4・朝比奈みくる
「それじゃあ、新メンバーの紹介だ。入ってきてー」
先生が廊下の方に声をかけると、その人は部室に入ってきた。
その人物は……
「彼女が朝比奈みくる役だ」
どう見ても小学五年生にしか見えなかった。
小柄で細い体格。
黒いロングヘアー。
怯えた子鹿のような瞳。
そしてツルペタ。
フッ、勝った。
私は自然と勝利の笑みが浮かんだ。
私の方が大きい。
と、勝利感に浸っていると、八坂くんが一瞬で先生の懐に入り、
「どっからさらってきた!?」
ボディーブローを入れた。
そしてそのままチョークスリーパーに入り、
「どうすんだよ? この先生、過ぎ去った青春を取り戻すためにやっちゃいけないことをやっちゃったよ」
そうだよ!
先生メンバー揃えるために 小学生 拉致ってきちゃったんだ!
私はツルペタに、
「ごめんね、怖い思いさせちゃって。大丈夫、この先生 過ぎ去った青春をちょっと取り戻したかっただけだから。安心して、私が貴女を小学校まで送るから。貴女 どこの小学校?」
ツルペタは怯えた眼で、
「いえ、私 小学生じゃないです」
「あ、ごめん。中学生なんだね」
「いえ、そうじゃなくて」
そこに、先生をチョークスリーパーで落とした八坂くんが、私とツルペタの間に入って、
「待って 涼宮さん。ここは俺に任せて」
「え? う、うん」
そして小学五年生にしか見えない女の子を抱っこすると、椅子に座り、女の子を自分の膝の上にのせ、慈しみの笑顔で、
「君、名前は?」
「え?
「未玖ちゃんか。可愛い名前だね。
俺は八坂鏡。鏡お兄ちゃんって呼んで欲しいな。
お兄ちゃんが君を家まで送ってあげるから安心して。
あ、そうだ。電話番号交換しようか。君 電話は持ってる? まだお父さんが許してくれないのかな?」
「えと、一応持ってますけど」
「じゃあ、番号を交換しよう。あの先生がまた血迷ったりしたら大変だからね。お兄ちゃんといつでも連絡が取れるようにしておかないと」
「いえ、その」
戸惑っている朝日未玖ちゃん。
こ、これは!?
私は八坂くんの行動に、あることに気付いてしまった。
「八坂くん! ロリコンなのー?!」
「違う! ロリコンじゃない!」
「じゃあなんでそんなにその子を可愛がっているのよ!?」
「可愛い者を愛でるのは男として当然! つまりロリコンじゃない! ロリータだ!」
八坂くんまで変人だったー!
「ふぇええーん!」
朝日未玖ちゃんが突然 泣き出した。
私は慌てて、
「ああ、ごめん。怖がらせちゃったね。私が家に送るから安心して」
八坂くんが断固とした態度で、
「いや、俺が家に送る」
「ロリコンは黙ってて」
「ロリコンじゃない。ロリータだ」
「どっちも一緒よ!」
私たちが言い合っていると、朝日未玖ちゃんが叫んだ。
「私 子供じゃないですー!」
「そうよね。中学生ならもう子供って言わないわよね」
「中学生でもないですー!」
「え? もしかして幼稚園とか保育園とか?」
「私 高校二年生ですー! この学校の二年生! 貴女たちより年上なんですー! うえぇええーん!!」
……え?
「先生が説明しよう」
先生が唐突に意識を取り戻して、
「朝日未玖さん。高校二年生。学校では有名な合法ロリ。
年齢を感じさせないその小さく幼く可愛らしい容姿で、年下の大きなお友達から大人気。でも本人は幼く見えるのを気にしていてね。あまりそのことには触れないでやってくれ」
「先生、高校二年生ならまだ合法じゃないです」
私が突っ込むと、朝日未玖さんが泣きながら憤慨して、
「私 帰ります! 先生の嘘つき! なにが楽しい部活を発足させるですか! 人を子供扱いして! こんなのちっとも楽しくありません! 私 こんな部なんか入りませんから!」
憤慨する朝日未玖さんに、先生はオロオロと、
「待って、朝日さん。ちょっとだけ待って。
部員はあと一人いるんだ。彼にはもう声をかけてね、もうすぐ来ることになってるんだ。その人物は必ず君が喜んでくれる人だから。
だからせめてその人が来るまで待ってくれ」
あと一人、ってことは、古泉一樹役?
そこに廊下から男の声が。
「センセー。来ましたッスよー」
「ああ! 来てくれた! 紹介しよう! 彼が古泉一樹役をしてくれる人だ!」
朝比奈みくる役はまだ非合法なロリ。
キョン役はまともそうだったのに実はロリコン。
そして最後の一人は?
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