箱入り娘

 拝啓


 私は箱入り娘を卒業したく思います。

 ケエスに入ったフランス人形のやうに、何処でもお嬢さんで居るのは嫌だもの。

 重箱に閉じ込められて、隅を突かれるやうな人生にはもううんざりなの。

 檻の中のライオンのやうに私のやることなすこと全てを叱らないで下さる?

 お菓子箱のお菓子のやうな可愛らしい子にはなれないし、

 ティッシュケエスの彼らのやうに何をされても許される女ぢやないの、私。


 段ボオル箱から取り出した時、貴方方はどんな顔をしておいでだつたのかしらん。

 真逆こんな女に変身するとは思つてもみなかつたでしゃうね!


 お気の毒様!


 さやうなら。


 * * *

「なーんて、ちゃんと伝えられたら良かったのにな」

「……」

「こんなにして。殆ど読めないじゃないか」

「……苛々がつのったのよ。破きたくなっただけ」

「……行くか?」

「……、……ええ。私行きたい。鳥籠から出してくださる?」

「はなからそのつもりだったよ」


『お母様


愛してる』


 ――お母様。

 ――貴女を心から愛せるやうに、箱入り娘を卒業したく思います。

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