第9話
#9...帰路
上下に揺られる感覚と、大きく暖かい温もりを感じつつ、戦いと能力を使い果たした俺は、もう少しこの暖かい温もりと心地よい揺れに包まれていたい衝動に駆られながらこれまでの行動を遡る。そして、リンクスがオプスキュリテの死神の一人スザクに身体の自由を奪われ五体をバラバラにされる光景が悪夢のようにそしてはっきり蘇って来た瞬間、この心地よい揺れと暖かい温もりを振り払うように、現実に意識を戻すと同時に、身体に劇痛と疲労が蘇って来た。痛みを堪え霞む瞳を開けると、同時に聞き覚えのある声で「気が付いたか?」とリンクスの声がした。そして俺は、頭が朦朧とする中リンクスに「無事だったのか?」と訪ねると「誰が誰にそんな事聞いてんだ!」と少しだけ笑いながら俺に言った。そして朦朧とする中、今の自分の状況を確認して「確かにそうだな。」とリンクスに答えた。どうやら俺は、今リンクスに担がれて敵陣の黒夜の塔から脱出している最中だと確信し、自分せいで作戦が、達成出来なかった事を嘆く。リンクスが「もう少し我慢出来るか?後少しでゲートを出られるからな!」とリゼルに問う。リゼルは、リンクスの無事が確認出来て安心したのかコックリと頷いてまた意識が遠のいて行く感覚を覚えながらまた意識を失った。
その頃、朱雀の間では.....
最終形態になった死神のスザクは、もぬけの殻になった朱雀の間で、一人怒り狂っていた!「リンクスめ!この最終形態になった死神のスザク様を、よくも出し抜きやがって!もう少しで赤眼のリンクスが我手に入ったものを!」と妖刀、屍で辺り一面、破壊しまくっている。完全にリンクスを倒したはずだった。最終形態になり、六本の腕でリンクスの五体を完全に封じ、リンクスの頭、体、腕、足と五体バラバラにしたはずだった。今でもその時の感触と絶頂感は、死神のスザクを恍惚な気分にする。だからこそ怒りが収まらないのだ!全ては、赤眼のリンクスが、死神のスザクに見せていた完璧な幻覚だったのだから......
リンクスとて此処で死神の一人である
スザクを倒しておけばこの先の戦闘がかなり楽になり有利に戦える事は、解っていたが、
それ以上にリゼルを失うことは、この先の戦闘において多大なる損失になる事は明白だった。いかに赤眼のリンクスとはいえ、死神の一人であるスザクを倒すのは、容易ではなく時間もかかる。リゼルの身体の状態にしてもかなりヤバイ状況は、否めずただ逃げるにしても、最終形態になった死神のスザクが簡単に逃がしては、もらえない事も解っていたのでリゼルが朱雀の間に入ってすぐに倒したスザクの両脇を固めていた大釜を手にしていた銀の甲冑の戦士の死体を利用して五体バラバラになって貰い、自分が殺されたようにスザクに幻覚を見せて、その隙に朱雀の間からリゼルを担ぎ、完璧な幻覚で、脱出に成功したのだった。
リンクスはリゼルを担ぎながら、赤いオーラを撒き散らしながら足が、少し浮く程度の高さで高速で飛翔して行く。そして遂にゲートを通過し、オプスキュリテの黒夜の塔を脱出しイデアルの軍が待機している場所になだれ込む。イデアル軍の待機所に行きなり赤い閃光が迫って来たので、オプスキュリテの奇襲かと作戦参謀のオルドーが支持をすかさず出す。が 直ぐに撤回する。オルドーが「リンクス指揮官!皆、リンクス指揮官がリゼル隊長を救出して無事戻って来たぞ!」と大声で全軍に知らせる。二番隊突撃兵団十二人と以下の兵達がすかさずリンクスとリゼルにかけより二人の無事を確認する。リンクスが「チェルシー!チェルシー.ジェシカは、いるか?早くリゼルを!リゼルを早く診てやってくれ!」作戦参謀のオルドーが伝令を出そうとする。その時「そんな大声で呼ばなくてもここにいるよ!コイツらから話しは、聞いてんだよ!私がいなきゃ始まんねんだろ!リンクス、お前も診てやるからそこにいなよ!」と二番隊突撃兵団をチラ見する。二番隊突撃長セーマは、懇願の眼差しでチェルシー.ジェシカを見る。チェルシー.ジェシカは、イデアル軍の軍医で、腕は、相当なもので、「私に治せないものは無い!」が口癖の女医である。スタイルも良く顔も美人だが、髪は、ボサボサ、でいつも酒を飲んでいて口もリゼルに劣らず最悪である。その上男勝りも加わっているからタチが悪い。チェルシー.ジェシカが助手のリスカに支持を出しつつ無駄一つ無い動きでリゼルの身体を診て行く。いつになく真剣な眼差しで額にも汗が浮かんでいる。そして大声で「イデアル生命維持装置を!早く!早くしな!急いでリゼルを生命維持装置に入れて直ぐに戻るよ!オルドー!さっさと支持だしな!」チェルシー.ジェシカの表情が曇る。助手のリスカもリゼルが深刻な状態を察しながら気丈にチェルシーを補佐する。リンクスもチェルシーの様子から一刻を争う事態と察し急いで退却命令を出し軍を退却する為動く。作戦参謀のオルドーも的確な指示で退却を進める。リンクスは、後ろからの攻撃に備えるべく歩兵部隊のテスに後方を任せて退却する。
イデアル軍の軍医であるチェルシー.ジェシカの様子に違和感を感じる二番隊突撃兵団十二人と以下の二番隊は、ピクリとも動かないリゼルが生命維持装置に入れられて運ばれて行くのを見守り、やっと退却を始めた。二番隊全員がオプスキュリテの朱雀の間に戻りスザクを倒しリゼル隊長の敵討ちをしたかったがリゼルでも倒せない相手にそれも叶わず意気消沈していた。二番隊突撃長のセーマは、自分の非力さに自分を責めていた。また伝令とし先に撤退していたトロンとキザムも、今までリゼルがここまでやられたの見た事がないのでショックが大きかった。イデアル、二番隊全員が誰も一言も話さず退却を始めた。
こうしてイデアル軍のオプスキュリテの総攻撃は、一旦終了となりイデアル軍は、イデアルのソウルシェルの古城に退却という形で苦い帰路となってしまった。
............to be continued
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