幸福をもたらす茶柱
……そういえば聞いた事があります
茶柱は実は、茶葉に混じってる茎みたいなもの。
だからこしても出てこない茶葉と違ってその茎は出て来てしまうことがある。それが浮くと世界がどうひっくり返ってもその茎は立つように浮くので「茶柱が立つ」と言うんだと。
――ということは近所の山下さんの家の庭の枝が茶柱っぽいのでちょっと拝借してお茶に意図的に浮かべておけば私は毎日幸福というわけだ。
あれ、しかしこれではいつかは山下さんに折ってる事がバレてしまう可能性がある。
それに毎日幸福であるのは私だけで良い。
――あ、やっぱ問題ないや。
山下さんが庭に出て来たらお茶に誘ってしまおう。そして、貴方の庭は幸福をもたらす庭だと言ってしまえば良い。そして山下さんと共犯してしまうのはどうだ。
自分だけが幸福でいたいという願いは、涙を呑んで我慢するとして、これが上手くいけばそれ以上の福が舞い込む事に繋がるかもしれないからだ!
カフェなんか開いてさ。お客さんに出すお茶は湯飲み茶碗に入れるんでなくて急須に入れて、それで空の湯飲み茶碗と一緒に出す。そして、もうご存知の通り、山下さんの家の枝をその急須に混ぜるのさ。
そうすりゃきっとお客は
「あ! おばあちゃん見て! 茶柱が立った!」
「うんうん、縁起が良いねぇ。こりゃ十万円位払っていったほうが良いかね」
なんて、言うかもしれないぞ。
でも、普通のお客さんにこれをやっても意味は無い。詐欺だと言われてしまう可能性がある。そこで狙うは風水とかスピリチュアルとか信じてる、金持ち。
そう、山下さんみたいに!
あ、そうすると台詞はちょっと違うかな。
もっと、こう、
「アァラマ! 弁慶の泣き所ちゃま! 茶柱ザマス!」
「へぇ、凄いやママ」
「これがあれば弁慶の泣き所ちゃまのお受験もきっと上手くいくザマス!」
「へぇ、凄いやママ」
「決めたザンス。この店、私達が買い取るザマス!!」
キタコレエエエエエエ!!
これだ、これで行こう!!
取り敢えずは山下さんの説得からだ。よし、幸福増しましの二十本位の茶柱でどうだ?? よぉし。
「山下さん、このお茶、どうです?」
「きったね」
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