第15話 巡合

次の日。


一行はSS天候制御場の部屋でごはんを食べていた。


フェネックもベッドで食べている。顔色も昨日よりずっとよくなっていた。


サンドスターが十分ならばフレンズの回復は早かった。


フェネック「アライさーん、ジャパリまんのかけらが机の上にこぼれてるよー」


アライさん「おっと、もったいないのだ」


アライさんはそれを拾いあげて食べている。


ミミ「フェネックが回復するまで、しばらくここに留まるですよ」


フェネック「…ごめんねー、わたしのせいでー…」


ミミ「助手は謝罪の必要性を認めないですよ。フェネックの優秀な耳に…優秀なミミ…ブフッ」


ミミは真顔で噴き出している。


アムトラ「助手…」


フェネック「…あー…これはいけないねー」


アライさん「ぶわぁはっはっはっ、ぶひゃー、助手が、助手が面白いのだー、ぶひゃひゃ」


ミミ「…アライグマにだけ大うけするなど…大変な屈辱なのです…ともかく、フェネックの耳には助けられたですよ。アムトラもアライグマもよくやったと、助手は評価するですよ。だれ一人かけることなく、このエリアを解放した。十分すぎるでしょう」


オイナリサマ「その通りです。一時はどうなることかと思いましたが、本当によくやってくれました」


アライさんはまだ笑っている。


ミミ「それと…アライグマ、笑うのをやめるのです…これを返すですよ」


ミミはお守りをアライさんに差し出す。


アライさん「いいのだ?」


ミミ「いいも何もそれはお前がオイナリサマから授かったものです。ちょっと借りましたが、助手が持っていて飛んでいるときに落とすと厄介なのです。なくすんじゃあないですよ?」


アライさん「わかったのだ!」


ミミ「さて、食事がすんだらサンドスター集めにいくですよ。フェネックの薬を取りに水辺エリアへ急いだとき、ここは草原エリアのように見えたのです」


ミミ「墜落した飛行型セルリアンの破片が散らばっていたですよ。あいつら、あの環境でないと飛べなかったようですね水辺エリア側の境界にも大量に落ちているですよ」


アムトラ「それはすごいや。いっぱい集めよう」


オイナリサマ「では、私の本体はここに残ってフェネックを見守りましょう」


アライさん「フェネック、オイナリサマはちょっと見えなくなるけど、ちゃんといるのだ。安心するのだ」


フェネック「どもどもありがとー。ちゃんと知ってるよアライさーん」


アライさん「おおー、広いのだー。きれいなのだー」


ミミ「うっすらとジャパリフジが見えるですね。フェネックが回復するまでは登山はおあずけですが」


アライさん「それじゃあ、しゅっぱーつ、なのだー」


アムトラ「おー」


三人は墜落したセルリアンのサンドスターをオイナリサマのお守りで集めてまわった。


アライさん「アライさん、オイナリサマの気持ちがわかったような気がするのだ…」


ミミ「ふん、今更何をほざきやがりますか。このミミが倒れようとも、お前がくたばろうとも、我々は進み続けるですよ。それとももうやめますですか?」


アムトラ「…」


アライさん「…そうすると言ったら助手はどうするのだ?」


ミミ「知れたこと、お前を置いて先を急ぐですよ」


アライさん「聞いてみただけなのだ」


オイナリサマの声がお守りから響いた。


オイナリサマ「今日はこれくらいで十分でしょう。いったん戻ってはどうでしょうか」


ミミ「そうですね、そうするですよ。お前たち、聞いての通りですよ」


アムトラ「わかったー」


アライさん「帰ったらお家の中を宝探しするのだ」


三人は帰路についた。


そのとき、ミミが前方に何かを見つけた。


ミミ「前で何かいるですよ」


アムトラ「ほんとだ、何か起きあがったよ。セルリアンかな」


アライさん「違うのだ…あれは…サーバルなのだ!」


アライさんはそのサーバルと思しきフレンズのそばへかけよる。


アライさん「消えた…のだ?」


次の瞬間、アライさんの体は宙を舞っていた。


アライさん「!!(やられ…)…てないのだ!」


アライさんは草原を転がりながら体勢を立て直す。


前方で、アムトラとサーバルが組みあっている。


アライさん「(アムトラがアライさんを突き飛ばしたのだ…)」


???「シャアアアァァァァァ!」


ミミ「…こいつはビーストなのです」


アムトラ「……そうだね………ボクがなんとかしないといけないんだよね?」


ミミ「…アライグマ、一緒に施設まで戻るですよ。そして助手が残るのでオイナリサマを連れてここまで来るのです。アムトラそれまできばるですよ」


アライさん「まかせるのだ。アムトラ、頼むのだ」


アムトラ「わかった…」


助手はアライさんを抱えて飛び立った。


ビーストサーバルはアムトラと距離を置く。全身からサンドスターの光が漏れている。


そして、ジャンプする。ものすごい速さと高さだ。


アムトラはその攻撃をかわす。まるでノミのように飛び回るビースト。


アムトラ「(は、速い…これがビースト?…こんな状態のボクをどうやって止めたんだか…)」


ビーストは休むことなくアムトラに連打を浴びせる。


たちまちのうちにアムトラの服…けものプラズムに無数の傷がつく。


アムトラ「(押されてる…まずい)」


ビースト「フウゥゥゥゥゥゥゥ!」


アムトラ「(でも…アライさんだって、何とかしたんだ…)」


ビーストは攻撃の手を緩めない。


アムトラ「…………………」


アムトラの目に炎が灯る。


アムトラ「……なめるなぁぁぁぁぁぁぁ!!ボクはアムールトラだぞぉぉぉぉぉ!!!」


アムトラの咆哮。


ビーストサーバルの動きが止まる。


しばしにらみあったのち、ビーストが逃げ出した。


その後をすぐに追うアムトラ。たちまち追いつき、ビーストサーバルを組み伏せた。


ビースト「アオォォォォォ!」


ものすごい形相でもがくビーストサーバル。口からはよだれが流れ出している。


アムトラ「(すごい力だ…でも!)」


ビーストはアムトラの拘束から全く逃れられない。


アライさん「いたのだ!オイナリサマ!」


アライさんの持ってきたタライにサンドスターが満たされる。


アムトラはアライさんが来たのがわかったが、そちらを見ることなく、一層力を込めてビーストサーバルをおさえつけた。


アライさん「サーバル、ごめんなのだ!」


アライさんはタライのサンドスターをビーストの顔めがけて浴びせた。


ビースト「ブギャアアアアアァァァァァァァーーーーー!!」


ビーストは悲鳴ともとれるようなすさまじい叫び声をあげる。


思わず力を緩めるアムトラ。


そのわずかなスキをついて逃げだずビースト。


アムトラ「(しまった!)」


が、その瞬間、アライさんのタックルがビーストサーバルの後背に浴びせられていた。


すぐさまアムトラが飛びつき、再びビーストを組み伏せる。


アライさん「アライさんのスペシャルグレイトな技名を言うヒマがなかったのだ…」


再びタライのサンドスターを浴びせる。


ビースト「ウミャアアアアアァァァ!!!!!」


アムトラ「………」


今度はアムトラは力を緩めない。


すぐにオイナリサマはタライをサンドスターで満たす。


幾度かそれを繰り返すと、次第にビーストサーバルの叫び声は細くなり、そして、ほとんど聞き取れなくなった。


アライさん「サーバルを家まで運ぶのだ、アムトラ、頼めるのだ?」


アムトラ「…わかった、まかせて」


そう言って、アムトラは眠っているサーバルをやさしく抱え上げた。


そして、制御場へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る