第7話


#7....赤眼と死神


リンクスに報告に向かったトロンとキザムは、ゲート目前でオプスキュリテの重量級強化人間に足止めをくらっていた。トロンとキザムは、背中合わせになり重量級強化人間を相手に奮闘していた。背中合わせごしにキザムが「一人一人は、たいしたことは、ないがこの数じゃ前に進めねぇな!」と先に進めない苛立ちをトロンにぶつける。トロンが「リゼル隊長が俺達を選んでくれたんだ!何としても本隊に、リンクス指揮官に伝えるんだ!」とリゼルを助けようと必死だった。そして二人が前を向き戦闘に専念した矢先に辺りが真っ赤に染まりだしゲートの方から眼光真紅の男が紅いオーラを撒き散らし現れた。そしてトロンとキザムの前まで立った瞬間、周りにいたオプスキュリテの重量級強化人間達が一瞬にして崩れ落ちる。トロンが「 リンクス指揮官!」と声を挙げ敬礼する。続けてキザムもトロンに習って敬礼した。リンクスは、頷きトロンに「リゼルは、無事か?」と尋ねる。トロンは、「かなり疲弊しています。オプスキュリテの死神(ししん)のスザクと戦闘中です。かなりヤバイ状況です。速く、リゼル隊長を!」「解った!」リンクスは、短く言い先に進む。トロンとキザムも続こうとしたがリンクスに「お前達は、このまま本隊に戻り作戦参謀のオルドーに退却の準備をしておけと伝えてくれ!リゼルは、必ず生きて連れて帰る。」と強い口調で命令した。トロンもキザムもリンクスの威圧感に一緒に行かせて欲しいとは、言い出せなかった…そして既に姿が観えず、紅く染まったゲートの奥を見つめ後ろ髪を引かれる思いでゲートの外を目指して走り出した。


スザクが妖刀、死屍で地面に埋まり虫の息のリゼルの首を切り落とそうと、妖刀、死屍を振り上げた時だった。朱雀の間の入口が紅く染まり、薄靄がかった部屋が真紅に色づいた。スザクも気付き振り上げた妖刀を入口の男に向ける。そして顔中、血管を浮かべた顔が怪しく笑う。入口から眼光真紅の男が物凄いオーラを発しながらスザクに歩み寄る。そしてスザクが「遅かったな赤眼のリンクス!お前のかわいい部下が此れからオプスキュリテの死神(ししん)の一人スザク様が処刑を行う!そこでシッカリ部下が殺される所を観ておけ!」とリンクスに「死の傀儡氏」と怪しく叫び二番隊突撃兵団の身動きを奪った技をリンクスにかける。リンクスは、スザクに歩み寄る足が止まった。それを観ていた二番隊突撃兵団達は凍りついた。そして二番隊突撃兵団突撃長のセーマは、愕然としながら「リンクス指令!」とさけんだ。スザクが「無駄だ!私の死の傀儡氏から逃れられるものはいないわ!」とリンクスにほくそ笑む。リンクスのオーラで紅く染まった部屋のせいで、妖気のかかった靄がリンクスの身体を無数に絡まりリンクスの動きを完全に止めているのがハッキリと観て取れる。そしてバチ バチバチとリンクスの身体の周りに衝撃が走る。ほくそ笑むスザクは、リンクスが動けないのを横眼にリゼルの首を跳ねる為、妖刀死屍を振り上げた。その時リンクスが紅く染まり光る眼を更に発光させ雄叫びを上げた!スザクも物凄い威圧感にリンクスを凝視する。リンクスに無数に絡まった妖気の靄がリンクスの雄叫びと共に崩れ落ちていく。そしてリンクスは、スザクに一瞬で詰め寄り「死炎風車」と叫びスザクを吹き飛ばした。そのまま二番隊突撃兵団の所に瞬間移動しスザクの死の傀儡氏を解き突撃長のセーマに「早く退却しろ。」と低い声で命令した。セーマ達二番隊突撃兵団は、リゼルに駆け寄ろうとしたがリンクスに「早くしろ!リゼルは、俺が連れて帰る。」と威圧され突撃長のセーマは、「リンクス指令に従え!リゼル隊長は、必ず生きてリンクス指令が救って下さる。」と叫び二番隊突撃兵団を指揮して退却した。二番隊突撃兵団が退却し、朱雀の間には、リンクスと虫の息のリゼル、そして壁にめり込んだスザクの三人だけとなり静まり返る朱雀の間に異様な空気が流れた。壁にめり込んだスザクが大量の妖気を漂わせて壁から起き上がって来る。リンクスは、リゼルに歩み寄り「リゼル、生きてるか?お前にしちゃけっこうな殺られ方だな?」とリゼルに話しかける。しかし、リゼルは、細く目をあけフっとか細く笑い何とか生きている事をリンクスに合図する。今のリゼルにはそれが精一杯の反応だった。そしてリンクスは、床にめり込んでいるリゼルの腕を掴み一気に持ち上げた。リゼルは、リンクスに身を任せたまま床の上に着地する。リンクスはリゼルに「退却するぞ。」と言ってリゼルを担ぎ上げ朱雀の間の扉へ足を進める。背後から顔に無数の血管を浮かび上がらせながらスザクが歩み寄り、「この私を吹き飛ばして於いてこのまま帰れると思っているのか?赤眼のリンクス!その死に損ないと一緒にお前も血祭りにあげてやるわ!」と叫びリンクスに死の傀儡子を再びかける。リンクスは、すかさず瞬間移動しそれを避ける。そしてリゼルを朱雀の間の隅に降ろす。そしてリゼルに「少し此処でまってろ。」と言い残しスザクに向かって行く。リゼルは、返事を返す事なく壁に寄り掛かる。スザクは、またしても死の傀儡子を交わされた怒りに一気にリンクスに詰め寄る。「お前の死の傀儡子は、もう見切った。このままお前も退けば怪我せずに済むぞ!」とリンクスは、スザクに低い声で話す。スザクは、「死神のスザクに舐めた事をぬかす!」と妖刀 死屍でリンクスに斬りかかる。リンクスは、瞬間移動を駆使してスザクの妖刀 死屍を交わし、スザクの背後に回る。スザクも振り向き様に妖刀 死屍を振り払う瞬間、リンクスの拳がスザクの顔面を捉える。スザクの顔にリンクスの拳がめり込み鈍い音が朱雀の間に響く。そのままスザクは、吹き飛ばされながら妖氣斬と叫び妖気の刄をリンクスに浴びせる。リンクスは、妖氣斬の妖気の刄で身体を切り裂かれながらもスザクに詰め寄りスザクの顔面を鷲掴みにしようとしたが、スザクの姿が消えリンクスの背後に現れ妖刀 死屍で斬りかかる。リンクスは、後ろにステップしそれを交わそうとしたが、スザクの腕が伸びて妖刀 死屍がリンクスを捉える。その瞬間リンクスは、瞬間移動しスザクから距離を置いた。スザクは、リンクスに殴られ歪んだ顔に薄気味悪い笑みを浮かべて「さすがは、赤眼のリンクス!我が攻撃を交わすとはな!しかしそうで無ければ面白くない。戦いは、これからだ!」とこの戦いを楽しんでいる。リンクスは「その歪んだ顔で余裕があるようには、見えないがな!」と皮肉を返す。しかし早く、この戦いに決着を着けなければリゼルの身体がもたなくなることは、必死だった。リンクスは、床に転がっている銀色の鎧の死体に視線を走らせた。多分、リゼルが倒したヒューマン ノイドだと察しは付いた。その瞬間、スザクが腕をムチの様に伸ばし妖刀 死屍をリンクスに乱れ打つ。そして「貴様こそ何処を見ている?余所見している程、余裕があるのか?今度は、瞬間移動でも逃がさんぞ!」と更に腕のムチの速さを増しリンクスに妖刀 死屍を浴びせる。リンクスは、妖刀 死屍を受けながら致命傷は、交わしてスザクに対峙する。確実にリンクスの瞬間移動は、警戒されている。いや、瞬間移動で交わす瞬間をスザクは、ねらっている。リンクスが瞬間移動する時にほんの僅かに動きが止まる瞬間を!さすがは、死神の一人だけあって抜け目がない。今まで倒したヒューマン ノイドとは違う。これが、上級強化人間かとリンクスは思った。リンクスは、ムチの様にしなる腕から繰り出される妖刀 死屍をかわしながら、スザクとの距離を詰め赤眼に力をこめ「ファイヤー ミスト」を浴びせる。しかし「ファイヤー ミスト」は、スザクの身体をすり抜け空を切り、スザクの高笑いが朱雀の間に響く。そしてスザクが「我が奥義を受けるがよい!」と叫び、スザクは、身体中の血管を浮かび上がらせ、そしてリンクスに殴られ歪んだ顔が血管で膨張しスザクの顔がほとんど原型をとどめていない。今にも血管が破裂しそうなほど膨れ上がりスザクの鼓動と連動してウニウニと不気味な動きをしている。リンクスは、「お前の奥義とは、怪物に変身する事なのか?」と冷ややかな視線をスザクに投げかけたその時スザクの身体の真ん中から裂け身体から腕がのびさらに二つの顔が現れた。スザクは、咆哮を上げて苦しみ出しスザクに身体中に妖気が纏わり付く。リンクスは、スザクが変身するのを待つ事はないとファイヤーダスト、ファイヤーブラストを続け様に、動きが止まって妖気を纏わり付けているスザクに繰り出した。リンクスのファイヤーダスト、ファイヤーブラストがスザクを捉えた瞬間、妖気が爆散しスザクの変わり果てた姿が露わになる。顔が三つ、腕が六本という阿修羅像に類似しているが、似ても似つか無いほどおぞましく変貌を変えた姿がリンクスに視線を合わせ妖気、いや邪気を周りに撒き散らしている。姿を変えたスザクは、「これで、私は無敵となった。赤眼のリンクスとてこの私の前では、赤子同然だわ!」と邪気を口から吐き出しながらリンクスを挑発する。リンクスは、バズビストにも向けた哀れみの視線をスザクに向ける。そして無言のまま能力を最大限まで上げ、リンクスの周りを紅く染め上げていた紅いオーラが更に紅く染まって行く。そしてリンクスは、腰に刺してあった劔を抜きスザクに物凄い速さで向かって行く。スザクも不敵な笑みを口元に浮かべリンクスを迎え打つ。スザクの六本に増えた腕でリンクスを縦横無尽に攻撃する。リンクスは、炎の能力を纏わせた劔で炎を撒き散らしながら瞬間移動でスザクとの距離を詰める。そしてスザクの右側の三本の腕をその炎を纏った劔でまとめて切り落とす。そのまま背後に回り三つになった左側に着いている顔に炎を纏った劔を突き立てた!スザクは、グギャーァァァ!と発狂し、すぐさまグワハハハと笑いまた身体中の血管が浮き上がり切り落とされた腕から三本の腕がヌルヌルと再生され劔で突き立てられた顔も傷が消え去った。スザクは、不敵な笑みを浮かべ、リンクスに「私は、不死身となった。私の恐ろしさを思う存分味わうがいいわ!」と低い声でリンクスに投げかけた。リンクスはスザクの言葉に「その化け物と化した姿で充分恐ろしいがな!」とスザクに言葉を投げ返した。スザクは、やっと身体が慣れてきたのか攻撃の大勢に入った。六本の腕を伸縮させ、リンクスに対峙する。リンクスも炎を纏った劔をスザクに構えスザクの動きを警戒する。スザクが先に動いた。外見からは、想像もつかない速さでリンクスとの間合いを詰め、六本の腕でリンクスの頭、腕、足を捕捉した。リンクスは、スザクの動きの速さに着いていけず完全に動きが封じられたかたちとなった。行き絶え絶えのリゼルがうっすらと目を開け目にした光景は、リンクスがさっき自分が戦っていたスザクとは、原型を留めていない姿をした怪物に身体の自由を奪われているリンクスの姿だった。リゼルは、リンクスを助けに行こうと身体を起こそうとするが、スザクに殺られ、能力を使い果たした身体が思うように動かない事に苛立ち自分の無力さに氣が狂いそうになった。身体の自由を奪われたリンクスは、スザクの妖刀、屍によって切り刻まれ首、腕、身体、足、と五体をバラバラにされる光景を薄れゆく意識の中で目の当たりにしたリゼルは、怒りと困惑の中でなぜか身体が軽くなる感覚を覚えつつ完全に意識は途絶えた。…


................to be continued

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