第10話 アムールトラ

アライさん「ふわぁぁぁ…」


オイナリサマ「おはよう、アライさん。お疲れのようで、よく眠っていましたね」


アライさん「あれ、オイナリサマどこなのだ?声はするけど姿が見えないのだ。

フェネックもアムトラもいないのだ!大変なのだ!」


オイナリサマ「ちゃんとここにいますよ。二人はこちらに向かっています。まもなく戻ります」


フェネック「たーだいまっと」


アムトラ「ただいま」


フェネックがお守りを下げている。


アライさん「あ、オイナリサマの姿が現れたのだ!」


オイナリサマ「二人に周囲のセルリアンの討伐とサンドスターの回収を頼んだのです」


フェネック「おー、アライさんお目覚めだねー」


アムトラ「おはよう、アライさん」


アライさん「おはようさんなのだ!」


オイナリサマ「お疲れ様」


フェネック「いやー、アムトラはすごいよー。そこいらのセルリアンなんて相手にならないよ。怖いのなんのって」


アムトラ「えー、ボク、もうフェネックたちのこと襲ったりしないよ」


フェネック「いやー、なんていうかなー」


なにか言いかけたフェネックより先にアライさんが興奮し始める。


アライさん「おぉー、それはアライさんも見たかったのだ!」


フェネック「(やれやれだねー)」




しばらく後、フェネックは二つの地図を眺めていた。


アライさんは別室で何やらやっており、その部屋にアムトラがやってきた。


アムトラ「アライさん、何をしているの?」


アライさん「アライさん、宝探しをしているのだ」


アムトラ「宝探し?」


アライさん「この建物のなかにある珍しいものを探しているのだ。アムトラも探すのだ」


アムトラ「わかった」


アライさん「あと、そこより先の部屋はいじっちゃダメだってオイナリサマに言われているのだ」


オイナリサマが姿を現す。


オイナリサマ「そうです、この施設の重要なからくりがある上にむやみやたらと触れると危険です」


アムトラ「じゃあアライさんのそばで探すよ、それなら大丈夫でしょ」


オイナリサマ「それがいいですね、アライさんが無茶をしないように見守ってあげてください」


アライさん「うぅ…なんだかアムトラのほうが信用されているのだー」


アムトラ「きっと、オイナリサマはアライさんのことが心配で仕方がないんだよ」


アライさん「それじゃあ気を取り直して、この部屋から探すのだー」


アムトラ「おー」


アライさん「おぉ、この箱の中には面白グッズがいっぱいあるのだ」


アムトラ「こっちは紙束ばかり入っているよ」


アライさん「どれどれ見せるのだ。ふーん」


アムトラ「アライさん、それわかるの?」


アライさん「アライさんに不可能はないのだ。これはここの機械の記録なのだ。たぶん」


アムトラ「へー。フェネックも賢かったけどアライさんもすごいなぁ」


アライさん「もっとほめていいのだ」


アムトラ「これは扉はなにかな?」


そういって扉を開けるアムトラ。その中を見た瞬間、突然に威嚇をはじめた。


アムトラ「キシャーッ!!」


その威嚇にビクッとなるアライさん。


アライさん「どうしたのだ!アムトラ!?げぇっ」


アムトラ「シャーッ!!」


アライさん「アムトラ、落ち着くのだ。作り物なのだ」


アムトラ「なんだ…びっくりしたぁ」


騒ぎを聞いて、オイナリサマが姿を現す。


オイナリサマ「どうしました?何があったのですか?」


アライさん「アムトラがこれを見てびっくりしただけなのだ、それにしても何なのだ、この悪趣味なお面は」


オイナリサマ「まぁ!…これは防毒面ですね…」


アムトラ「ぼうどくめん?」


アライさん「つまり、これがガスマスクってやつなのだ?」


アムトラ「がすますく?」


フェネックも部屋にやってくる。


フェネック「アライさん、アムトラ、何かあったの~?げげ、これは何ー?」


アライさん「ちょっとかぶってみるのだ」


アムトラ「(オロオロ)アライさん、大丈夫なの?」


フェネック「大丈夫、アライさ~ん、とれなくなっちゃうかもよー」


アライさんはガスマスクをかぶってその姿を近くの鏡に映した。


アライさん「ふおぉ~、こうしてみると意外とかっこいいかもしれないのだー」


アムトラ「アライさん、怖い、怖いよ!」


アライさん「ふっふっふ~、アムトラを怖がらせるなんて大したお宝なのだ」


フェネック「襲われないようにねー、けものが襲ってくる理由なんてそんなものだよー」


アライさんはガスマスクを脱いで、それを見ながら考え込む。


アムトラ「ふぅ、心臓に悪いよー」


フェネック「ははーん、アライさんが何を考えてるのかわかったよー」


フェネックは以前の苦い経験を思い出す。


アムトラ「え、何?何?」


フェネックがガスマスクをひとつ取りかぶってみる。


アムトラ「ちょ、フェネックまで」


ガスマスクの頭部からはちゃんとフェネックの耳が出ている。けものプラズムだからだ。


フェネック「ほほ~。ん、このプラスチックの袋は…なるほどーこれをつけるのかー」


フェネックは袋を一つ破り、ガスマスクにフィルターを取り付けた。


アライさん「おぉ、そうなるのかー、フェネックすごいのだ」


アムトラ「なんだか、余計怖くなってるよ!」


フェネックはガスマスクを脱いだ。


フェネック「ふー、これは…鼻が得意なけものには向いてないかもだね~。お面の異臭以外は何もしなくなるよ。アライさんのにおいも、アムトラのも全くしなくなったもん」


アライさん「どれどれ、アライさんにも貸すのだ。むー、フェネックのにおいはちゃんとするのだ?」


フェネック「それは、わたしがかぶったからだねー」


アライさん「そうだったのだ。むむ…アライさんは目はそんなによくないから厳しいかもなのだ」


アムトラ「二人とも…何をやってるの…」


オイナリサマ「…」


フェネック「オイナリサマ、そんなに心配そうな顔をしないでよー。使い方を知っておくのは悪いことじゃないと思うよー」


アライさん「アムトラ、このエリアに最初に入ったとき、フェネックは入れなかったのだ。さすがのアライさんも危機一髪だったのだ」


アムトラ「ああ、あの話…なるほど!このお面をかぶれば毒の空気から体を守れるんだね!」


アライさん「さすがアムトラ。強いだけじゃなくて頭もいいのだ!」


オイナリサマ「そうだ、アライさん。館の中ばかりにいないで、外へお散歩にいったらどうでしょう、フェネックも地図ばかり見ていないでみなさんでお出かけをしてはどうですか?」


アライさん「えー、アライさんもっと宝探しをしたいのだー」


フェネック「…わかったー。ほら、アライさん行こう。アムトラも」


アムトラ「う、うん」

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