第5話 いただきますの話

「ジリジリジリジリジリジリジリジリ…」

「はい、竹下です。」

「おぉ!早いなぁ、流石はダイヤルQ2世代だなぁ…」

「ちょっと、待って下さいよぉ。何で知ってるんすかぁ?」

「まじかぁ、冗談で言ったのに…」

「そうなんですよぉ、昔、高校時代の友達と行ったんですよぉ。といっても、パシりをしてましてねぇ…よく、焼きそばパンを買いに行ったなぁ。それで、20歳を過ぎて、「今までパシりありがとう」って「パシり卒業証書」を作ってくれて、パシり卒業記念に男にするってねぇ…30過ぎのお姉さんと逢ってやったなぁ…その後、3人と付き合ったなぁ。」

「すいません、その話、長いですか?」

「あぁ…ごめん、ごめん、つい、懐かしくて、べらべらとしゃべりました。」

「おい、着いたぞ。」

「はい、今、行きます。」

「はぁ、はぁ、はぁ、解りましたかぁ…久しぶりに走ったら、息が切れました。ふぅ、ダルいすぅ。」

「相変わらずだなぁ…とりあえず、お前のアパート行くぞぉ…」

「はい、桜井さん、こっちです。これですかねぇ?」

「おい、これだけど…何で、ドアに吸収されているんだよぉ!剥がせないじゃないかぁ。わるいけど…大家さん呼んでくれるかぁ…?」

「はい。」

「すいません、大家さん、吉川のおばちゃん。」

「はい、はい、忙しいねぇ。あらぁ、竹下さん、どうしたの?良いことあったかなぁ?」

「実は…良いことはあったんですけど…」

「えぇ、そうなんだぁ…」

「あちゃ、これは、無理だなぁ…取れないねぇ…」

「えぇ!ということは…これは、「頂きシール」と言って、人の人生をまるごと手に入れるシールだから剥がせないなぁ…」

「ちょっと、待って下さいよぉ。俺の人生真っ暗じゃないですか?」

「まぁ、しょうがないねぇ。諦めなぁ!」

「でも、考えようによっては人助けだと思えば報われるかも?」

「まじかぁ…納得いかないけどなぁ…又、電話する。あぁ…ちょっと、待てよぉ…くれぐれも、入れ替わった時にあいつとは寝るなよぉ。」

「はい、いたぁ!抱きます。いたら、抱きますよぉ。「頂きます」の話だなぁ…」

「お前、ふざけているのかぁ?」

「冗談ですよぉ…そんな事はしませんが…せめて、「あーん」をしてもらいたいので、それだけはダメですか?」

「解った、解った。それだけなら許すけど…、絶対にするなよぉ。良いなぁ?」

「解りました。約束します。」

「なら、後日連絡するなぁ。」

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