一匹狼、夜の遠吠え

 一匹狼ってさ、狼の世界では仲間を作れない奴らのことらしい。


 七時間も蒲団を乾かすこの作業に流石に疲れてきた。

 こうもしつこく湿り気を帯びている布に少々びっくりもする。

 お前は我を貫き通してるんだね、なんて、ガハハと笑う。

 笑えない。


 こんなにも疲れてくると幾つかの人格が理性を飛び越えて色んな事を喋り出す。


 一匹狼ってさ、狼の世界では仲間を作れない奴らのことらしい。


 俺らみたいだな


 確かに。


 高校時代の人々が僕の事をずっと友達と呼んでいる


 年少時代からそんな事無かったから正直戸惑っている


 一度施設を出たら人間関係は再スタート


 ずっとそう思って生きてきた。


 だから長い間友達関係でいても良いと思える存在はほんの一握りだった。


 利他主義の奴は居ない……。自分含め全員そうだと思ってきた。


 他人であっても人格であっても


 僕らは互いを慰め合ってきた


 本当に信じられるのは僕らだけだ。


 これは孤独に蝕まれる病


 どうして他人を欲するの

 どうして他人を許せるの


 高校大学が人格者ばかりで逆に戸惑う


 先生の授業放棄が無かったって、逆に凄くない?


 僕が恋していたのは自分を欲してくれるその「意思」だったかもしれない


 だから、残念だけど、余り人の名前を覚えていない


 皮膚病だから見た目が悪い

 誰も好きじゃない


 うーむ


 とまぁ、このように。


 中学までの経験総てにおける代償が余りに大きすぎた。


 全員敵。


 もう何を信じれば良いかなんて全然分からない。


 総ては結局利己主義に落ち着く


 そう言う意味でも彼は本当に凄い存在だった……この話はまたどこかで。

 今は置いておこう


 さて


 信じるって何

 つるむって、何

 楽しみを共有するのも、人の巣に上がり込むのも、勿論逆だって

 嫌で嫌で仕方ない


 これは恐らくそうしたいと思ってくれる人が厭なのでは無く――それは寧ろ尊敬していて――何処までも自分は汚い存在だとか、友達になりたいと思う人は居ないとか、思い込んでしまっている自分がそんな事をするのを嫌がっているのであって……


 そうだ。

 自分はいつも何かに従事する事で生きてきた


 目立てば槍玉に挙げられる


 もう傷付きたくない


 特殊な吾々を人々はよくよく注目していた


 総てを暴くことを楽しみにしていたから、あの恋だってばれたと思った


 ううん


 でもバレていなかった


 誰も注目していなかった


 優しさとは鎧だ


 本当が見えない


 誰も見せてくれない、中身


 それを覗きたくて覗きたくて仕方ない


 本当は嫌ってるでしょ


 そう思うことで勝手に傷付く。馬鹿みたいだけど、そうでも思わないと人生の正解が狂い出す


 皆僕を嫌いだったのに好きなわけはないと


 思わないとやっていけない


 ――世界観は幼少期に総て完成する


 同時に人生観だって幼少期に総て、総て


 パートナーを作れる人は凄いね


 幼少期、誰か一人は君を心の底から好いてくれたんだね


 全部表面的

 心の底に入ってこないで

 ぐずぐず思う。


 自分の行動に総て申し訳ない感情を孕ませて、誰も信じられない深夜


 一人遠吠え繰り返す。


 でもね、誰にも聞かれてはいけなくて

 だって、聞かれてしまえばつるまなければならない


 生涯誰かと一緒だなんて、こちらが壊れてしまう


 先ずは誰も疑わない、そんな表面の表面を僕らは至極愛している

 サービス業はそういうものだ


 ちょっと奥に踏み込めば、もう嫌われる要素しか無いから、矢張り誰も信じられなくなってしまう


 そう言う意味でもネットはとてもありがたいね


 外見無しに語れるから、

 誰も外見で判断しないんだ


 だからその界隈の人は皆覚えてるし全員好き

 ――でもまた、どこかで思ってしまう

 嫌いなのに好きと偽ってるんじゃないか


 無条件に僕を求めてやまない弟妹しか、最終的には愛せないのかもしれない


 わおーん

 わおーん


 これは一匹狼の遠吠え

 ここに居るんだよって、それだけ小さく言って

 縮こまって眠る

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