第8話
#8 …黒い戦士
白い少年と二人で、イデアルの居城を目指していた。
白い少年ゼノンが、「黒いおっさん何か騒がしくないか?この道で正しいのかも怪しいけどね!」と口を尖らせてこっちを睨む。俺は、睨まれてもしかたないかと肩をすくめる。なぜなら、白い少年ゼノンと出会い、ゼノンの過去を知り、意気込んで歩きだしたは、いいが此処までくるのに、二回も道に迷っているのだからしょうがない。先の方に居城が、小さく見えているのだ。その方向に真っすぐ進めばいいだけなのだが、一向に居城に辿りつかないのだ。それも、そのはずである。居城の周りの村や街、地形などを巧みに考えられて作られていて、居城が見えていても簡単に辿りつけないようになっているのだ。そんな事を知らない二人は、闇雲に居城を目指し進んでいた。そして、さっきゼノンが、言っていた騒がしい方に、向かって歩いていると、目の前に、小さな村が見えてきた。少し前を歩いていたゼノンが「村があるよ!腹も減ったし村の人に道もきけるんじゃない?」と少し先の方で俺に、両手を大きく振っている。俺は、「そうだな!」と返事を返しゼノンの所に急いだ。そんな俺を尻目にゼノンは、村に全速力で走って行ってしまった。俺は、呆れて 「全く可愛げの無いガキだなぁ!」と言葉を吐き捨て走るのを辞めた。ゼノンは、大きな橋を渡って村の入り口の門まで辿り着き後ろを振り返り「黒いおっさん何やってんだよ!遅ぇなぁ」と黒い姿を目で探したが、姿が見えず、ほっといて先に門をくぐった。
完全にゼノンの姿を見失いながら村と道を繋ぐ大きな橋まで辿り着き村の入り口の門が見えてきた。「あいつ、また口を尖らせて俺に、文句言うんだろうなぁ...だからガキは、嫌なんだよ。」と面倒くさそうに入り口の門を目指した。
ゼノンは、門をくぐり、愕然とし息をのんだ。「なんだよこれは?どうなってんだ?あの騒がしさは、これだったのかよ!」と辺りを見回す。そこは、ゼノンが育ったシルフ族の村に何処となく似ていて、懐かしさすら感じたが、ゼノンの眼にした光景は、まさにシルフ族の村が、崩壊したあの凄惨な光景と同じものが目に写しだされた。そして、ゼノンの身体から怒りが噴き出し、ゼノンの全身を白い闘気が覆う。そして、「探す手間が省けてちょうど 良かった。また間に合わなかったけどね。だけど今度は、ちゃんと仇をとってあげられそうだよ!」と独り言をつぶやき、怒号と悲鳴が聞こえて来る村の奥へ凄惨な光景の中を歩き始めた。
少し遅れて村の入り口の門に辿り着いた俺は、異様な空気が漂っているのに、気づいた。「ゼノンの氣がかなりたかまってるな!」と先を急いだ。そこに広がる凄惨な光景を目に村の奥へ進む。そして、白い少年が物凄い闘気を身体に纏って立ている。その奥には、オプスキュリテの兵士と村の戦士が争ってはいるが、どう見ても一方的にオプスキュリテが暴れているのは、否めなかった。村の戦士達も奮闘してはいるが結果は眼に見えていた。そして、ゼノンが、纏っている白い闘気がどんどん増幅し、戦場を白い霧で包んだかと思うとその白い霧は、戦場だけでなく村全体をも包みこんだ。
オプスキュリテの兵士と村の戦士達も異様な白い靄に、ざわめきだした。
ゼノンは、白い霧に姿を同化させオプスキュリテの兵士達に近づき腰にさしていたシルフ族の短剣で首を斬り裂き一人一人確実に仕留めて行く。
オプスキュリテの兵士達は、何処から攻撃されるか解ら無い恐怖と倒れて行く仲間の現実に、混乱し始めた。村の戦士達もオプスキュリテの戦士達が、次々倒れて行くのを目の当たりにし戸惑いの表情で動きを止めている。ゼノンは、怒りで、我を忘れてオプスキュリテの戦士達を倒して行く。オプスキュリテの白虎殲滅軍参謀ギルボアは、馬上の上で自軍の隊がどんどん崩れて行く様にイラだっていた。そして逃げ惑う自軍の兵士を馬上から鷲掴みにし、浮き足立つ自軍の中に投げ捨てる。そしてギルボアは、「何をしている!こんな姿を白虎様が見られたら全員八つ裂きにされてしまうぞ!お前らは、それでも白虎殲滅軍か!」と怒鳴り巨大な馬を疾駆させた。
ゼノンは、気が狂った様にオプスキュリテの兵士達を倒して行く。確実にシルフ族の短剣でオプスキュリテの兵士の急所をひとつきで仕留めて行く。一人倒したら姿を霧に隠しまた次、また次と確実に、オプスキュリテの兵士を減らして行く。そしてまた次の兵士を仕留めようと霧に姿を消そうとした瞬間、巨大な馬がゼノンの身体を突き飛ばした。ゼノンは、何が起きたのか解らずただ背中の激痛に顔をしかめ、地面に身体を強打した。その直後、背後に今まで感じなかったプレッシャーとさっき自分を突き飛ばした巨大な馬の気配を感じたかと思った刹那、巨大な手で身体を握りしめられていた。そして巨大な手の主が低い声でゼノンに問かける。「お前、我が軍が白虎殲滅軍と解って攻撃してきたのか?お前一人で良くやったが、ここまでだ!死ね!」とギルボアは、ゼノンを握り締めた手に更に力を加え逆の拳でゼノンの顔面を吹き飛ばす勢いで殴りかかった。ゼノンもギルボアの顔全体に白い霧を巻き付かせギルボアの視界を遮る。ゼノンがギルボアの拳に備え次の行動に出ようとしたその時、ゼノンを握り締めたギルボアの手の力が、スーっと弱まりギルボアの身体が真っ二つに切り裂かれ、ゼノンの創り出す白い靄とギルボアから噴き出すドス黒い血しぶきの向こうに黒光を放つ剣を握り黒い闘気を纏った戦士の姿が浮かび上がる。ゼノンは、黒い闘気を纏った戦士から眼を離さず空中で一回転して地面に降り立った。そして黒い戦士に眼で合図をして、白虎殲滅軍の残党を殲滅する為白い霧に溶け込んで行った。ギルボアを一撃で倒した俺は、ゼノンから逃げ惑う白虎殲滅軍の兵士を傍観しつつ、近づいてきた兵士を黒光を放つ剣で薙ぎ払う。逃げ惑う白虎殲滅軍の悲鳴も止み、白い霧が消えたそこには、白虎殲滅軍の死体の山が浮かびあがり、その中央に白い戦士が返り血を浴び紅く染まった姿が現れた。俺は、白い戦士に「おい!片付いたのか?終わったんなら行くぞ!」と声をかけた。白い戦士は、少し疲れた顔で「終わったんじゃないよ。やっとはじまったんだ!」と片手を上げて俺に合図を送ってきた。......
............to be continued
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