夏 1

南国土佐……。


太平洋の荒波に洗われている海岸の小さな漁村が彼の故郷だった。


彼は夏期休暇を利用して故郷へ帰るため、列車に乗り込んだ。


しかし、彼の心は全く不思議という外なかった。


何故なら、故郷へ帰りたいという願望、父母や妹や弟に会いたいという願望があるにもかかわらず、何故か、この神戸市から一歩も出たくないという想いが、彼を捉えて離さなかった。

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