第3話 フェネック
アライさん「ふあぁ」
オイナリサマ「お目覚めですね、アライさん」
フェネック「やー、おはよう」
アライさん「二人とも早起きなのだ」
フェネック「それを言うなら一人と一柱じゃないかな」
オイナリサマ「細かいことはいいですよ。フェネックがからくり館で地図を見つけてくれました」
アライさん「おおー、宝の地図なのか?」
フェネック「違うよー、ここ、ジャパリパーク?だっけ、の地図みたいなんだよ」
アライさん「なんだ、つまらないのだ」
オイナリサマ「そんなことはありませんよ、これがあればアライさんがもっと快適にくらせるエリアを見つけ出せるかもしれません」
オイナリサマ「それと…お願いばかりで心苦しいのですが、あるフレンズを助け出して欲しいのです」
アライさん&フェネック「フレンズ?」
オイナリサマ「そのフレンズは先の災厄の際にパークの危機を救うべく、身をていして防ごうとしました。結果的には…今となっては悲しいながら時間稼ぎにしかなりませんでした」
アライさん「セーバル…なのだな?」
オイナリサマは無言でうなづく。
フェネック「アライさん、知りあいなの?」
アライさん「会ったことがあるような…ないような…ともかく知ってはいるのだ」
オイナリサマ「セーバルはセルリアンがサーバルというフレンズをまねて生まれたフレンズです」
フェネック「えええー?大丈夫なの、その子」
アライさん「セーバルはいいこなのだ」
オイナリサマ「そのセーバルは今もジャパリフジで眠っていると思われます、彼女を助けてあげてはもらえませんか?」
アライさん「アライさんにおまかせなのだ!」
フェネック「…」
アライさん「フェネック、どうしたのだ?」
フェネック「オイナリサマ、無礼を承知で申し上げますが、そのセーバルを助けてどうするんですかー?あなたのやったことは無駄でしたって伝えるんでしょうか」
オイナリサマ「……そこも…助けて欲しいのです。今はまだ、仮に彼女が目覚めたときにかけるべき言葉も見つかりません…かといって、このまま彼女を放っておくわけにもいきません」
アライさん「そうなのだフェネック。アライさん、助けてから考えてもいいと思うのだ」
フェネック「いやー、アライさんにはかなわないなー、なんだか嫌味なこと言っちゃって悪かったねー」
オイナリサマ「いえ、フェネックの疑問は当然です。そういった冷静な考え方もまた、この先大きな力になるかもしれません」
アライさん「そうと決まれば、しゅっぱーつ、なのだー」
フェネック「まだ地図も読み解けてないよー、アライさーん」
アライさん「アライさんに貸すのだ、むむむ、ここがジャパリフジなのだ!」
フェネック「どれどれ、今わたしたちがいる場所は?」
アライさん「???むむむー、多分ここなのだ?」
フェネック「違うねー、あと地図がさかさまだねー」
アライさん「フェネック、まかせたのだ…」
耳をつきあわせて地図とにらめっこする二人と一柱。
オイナリサマ「この地図はジャパリパークの地図ではありますが、エリアの気候帯はわからないようですね…」
フェネック「そうみたいだねー。どちらかというと地形と施設の場所に寄っているみたいだよー。オイナリサマ、これは何て書いてあるの?」
オイナリサマ「これはオアシスツー…でしょうか」
フェネック「ふーん、施設からでもなんとなく見当はつきそうだねー」
オイナリサマが地図上の文字を読み上げ、フェネックがあれこれと応じる。
その様子をアライさんは彼女なりに真剣に見つめる。
そして…
フェネック「と、いうわけでー、森林エリアと思しき場所を経由しながら、パークセントラルの西にあるジャパリフジを目指す最短のルートはこうなるんじゃないかな?」
アライさん「フェネックはすごいのだ!」
フェネック「まだまだー、地図を使って目的地を目指す方が何倍も大変だと思うよー」
オイナリサマ「そういえばフェネックは目印の少ない砂漠での生活が得意でしたね」
フェネック「んー、でも地図を使うのは初めてだからなー、何かの役に立つかなー、ひとまず日が暮れるのを待ってから出発しよー」
オイナリサマ「それまでは英気を養うとしましょう」
アライさん「えー、アライさん起きたばかりで眠れないのだー」
フェネック「わたしはちょっと寝不足気味だから寝るよー」
アライさん「フェネックずるいのだ、一緒に遊んで欲しいのだー」
オイナリサマ「これこれ、フェネックは疲れているようですから休ませてあげましょう」
アライさん「わかったのだ…」
そして数時間が過ぎた。
「ガラガラ、ガシャン」
フェネック「ん…何の音かなー、あれ、アライさんがいない…」
オイナリサマ「大丈夫ですよ、お守りを持たせてあります。今は別の部屋で何やらやっているようです」
アライさんがタライに何かをたくさん入れて戻ってきた。
アライさん「おお、フェネック起きたのだ?これを見るのだ。今までそれどころじゃなくて気がつかなかったけど、このお家には面白いものが沢山あるのだ」
フェネック「(どう見てもがらくただねー)、アライさんこれから出発するんだから荷物を増やしちゃダメだよー」
アライさん「ぐぬぬ、せっかく見つけたのに残念なのだ、これなんか面白いのだ」
フェネック「んん?」
アライさん「ほら、いくら回しても、この中の棒がふんばるのだ、なかなかやるのだ」
オイナリサマ「それは方位磁石ですね、地図と組み合わせるとかなり便利だと聞きます」
フェネック「アライさん、それちょっと貸してくれる?」
アライさん「ちょっとだけならいいのだ」
フェネック「なるほど、この記号と同じだねー、するとこっちを向けばこうなると。この矢印は…ああーなるほどー。すごいよアライさん、これは紛れもないお宝だねー」
アライさん「ふっ、当然なのだ。フェネックとはよく宝探しに出かけたものなのだ。特別にそれはフェネックにずっと貸しておいてあげるのだ」
フェネック「どもども、ありがとー、ところでアライさんちゃんと寝たの?」
オイナリサマ「大丈夫ですよ、一度遊び疲れて寝ていますから」
フェネック「オイナリサマが心配になってきたよー」
アライさんは首からお守りを下げ、フェネックは胸ポケットに地図とコンパスを入れた。
アライさん「ふっふっふ、アライ隊出発なのだー!」
フェネック「……(ごそごそ)」
アライさん「どうしたのだ?フェネック、さっきから地図の上で磁石をいじくってばかりなのだ。もしかして使い方がわからないのだ?」
フェネック「いやねー、この地図によればあっちの方角に山があるはずなんだよ。
遠くに見える海岸線も全然地図とあわない」
オイナリサマ「地形ごと変わってしまっているのですね…」
アライさん「そんな!地図も磁石もせっかく見つけたのに残念なのだ…」
フェネック「オイナリサマ、少なくともここが砂漠エリアでこのSS天なんとか場っていうのは間違いがないんだよね?」
オイナリサマ「ええ、館の門にそう書いてありますから」
フェネック「方角だけを頼りに進むしかないかー」
その時フェネックの耳が奇妙な音を感知する。
フェネック「!!」
アライさん「フェネック?」
フェネック「何かこっちに向かってくる。大きいよ」
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