第4話 脅威
地平線からものすごい速さで砂煙をあげながら何かが接近してくる。
アライさん「あれはセルリアンなのだ、探す手間が省けたのだ。ブッ飛ばしてやるのだ」
砂煙は地中の何かに衝突して止まった。そして、その巨体が砂の中から姿を現した。
長い
オイナリサマ「くっ!結界に当たったようです。あれは大型、いや大将格かもしれません。アライさん、フェネック、館の中に避難しなさい」
フェネック「どうする、アライさん」
アライさん「ふっ、決まってるのだ。排除するのだ」
二人の目に炎が灯る。
オイナリサマ「何をしているのです!サンドスターが十分なので結界はしばらくは持ちます!中へ入りなさい!」
フェネック「その後はどうなるのさー」
オイナリサマ「……」
アライさん「戦える体を持っているのはアライさんたちだけなのだ」
そう言って結界の外へ飛び出す二人。
巨大セルリアンを中心に円を描くように走り出した。それを追うように体をくねらせるセルリアン。
フェネック「おや?」
アライさん「どうしたのだ?」
フェネック「アライさん、止まって」
アライさん「えぇ!?」
フェネック「(シーッ)」
アライさん「(こんなことをしてたらやられてしまうのだ)」
フェネックが何かの破片をそっと拾い上げる。そして、それを遠くへ投げる。
破片が砂地に落ちた瞬間、セルリアンがその場所に突っ込んだ。
フェネック「(なるほどねー)アライさん、一度結界の中へ戻るよ」
その声に反応してセルリアンが体勢を立て直す。
アライさんは無言でうなづく。
再び結界に強烈な体当たりをするセルリアン。
オイナリサマ「ぐっ!二人とも、大丈夫ですか」
フェネックは口に指を一本当てるサインをオイナリサマに送った。
建物の中に入っていく二人を見てオイナリサマは安心し、後に続いた。
オイナリサマ「よかった…あきらめてくれたのですね…うわっ!」
また結界に体当たりされたようだ。
フェネックはオイナリサマの幻影に耳打ちする。
フェネック「(あのセルリアンは音にだけ反応するみたいだよー)」
アライさん「(ちょっと惜しいけどあのセルリアンにアライさんのお宝をプレゼントしてやるのだ)」
オイナリサマ「(二人とも…何を)」
アライさんは見つけたお宝の入ったタライを静かに抱える。
フェネック「(アライさんの方が物を投げるのが上手そうだから、そっちは頼むよー)」
アライさん「(まかせるのだ)」
忍び足で外へと向かう二人。
オイナリサマ「(ああ、行ってはなりません)」
結界のすぐ内側に陣取った二人。
アライさんはタライから静かに「お宝」を拾い上げ、セルリアンのわきに投げる。
セルリアンはすぐに反応しそこへと突っ込む、と同時に結界からフェネックが飛び出し背後にツメを突き立てる。
セルリアンは体勢を立て直すが、その時にはフェネックは結界の中に退避済みだ。
タライの「お宝」が半分も減ったころだろうか。
フェネックによってズタズタになった場所にさらにツメを浴びせたとき、フェネックは確かな手ごたえを感じた。
「パッカーン」
巨大セルリアンは粉々に砕け散り、そこにサンドスターが残った。
アライさん「おぉ~~~、フェネックすごいのだ!この程度で倒せるなら、いらないやつから投げればよかったのだ」
フェネック「ひどいよアライさーん、わたしはヒヤヒヤもんだったよー」
アライさん「ごめんなのだ、フェネックは強いのだ。アライさんとあわせて死角がないのだ!」
フェネック「アライさんは正直者だねー」
オイナリサマ「倒して…しまったのですね」
フェネック「何かまずかったかな?」
オイナリサマ「いいえ、あなた達を見くびっていたようです…もし私の指示に従っていたら、そう…ジリ貧。おびえながら最期を待つだけだったかもしれません」
アライさん「ふっふー、アライさんはよく命知らずと称賛を浴びていたのだ!」
フェネック「それってほめ言葉なのかなー、今回体張ったのはわたしだしー」
アライさん「オイナリサマも一緒に戦ってくれたのだ」
フェネック「そうだねー、結界がなかったらどうにもならかったよー。オイナリサマは大丈夫ですか?」
オイナリサマ「ええ、私はどうということはありません、本当に無事でよかった…そして助かりました。ありがとう」
フェネック「オイナリサマはわたしたちをすごく心配してくれたんだよね、それで十分だよー」
アライさん「無理を通そうとしているのに無理をするなというほうが無理なのだ」
フェネック「無理を三つも入れてきたねー」
オイナリサマ「無理を承知でお願いしたのは私のほう…それなのにあなた達を信じてあげられなかったなんて…」
フェネック「もうそれはいいよー、アライさんはオイナリサマの言うことをちゃんと聞いた方がいいと思うしー」
アライさん「フェネック!?」
フェネック「出発は日を改めたほうがよさそうだねー、もうクタクタだよー」
アライさん「お腹がペコペコなのだ」
オイナリサマ「そうですね、さあ、中へお入りなさい」
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