第2話
「そう、世の中の仕組みだよ。名誉が欲しければ、それに応じた金しか得れない。世の中の仕組みな」
「知ってるよ、有名税だろ」
「それとはちゃうよ」倫太郎は息をあらげた。
「違わないね」
「有名税は有名人だからという理由でプライバシー権とかを侵害されることだし」
「なら、いま、名誉を失ったからという理由で美魔女がどうこう言ったのはなんだ? ライフスタイルはプライバシーだろ」
「批評の範疇やろ。それに、本人には聞こえない。どれだけ大爆発があろうとそこが宇宙の片隅なら俺たちに気がつかないのと一緒」
「そういうもんかなぁ」幹人はセレブ妻の笑顔に中指を立てた。俺も人のことを言えないなと、もう片方の手も中指を立てた。
「そういえば、さ」倫太郎は煙を目で追って、遠い記憶を掘り起こした。
「エンゲージリングって左手の薬指にはめるのって誰から聞いた?」
「常識だろ」幹人はチャンネルを変えながら答えた。
「俺さ、彼女へのプレゼントをさ、店員に勧められるままに買っちゃったわけよ」
「何を」
「指輪だよ。話の流れで分かれよな。そんでさ、指輪。店員が彼女と似たような体型だったから別にいいかと思ってさ。ピンキーリングにどうぞって買わされて。んで、プレゼントしたわけ。彼女の小指には合わなかったのが見て分かったからその隣の薬指にはめたら、なんかぶちくさと文句を言われた。なに考えてるの? ってさ。いや、まぁ結婚したらセックスし放題なろうけどさ」
「し放題なわけないやん。それに左手の薬指の意味を知らない倫太郎が10対0で悪いだろ」
「いや、お前ら同じ事を言うなよ。知らなかったんだし、しゃあないやん」
「で? 結婚すんの?」幹人は再びセレブ妻の番組に戻した。ジャグジーでオーシャンビューでございますよと芸人が盛り上げている。
「あんなババアの裸に誰が興味あんねん」
「誰があの人の裸について話したよ?」
「ジャグジーやん。見たら分かるやん」
「そうか、ふぅん」幹人は鬱屈した。
「じゃあさ、見ても分からん話をしようか」
「何それ」
「まぁ落ち着けよ」
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