娘と酒 ②

大量の米は普段口にする米より粒が大きく、中心に心白と呼ばれる白い部分がある。

酒造りは始まってしまえばかかりきり。精米し洗米し、水に浸けて蒸しあげ、発酵させた後に搾る。言葉にすれば単純な作業はとにかく重労働で、精米から酒になるまで目を放す事ができない。蒸し加減、発酵具合は気温、湿度に大きく左右されるためだ。わずかな違いが味を決めてしまう。

『麹造り』の時にはほとんど不眠不休。

蒸した米に種麹を降り、その後様子をみながらほぐしたり混ぜたり冷却したり。


男達が褌一つで大量の米を蒸している様は凄まじい。

蔵いっぱいに立ち上る湯気の迫力。

外に立っていても肌をさす熱気。

小さい頃は恐れをなした。

大量の米と格闘する男達はまるで赤鬼の様で。


同時に不思議だった。

そうした工程を経て出来るのが水とかわりないさけだったから。


飲めるようになると不思議以上の興味が湧いた。

水とは異なる味がある。

温度によって変わる。甘くも辛くもなる。

見た目はだだの水なのに……。

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龍と金魚 あかな @koubai_1024

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