライさん「あれがあればフェネックの死角が無くなって無敵が高まるのだ。アライさんはお守りを下げてなくちゃいけないし、元からあまり目がよくないから、フェネックが持っているといいと思うのだ」


ミミ「助手のアイデンティティのひとつを奪われるのはシャクですが、飛ぶのに邪魔だから仕方がないのです」


アムトラ「ボクもこれを下げたまま戦ったら壊しちゃうかも…」


そう言ってアムトラは双眼鏡をフェネックに手渡した。


フェネック「やー、ありがとー…」


8倍率の小さな双眼鏡、樹脂でできているので軽く、フェネックが身を守る障害にはそれほどならなさそうだ。


フェネックは双眼鏡をのぞく。


フェネック「おぉー、セルリアンはっけーん、近づいてくる様子はないねー」


ミミ「アライグマが地上でわかしたわけではなさそうですね。一方的に襲われるばかりではなくなったのです。よくやったですよ、アライグマ」


アライさん「ふおぉ、助手にほめられたのだ!」


フェネック「よかったねぇ、アライさーん」


一同は施設の中へと戻った。

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