第8話 地図

フェネック「むー…」


アライさん「フェネック、おはようさんなのだ!」


アライさんは両手をすりあわせながらフェネックに言う。


オイナリサマ「おはよう、フェネック。ジャパリまんとお茶を作りました。めしあがれ」


フェネック「どもども、ありがとー」


食事をしながら水辺エリアでの出来事を説明するオイナリサマ。


時々はしゃぎ気味に話に割り込むアライさんをオイナリサマとフェネックがなだめながら、一通りの説明を終えた。


フェネック「やー…すごい大冒険だねー、生きている心地がしないよー」


アライさん「えっへんなのだ」


フェネック「やれやれだねー」


アライさん「この調子でどんどんエリアを直していくのだ!」


オイナリサマ「アライさん、ここまでにしましょう。もう十分あなたたちは働きました。これ以上危険を冒す必要はありません」


アライさん「ふぇ?何を言っているのだ。オイナリサマは星を豊かにするのが大好きなのだ。そのためならアライさんもまだまだがんばるのだ!」


オイナリサマ「…気持ちはうれしく思いますが、今やあのようなからくりに頼らねば何も出来ぬ身、ここが引き時だと考えます…」


アライさん「セーバルはどうするのだ!?オイナリサマは覚悟を決めたと言っていたのだ!」


オイナリサマ「大言をした手前、お恥ずかしいのですが…私の認識が甘かったようです…」

フェネック「…」


アライさん「フェネックもそう思うのだ?」


フェネック「とりあえず今すぐ結論を出さなくてもいいんじゃないかなー、オイナリサマもアライさんも気が変わるかもしれないしー、それよりわたしも水辺エリアを見てみたいなー」


アライさん「おぉ、アライさんもそれはいい考えだと思うのだ、フェネックはやっぱりすごいのだ。アライさん早く遊びたかったのだ!」


水辺エリアへ向かう一行、途中置き残したタライを回収する。アライさんはそれをすりすりしながら歩く。


フェネックとオイナリサマその様子をうれしそうに見つめる。


そして水辺エリアへと着いた。


フェネック「やー、あのおぞましいエリアがこんな姿になるなんてすごいねー」


アライさん「こっち、こっちへ来るのだフェネック」


アライさんはフェネックを小川のある場所へと急かす。


アライさんは持ってきたタライに水を張った。


そしてオイナリサマのお守りを洗いはじめた。


アライさん「ふんふふーん♪のへー、この瞬間を待っていたのだー」


オイナリサマ「アライさん…最初に出会ったときの約束を果たしてくださるのですね…」


アライさん「ぴっかぴかなのだ!」


フェネック「オイナリサマ!?」


フェネックが驚いた。オイナリサマの幻影が以前よりも鮮明になっていたのだ。


アライさん「おぉー。オイナリサマも元気になったみたいなのだ」


オイナリサマ「ありがとう…アライさん、そしてフェネック」


アライさん「おやすいご用なのだ!」


フェネック「どもどもー」


しばらくタライで遊んだり、木に登っているアライさんをほほえみながら見ていたフェネックはおもむろに言った。


フェネック「アライさーん。わたし、オイナリサマが見つけたお宝っていうのを見てみたいんだけど、いいかなー」


アライさん「おおー、そうなのだ。アライさんお宝を並べるのに夢中であまり「かんてい」できなかったのだ。あと制御場にもお宝があるかもしれないのだー」


フェネック「鑑定…?」


一行は、SSプリンターのある小屋へと到着した。


中へ入ると、フェネックのしっぽの毛が逆立った、アライさんが負傷したときのにおいが残っていたのだ。


アライさん「これなのだ!」


フェネック「おぉ~、たくさんあるねー」


フェネックは並べられたがらくたを端からゆっくりと眺める。アライさんもうれしそうにいじくりまわしている。


ひと通り眺めた後、フェネックは言った。


フェネック「うーん、地図はないかー。今持っている物より新しい地図があるとよかったんだけどねー」


アライさん「フェネック…」


フェネックががらくたを手にとって眺めている。


アライさんはしばらく黙りこんだのちに切り出した。


アライさん「フェネック…どーぞ、なのだ」


フェネックにこの場所で見つけた地図を差し出す。オイナリサマはうろたえる様子を隠せない。


フェネック「アライさん!?どうしたのさ、それ、隠しておくなんて水臭いじゃないかー」


フェネックは地図を広げる。


フェネック「おぉ~、これはすごーい。手柄を隠すなんてアライさんもらしくないところがあるねー」


アライさんはフェネックに目をあわせることができずにうつむく。


フェネック「オイナリサマ、これは何て書いてあるの?」


オイナリサマ「それは…恥ずかしながら私も読めませんでした」


オイナリサマの言葉にはそれなりの説得力があった。地図上の文字はフェネックの持っている地図とは違う種類の文字であったのだ。


フェネックはオイナリサマとアライさんを交互に見つめる。


フェネック「そっかー、わかったー、わたしは知らない方がいいんだね?」


その言葉に、アライさんはギョッとする。


オイナリサマ「…」


アライさん「わかったのだ!アライさんが全部教えてあげるのだ!」


オイナリサマ「アライさん…」


アライさんは地図上の文字について語りだした。


その内容は恐るべきものであった。


かつてこの星を支配していたけものによって作られた地図と書かれたメモ。


そのけものはこのジャパリパークからある存在を排除すべく行動していたのだ。


その対象はセルリアン…そしてフレンズ。


いわく、彼らは悪魔であると。


地図の裏には言うもはばかられるような汚い言葉でジャパリパークに関わった全ての存在を恨みののしる内容が書き込まれていた。


フェネック「…そっかー」


アライさん「…」


フェネック「ありがとねー、アライさん。これでスッキリしたよー。あとー、ごめんよー、アライさんたちはこのことを伝えるのが嫌で隠してたんだよね。アライさんもオイナリサマもやさしーなー」


アライさん「フェネック…」


オイナリサマ「ごめんなさいね…私…うそを…」


フェネック「さて、いつのことやらわからないことなんてどーでもいーし、新旧の地図を比較すれば何か新しいことがわかるかもしれないねー。そうだ、アライさんは気候制御場に行くんだったよね、さっそく行こうよー」


フェネックは半ば強引にアライさんの背を押して出口へと向かった。


フェネックを先頭に制御場へと向かう一行。


そのとき、フェネックの耳が何かを感知した。

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