第9話 接触

アライさん「どうしたのだ?」


フェネック「来るよ…すごく速い」


オイナリサマ「セルリアンですか?」


そのとき、茂みから飛び出してきた何かがフェネックに襲いかかった。


飛びかかる場所を事前に察知して、とりあえずは安全と思われる間合いまで退避していたフェネックに、その攻撃は空を切る。


フェネック「あれは…」


アライさん「フ…フレンズなのだ!どうしたのだ?アライさんたちのことがわからないのか?」


オイナリサマ「お二人とも、逃げてください、あれは理性を失ったフレンズ…ビーストです」


アライさん「なら、こーするのだ」


アライさんはタライを投げる。


ビーストはそれを簡単にはたき落としてしまった。


アライさん「なにぃ!?」


フェネック「アライさーん、不意をつかなきゃダメだよー」


オイナリサマ「そんなことを言っている場合ではありません、今度という今度は逃げてください!」


フェネック「逃げるよ、アライさん」


アライさん「イヤなのだ!」


逃げ始めたフェネック、動かないアライさんとの間に距離があく。


すぐさまビーストの攻撃がアライさんをかすめる。


オイナリサマ「フェネック、アライさんを止めるのです」


フェネック「アライさん!オイナリサマの言うことを聞こうよー!」


アライさん「お断りなのだ!」


アライさんはそばにあった木に登り始める。


アライさん「へへーん、ここまで来てみろなのだー、って、普通に登ってくるのだー!」


ビーストの鋭いツメの攻撃と入れ替わりにアライさんは木から飛び降りる。


オイナリサマ「アライさん、やめなさい!仮にあなたが限界まで野生開放したとしても敵う相手ではありません!相手はアムールトラです!」


アライさん「イヤなのだ!アライさんの中の何かが言っているのだ。ここであの子を見捨てたら旅はここで終わり、すべてはうまくいかないと!」


木の枝からビーストが飛びかかってくる。その攻撃をアライさんはギリギリかわす。


アライさん「(アライさんでもかわせるのだ…あの腕輪と鎖のせいなのだ?いや、それだけじゃないのだ!)」


ビースト「ハァッ…ハァッ…ウゥッ」


アライさん「(やっぱり時々動きが遅くなるのだ…なら!)」


ビーストが飛びかかる。オイナリサマは自身の幻影をアライさんのわきに移動してかく乱を試みる。


しかしビーストのツメは正確にアライさんだけをねらってきた。


その攻撃はアライさんのけものプラズムをかすめる。


フェネック「(どうしよう…)」


オイナリサマ「アライさん!これを使ってください!」


そばにひっくり返っていたタライが起き上がり、中にサンドスターが満たされる。


オイナリサマ「いちかばちか…これをビーストに浴びせてください!」


アライさん「わかったのだ!」


ビースト「ウゥッ」


アライさん「今なのだ!」


タライを投げつけるアライさん、しかしビーストは素早くかわした。


タライは転がり、サンドスターがこぼれ落ちる。


オイナリサマはすぐにタライを起こし、またサンドスターをそれに満たす。


ビーストはアライさんにすぐさま反撃を行う。


アライさん「くぅっ」


アライさんのほおをビーストのツメが切り裂く。


アライさん「(首がなくなっちゃうかと思ったのだ)」


フェネックはその様子を茂みからうかがいながら恐怖で震えている。


太くて長い彼女のしっぽは毛が逆立ってまるで爆発しそうだった。


ビースト「ウゥッ…ハァ…」


アライさん「(今なのだ!)アライさーん!!ウルトラスーパーギャラクティックタックルゥゥゥゥゥーーーーー!!!」


アライさんのタックルがビーストの顔面に決まる。


ビースト「ウウゥッ!?」


すぐさまわきにあるタライでサンドスターを浴びせる。


ビースト「グワァァァァァアアアーーーーーーーーーー!!!!!」


ビーストが咆哮ほうこうとも悲鳴ともとれるようなすさまじい叫び声をあげる。


アライさんは前身がチリチリと逆立つような感覚がした。


オイナリサマ「ひるんではいけません!続けるのです!」


タライにサンドスターが満たされている。


アライさん「ごめんなのだ!スーパーソニックアルティメットタックルゥゥゥゥゥゥゥーーーーー!!!」


もがくビーストにさらに追撃をかけるアライさん。すぐさまサンドスターを浴びせる。


ビースト「グギャァァァアアアアアーーーーーーー!!!!!」


アライさん「アライさーーーんスペシャルヒロイックタックルゥゥゥゥゥーーーーー!!!」


体当たりからのサンドスター。


幾度繰り返しただろうか、数えている余裕などなかった。


ビーストの叫び声は少しづつ細く、弱くなり、もはやほとんど聞きとれない。


アライさん「はぁ、はぁ、えーと、アライさーん、スーパーハイパーグレイトデリシャス全部パーンチ!!」


フェネック「(アライさんの「ごい」の危機なのだー)」


そして、サンドスターを浴びせると、ビーストはうつぶせに倒れ込み、そのまま動かなくなった。


その様子をみたアライさん、両手とひざを地面につく。


アライさん「ぜぇ、ぜぇ、どうなのだ?」


オイナリサマ「もう、大丈夫です…彼女へのサンドスターの供給が消耗を上回ったようです…彼女はフレンズになったと思います…」


フェネック「やー、すごいよアライさーん。やっぱ尊敬しちゃうなー」


アライさん「フェネック、この子を一緒にをプリンター小屋まで運ぶのだ」


フェネック「いや、それはやめた方がいいよ」


アライさん「なんでなのだ?」


フェネック「あそこは野生のにおいがすごいからね…別の場所にしよー」


オイナリサマ「多分、大丈夫だとは思いますが、そのほうがいいかもしれませんね…」


二人は、ビーストだったアニマルガールを運び始めた。


アライさん「はぁ、はぁ、ぐへー、この子とっても重いのだー」


フェネック「腕が抜けそうだよー」


オイナリサマ「お疲れ様、結局適当な場所が見つからなくて水辺エリアの制御場まで来てしまいましたね…」


アライさん「手間が省けたのだ!」


そういってオイナリサマは結界を張った。


アライさん一行は施設の一室にビーストだったフレンズを寝かせた。


アライさん「おなかがペコペコなのだ!」


フェネック「彼女が目を覚ますまで我慢しよー、においで刺激したくないしねー」


アライさん「起きるのだー!」


その声に反応したのか、彼女の目が開く。


ゆっくりと上体をあげ、鋭い眼光がアライさんに向けられる。アライさんは少しゾッとする。


???「ううっ…頭がくらくらするよ…ここは…キミたちは…」


フェネック「おー、会話が成り立ちそうだよー」


アライさん「大丈夫なのだ?もう心配いらないのだ!オイナリサマ、ごはんにするのだ。アライさんも食べたいのだ!」


オイナリサマ「そうしましょう、ジャパリまんからサンドスターの補給もできるはずです」


オイナリサマが経緯を説明する。彼女は夢中でジャパリまんを食べており、話が聞こえているのかわからない。


アライさん「その腕輪、邪魔っけで食べにくそうなのだ。オイナリサマ、何とかならないのだ?」


オイナリサマ「やってみましょう…アムールトラ、両腕をこちらに」


彼女はジャパリまんをくわえたまま不思議そうに両腕を前に突き出した。金属の腕輪から鎖が垂れている。


オイナリサマが腕輪に触れて集中する。まもなく、腕輪は開きすごい音を立てて床に落ちた。


オイナリサマ「うまくいったようですね」


フェネック「うわー、これ重っ」


アライさん「こんなものをつけるなんてひどいのだ!みつけたらアライさんがブッ飛ばしてやるのだ!!」


フェネック「(いやー、これがなかったら危なかったと思うよー)」


アムールトラのフレンズと思しき彼女は軽くなった両腕をまじまじと見つめ、くわえていたジャパリまんを食べ切った。


???「…つまりは、キミたちが助けてくれたんだね。ありがとう…ボクはアムールトラ…だと思う」


アライさん「アライさんはアライさんなのだ!」


フェネック「わたしはフェネックギツネのフェネックだよー、よろしくー」


オイナリサマ「私はオイナリサマ…そう呼ばれています」


アムトラ「アライさん…その傷…もしかしてボクのせい?…大丈夫?…ごめんね…」


アライさん「アムトラは何も悪くないのだ!それにこんなものはどうということはないのだ。なぜならアライさんは無敵なのだから!」


フェネック「(無敵というより、無茶や無謀なんじゃないかなー)」


お腹がふくれたアムールトラは今度は真剣にオイナリサマの話に耳を傾ける。


フェネックは難しい話に補足を、アライさんはあさっての方向に話題を伸ばす。


そして、一行は眠りについた。


三人が眠りについている間、オイナリサマの幻影は施設の中心の操作卓のそばにあった。


オイナリサマ「(アライさんがお守りをきれいにしたせいか、結像できる範囲が広がったようです)」


オイナリサマ「(やはり…このからくりは地中の何かを汲みあげて、サンドスターを取り出して加工しているようですね。アムールトラとの戦いでサンドスターが不足しています…少しわけていただきましょうか…」


オイナリサマ「いや…アライさんとフェネックが命がけで動かしたからくりです。何かがあったら事です、やめておきましょう…)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る