第3話
「シンプルな謎解き。わかったら手を上げてや。
あそこにいるセレブ妻はテレビそのままの姿で何者かに殺害されました」
「物騒やな」
「そう。物騒やねん。でも場所はあの家ではなくて人気のないところがいいかな。そこでただただ殺害されてしまいました」
手近にあった国民年金に関する通知の封筒の裏面に、ボールペンで棒人間を書いた。そしてその頭のところに死という文字を書いた。周辺は人気の少なく見通しの悪い場所に設定した。なんとなく神社と書いた。
「たまたま悲鳴を聞いたというAさんがセレブ妻の死体を見つけた。暗かったのでiPhoneで照らすと、乱れたブルネットヘアの女。服は、なんでもいいや。ルブタンあたりかな。とにかく腹を包丁でぶっ刺されていました」
「その犯人は誰でしょうってか?」
「いや違う。そもそも犯人なんていないだろ」
「そうだな」ぬるくなりはじめたハイボールの最後の一滴を飲み込んだ。
「Aさんは恐ろしくなって逃げました。死体が見えなくなるくらいのところに。そして警察に連絡をしました。数十分後、到着した警察は、通報と少し違うことに疑問を感じました。下着が脱がされて、レイプされたような形跡があったからです」
「で、何だよ」
「では、ここで問題です。どうして犯人は一度死体のもとに戻ってまでそんなことをしたのでしょうか」
「ヤりたかったから」倫太郎は適当に答えた。
「なるほど。そうかもね」幹人も適当に答えた。
「なんだよ、それ」
「ではヒント。犯人は物取りです」
「わかった。セレブ妻の貞操も奪ってやったぜってか。古い価値観やな」
「倫太郎は、そうとしか考えられないんか?」
「しゃあないやん。だから、犯人はとりあえずムラムラした。とにかくヤりたい。後先考えずに犯人は、死体を抱きましたとさ」
倫太郎は煙草の火を消した。
「じゃあ、俺なりの答えを。あえて、テレビに出たというセレブ妻を襲った犯人は、きっと性欲とは無関係だったでしょう。なぜなら、下着が脱がされていただけだから」
「は? ずるい」
「レイプされたような形跡があったと言っただけで、されたとは言ってない。もちろん、逃げなければならないときに下着を脱がして下半身を観察してから逃げたという可能性もあるだろうけど」
「それは、ないな」
「犯人は、倫太郎の言うところの有名税の取り立て人。このセレブ妻から金品を取ってやろうと隙をみて襲った。突発的な犯行は上手くいきかけた。しかし偶然にもAさんが現れたことで逃げなければならなくなった」
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