君だって同じ

「大量虐殺だ、恥を知れ」

 皆でそう叫んだ。喉から血が噴き出すぐらいに、叫びすぎて涙腺が崩壊した。

 そんな僕だけど、つい最近、蟻の国家を一つ滅ぼした。奴らと同じ、毒ガス噴霧で。

 理由なんて単純さ。害をなす動物だから。

 僕の国に侵入してこなければどうって事は無かったのさ。悶え苦しみ、体をびくつかせ、過呼吸するように仰向けに転がって動かなくなる足を弱々しくばたつかせるんだ。胸の奥がすろっとした。無心で眺めた。


 化学兵器。何て便利なんだ。一滴、たった一滴で僕みたいなちっぽけな奴でも命をこの丸っこい手に掌握できるんだから。

 僕らは神をゆうに超えてる。


 ――死から生を生み出す事を禁忌とし神と見なして非難するのは、その裏に眠る生から死を簡単に生み出す、という神を軽く超越する事実から目を逸らしたいからなんだ。


 そんな事、ぽつりと考えた。

 生き残りの歩兵を目の前で公開処刑しながら。


 僕は明日も喉から血が噴き出すぐらいに叫び続けるだろう。

 奴らが屈するまでそれは終わらない。


 でもやっぱりふと思う。


 僕も君も、同じ。

 君だって同じ。

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