第17話 地下室

階段の先に出入口をぬけると、細長い広い空間があった。


一段低くなった床のように見える場所には、下水のように、かつて見た赤黒いタールのようなものが流れている。


フェネック「制御場の地下にアレがあるなんてねー」


アライさん「フェネック、大丈夫なのだ?」


フェネック「うん、ちょっと慣れたよー。砂嵐ほどじゃないねー。アライさん、ここなんだろー」


アライさん「あれは…。バス、バスなのだ!」


ボロボロになって、半分骨だけになったバスのようなものが、なぞの液体の川の中にあった。


フェネック「えー、あれも「ばすてき」なのー。おっきいねー」


アライさん「「ばすてき」のもとになったものなのだ!」


アライさんは周囲を見わたす。壁に、大きな札がはりついているのを見つける。


アライさん「ふむー」


フェネック「アライさん、わかるのー」


アライさん「これは「新研究センター」という、駅なのだ。「ジャパリライン」…むー、おそらく、ここは地下鉄のホームなのだ」


フェネック「え、ちょっとわかるように言ってよー」


アライさんは、説明を始める。


バスは誤りで、バスを改造して作った鉄道であること、その車両がフレンズや荷物を運んでこのような駅にとまって乗降することなどをだ。


フェネック「…ふーん、なんとなくわかったよー」


アライさん「あそこにドアがあるのだ…フェネック大丈夫なのだ?」


フェネック「せっかくだし見てこっかー。なんとかなるでしょー」


アライさんはドアを慎重にあける。そのとき、何かがゴトッと落ちた。


アライさん「びくっ!」


フェネック「やー、なんだろーこれー」


何か風化した卵のようなものが落ちてきた。


アライさん「ふむぅ、わからないのだ。でもお宝じゃなさそうなのだ」


フェネック「んー、結構広いねー」


アライさん「紙や本がいっぱいあるのだ」


アライさんは机の上にあるそれを一つ手にとって、読み始める。


フェネック「やー、アライさんはすごいねー、今度わたしにもどうやるのか教えてよー」


アライさん「もちろんなのだ!」


アライさんは書類をじっと見ている。


アライさん「…」


フェネックはその様子を静かに見守っている。


ほどなく、フェネックの耳が何かを察知する。


フェネック「アライさん、何かいるよ、ほーむ?のほうだ」


アライさん「!、とりあえずこれらをまとめて持って出るのだ!」


部屋の出入り口から出ると、液体の川に流されてセルリアンがいくつか鉄道車両の残骸にひっかかっていた。


アライさんたちを見つけて、ホームにのぼってくる。


アライさん「アライさーん!ウルトラスーパーデラックスキーック!!」


「パカァーン」


セルリアンは砕け散り、そこにサンドスターが残った。しかし、次々とホームにのぼってくる。


アライさん「階段で上に逃げるのだ!フェネック」


フェネック「はーいよー」


階段を急いで登る二人、後をセルリアンがぞろぞろとついてくる。


フェネック「!!上からも何か来るよ!」


アライさん「は、挟みうちなのだ!」


ミミ「何をしてるですか、お前ら、今大変…って、なんですかぁ、あれはー!」


アライさん「なんだ、助手か。逃げるのだ!!」


フェネック「急ぐよー」


地上階へ着いた。


アライさん「みんないるのだ?閉めるのだー!」


階段へ続くドアを閉める。


ミミが急いでロックをかける。


まもなく、ドアにドカドカと衝撃が走る。


オイナリサマの声が響く。


オイナリサマ「な、何事です!?」


ミミ「セルリアンが地下からわいて出てるですよ」


オイナリサマ「なんですって!?こんな時に…」


オイナリサマが結界を地中部分に広げる。


オイナリサマ「(むむ…なるほど…)」


ドアへの衝撃は止んだ。


ミミ「まったく…アライグマはとんだトラブル体質ですね。オイナリサマ、大丈夫ですか」


オイナリサマ「まさか地中から現れるとは…広い敷地を結界で覆い続けるのはサンドスターの消耗が激しくて不可能です…くっ、あやつら、あきらめるということを知らないようですね」


ミミ「頭アライグマなのです。開けるですよ」


フェネック「ええっ」


アライさん「来てる分だけやっつけるのだな?」


ミミ「ふむ、せん滅するですよ」


ミミはロックを解除してドアを開ける。


ミミ「オイナリサマ、地中の結界を消すですよ」


オイナリサマ「わかりました…健闘を祈ります」


ぞろぞろと階段を上がってくるセルリアン。


ミミ「出口を三人でがんばるのはムダなのです。アライグマ、少し離れて正面に立つですよ。フェネックと助手は左右に陣取るです。出てくるところを三方から攻撃するです」


アライさん「おりゃあああぁ!アライさんスペシャルー!!」


ミミ「いちいちうるさいのです、っよっ!」


フェネック「っやぁーーー!」


「パカァーン」


狭い通路から出てくるセルリアンを三方向から攻撃する。


しかし、次第に相手にする数が二体、そして三体と増えていく。


ミミ「(くっ、思ったより数が多いのです。押されているのです)」


アライさん「ぶべっ」


アライさんが転んだ。


フェネック「っ…アライさん!」


ミミ「アライグマ!」


せきを切ったようにセルリアンが湧いて出る。


アライさん「う、わあぁぁぁ!」


そのとき、素早い影が通り過ぎ、セルリアンが砕け散る。

影はそのままセルリアンを蹴散けちらしながら、階段通路の奥へと入っていく。


アライさん「アムトラ!」


ミミ「帰ってきたですか…アムトラ、あまり奥へは入るなですよ、後から湧いてキリがないです!」


アムトラ「わかったー」


まもなく、アムトラが出てきた。


アムトラ「…たぶん全部やっつけたと思う」


アライさん「アムトラ!ありがとうなのだ、助かったのだ!」


アムトラ「アライさんたちが無事でよかったよー」


フェネック「あれ?サーバルは?そういえば…助手たちあわててて、何かあったの?」


ミミ「そうなのです!アムトラ、」


アムトラ「うん、サーバルはあっちの部屋にいるよ」


一行は、いつも使っている部屋へと向かった。


サーバル「うみゃー…」


オイナリサマ「サーバル、大丈夫ですか?」


ミミ「オイナリサマがアムトラのお守りを通じて言っていた通りなのです。足の裏がただれているのです…フェネックの両手ほどではないですが…」


フェネック「何があったのさー…」


アムトラ「サーバルとジャパリフジのほうへセルリアン狩りに行ったら…近づくにつれて、なんだか地面が柔らかくなっていって…そのうちサーバルがジャンプして着地したときに足がめり込んで煙があがり始めたんだ。ボクのせいだ…もっと安全なことがわかってる場所で…」


サーバル「アムトラは悪くないよ!わたしが行きたいって言ったんだよ…」


ミミ「この程度なら問題ないのです、お互い自分を責めるのはやめるです。面倒なので」


アムトラ&サーバル「…」


アライさんがサーバルの足をタライの水できれいにし、ミミが薬を塗りながら言う。


ミミ「しかし怪現象ですね…地下からのセルリアンといい、アライグマ、フェネック。お前らは何をやっていたのですか?」


アライさん「!そうなのだ…!」


アライさんはスカートのウエストに突っ込んであった書類を取り出す。


アライさん「フェネックのケガも、サーバルのも、みんな…このセルリウムってやつのせいなのだ!」


オイナリサマ「セルリウム?」


アライさんとフェネックは地下で見たことを説明した。


アライさんは書類に書いてある内容を、わかる範囲で話す。


セルリウムがセルリアンを生み出していること、そして大地を地下から溶かしている可能性があることをだ。


ミミ「なんと…」


オイナリサマ「この施設がくみあげているのは…おそらくそのセルリウム…館で浄化しても…大地を溶かされてしまってはおしまいです…」


アライさん「まだ、そうと決まったわけじゃないのだ!」


ミミ「アライグマの言う通りですね…さしあたり、セーバルが何かを知っている可能性が高いので、ジャパリフジへ通じる安全なルートを見つけるのが先決だと、この天才助手は考えるですよ」


フェネックはアライさんの持ってきた書類をながめている。


フェネック「ねー、アライさーん、この紙の小さな地図ってなんだろー?」


アライさん「むぅ?…どうやらパークセントラルを中心に地面が腐っているようなのだ!」


ミミ「アライグマ…オイナリサマを交えて書類をみんなで読み直すのです。少しでも正確だと思われる情報を集めるですよ」


アライさん「わかったのだ」

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