第6話

♯6....死神(ししん)のスザク


殺戮鬼兵ボルケーノを一人で完膚無きまでに叩き駆逐したイデアルの二番隊隊長のシャルム リゼルは、能力を使い果たし疲労困憊が激しかった。二番隊突撃長のセーマがリゼルに肩をかしながらゲートの奥を目指す。セーマが「リンクス指令が来るのを待ってから先へ進んだほうがいいのでは?」とリゼルに進言する。もちろん、リゼルもそれは、わかっていた。今の自分では、確実に脚でまといになるだろう。しかし、殺戮鬼兵ボルケーノのゲドが最後に言った言葉がリゼルの頭に引っかかっていた。確実に奴ら殺戮鬼兵より強いやつがこの先には、存在するのだろう。少しでもオプスキュリテを倒しておけば必ずリンクスがどうにかしてくれるはずと信じている。そのためには、この身など、どうなってもこの先に居るであろう,まだ見ぬ敵の情報を手に入れたいと思っていた。......


周りの状況もかなりのオプスキュリテの下級戦士の数も減りイデアルの部隊も大勢を再度立て直しオプスキュリテの黒夜の塔に突入可能な状態だった。退路を作る為に後方で指揮を取り戦闘を進めるリンクスは、イデアルの歩兵部隊のテスに「二番隊の姿が見えないな?リゼルは、どうした?まさかゲートの先へすすんだのか?」と尋ねる。テスは、「は!」とリンクスに一礼し「二番隊リゼル隊長は、オプスキュリテの殺戮鬼兵ボルケーノとの戦闘に入り見事撃破! 黒夜の塔のゲートを開放そのまま先行し、リゼル隊長と二番隊突撃兵団の十二人を、引き連れゲートに突入した模様です。」と報告した。そしてまた一礼し下がる。リンクスは、次に自軍の戦力を確認する為作戦参謀のオルドーを呼んだ。オルドーも戦力を把握する為せわしなく各部隊を回り細かく状況を確認していく。数分たった頃急ぎ足でリンクスに駆け寄りながら「遅れて申し訳ありません。」と言い、一礼し戦力の報告を始める。「二番隊リゼル隊長の働きで予定よりかなりの戦力が失われずに済み約三分の二以上は、残っています。このまま先に進めるだけの戦力は、十分です。」と報告する。リンクスは、「解った。そのままゲート突入に備えて各部隊をまとめて置いてくれ。」とオルドーに言い渡す。オルドーは、リンクス指令と言葉を続ける。「二番隊リゼル隊長と二番隊突撃兵団の十二人以下の二番隊の兵士から聞いたのですが、リゼル隊長は、一人で殺戮鬼兵を殲滅した為、かなり疲弊している模様です。ゲートに入る際も、突撃長のセーマに肩を借りながら突入したらしいのでリゼル隊長が気に掛かります。リゼル隊長は、どんな事があっても作戦を成し遂げる人なんで。」リンクスは、リゼルを信頼している。リゼルに会った頃は、かなり無茶をする奴だと思っていたが、ここ何年かでリゼルは、イデアルの戦士として二番隊隊長としての自覚がでて来て疾風のリゼルと言われていた頃の横暴さや言葉の最悪さも陰を潜め隊長らしくなったと思っている。リンクスは、オルドーに「全部隊は、ここで、体制を整え待機だ。俺は、リゼル達二番隊を追ってゲートに突入する。後の指揮は、オルドー、お前がしてくれ!絶対無理は、するなよ!やばくなったら全部隊を撤退しろ。」とオルドーに命令する。オルドーは、「しかし、何名か、連れて行かれた方が宜しいかと?」とリンクスを気に掛ける。リンクスは、「大丈夫だ。逆に一人の方が動きやすい。」とオルドーに返事を帰す。オルドーもリンクスに「解りました。後のことは、任せて下さい。やばくなったら撤退させて貰います。」と返事を返す。そして「お気をつけて」と一礼しリンクスの命令を遂行する為に各部隊に走って行った。リンクスは、嫌な予感を感じてならなかった。なんとしてもリゼル達と合流し戦況を確かめなければとゲートに急ぐ。そしてリゼルが無理しなければと願い能力を開放させ、リンクスの目が赤く染まる。


二番隊隊長シャルム リゼルと二番隊突撃兵団の十二人は、ゲートの遅までたどり着く。この間にオプスキュリテの強襲に二回合ったが、二番隊突撃兵団の十二人で充分対処可能な戦闘だった。先ほどまでの戦闘の騒がしさからいっぺん静まり返えっている。リゼルと突撃兵団の十二人の足音が辺りに響く。そして人工的な扉の前に辿り着く。リゼルは、セーマの肩に捕まりながら辺りに細心の注意を払う。そして突然、人工的な扉が内側から開く。リゼルと突撃兵団の十二人は、一斉に臨戦体制を取る。そしてリゼルが「いくぞ!」と突撃兵団の十二人に促す。そしてリゼルは、セーマの肩に捕まりながら扉の中に進入する。やはり扉の中も静まり返り霧の様な靄が立ち込めている。リゼルは、「視界が悪い!全方位に注意を忘れるな!奴らは、どこから攻撃してくるか解らないからな!」と注意を促しながら自分に言い聞かせる。今の状況では、一つの小さなミスがとんでもない事態を招き兼ねない。そして少し前進した所で一脚の豪勢な作りの椅子に座り銀色の眼光を向ける男が要る。その両脇を固める様に全身銀色に輝く鎧を身に付け手には、大釜を携えた甲冑の戦士が二人いた。リゼルは、遂にこの時が来たと思った。椅子に座り銀色の眼光を向ける男は、殺戮鬼兵ボルケーノなど霞むほどの妖気を漂わせている。両脇の銀色の鎧に身を包む戦士もかなりの妖気を漂わせている。リゼルは、突撃兵団のトロンとキザムに「今すぐ本隊に戻りこの事をリンクスに知らせろ!ここは、俺が何とかする。」と命令を出す。トロンとキザムは、顔を見合わせ少しと迄っている。間髪いれずに二番隊突撃長のセーマがリゼルを察して「速く行け!隊長の命令だ!」と強い口調で急かす。トロンとキザムは、頷き来た道を引き返す。その時銀色の眼光を向ける男が「逃がすな!」と殺気の籠もる声で命令を出す。銀色の鎧に大釜を持った戦士二人が物凄い速さでトロンとキザムに襲い掛かった。リゼルは、セーマの肩から一瞬で姿を消し、まずはトロンに向って行った銀色の鎧の戦士を蹴り飛ばす!その反動を利用してキザムに向って行った銀色の鎧の戦士にウインドランスを喰らわす。ウインドランスを喰らった銀色の鎧の戦士は、真っ二つに銀色の鎧ごと切り裂かれ地面に崩れ落ちる。そして間髪いれずに、さっき蹴り飛ばした銀色の鎧の戦士にウインドフルを浴びせ体制が崩れた所にウインドボムをくらわせ息の根を止めた。そしてトロンとキザムに「行け!」と叫ぶ。トロンとキザムは、リゼルの目を観て力強く頷き走りだした。リゼルは、膝をつき息を切らし銀色の眼光を向ける男に目を向ける。セーマは、今のリゼルは、研ぎ澄まされていると思った。あれだけ殺戮鬼兵ボルケーノとの戦闘で能力を使い果たしているのに無駄の無い今の攻撃ができ瞬殺している。やはり疾風のリゼルは、死んでいなかったと確信する。椅子に座り銀色の眼光を向ける男が「さすがは、殺戮鬼兵ボルケーノを一人で倒すだけの事はあるな!イデアルは、赤眼のリンクスだけでは、ないようだな。」とリゼルに問いかける。リゼルは、能力を開放している。「どいつもこいつもリンクス、リンクスとうるせえな!お前らリンクスしか知らねえのか!糞共の親玉がぁ!」と床を殴りつけながら立ち上がった。銀色の眼光を向ける男が、「下品な奴が我がオプスキュリテの黒夜の塔 、朱雀の間にきたものだな。その減らず口もすぐに黙らせてやるわ。」と言って朱雀の間に結界を張った。リゼルは、ユラユラと身体を揺らしながら銀色の眼光を向ける男の前に進みでる。「申し遅れた。私は、この朱雀の間の主スザクだ。私の名前を聞いた所ですぐこの世から消え失せるがね。」とリゼルを睨みつける。リゼルは、「何、人間らしく振舞ってんだ!身体のあっちこっち弄くり廻された怪物の癖に!グダグダ言ってねぇでサッサと掛かって来い糞ヤロー!」と言い終わる前に溝落ち辺りに激痛が走る!リゼルは、そのまま吹き飛ばされ人形の様に床に崩れ落ちる。スザクは、眉間に血管を浮かべ「この死に損ないが、お前如きがこの私を侮辱する事は許さん!オプスキュリテ死神(ししん)の一人、スザクがお前を地獄に落としてやるわ!とスザクが床に倒れて居るリゼルを真上から蒼白い妖気の玉を投げつけた。その玉は、首、両手首、両足首に纏わりつき妖気の鎖になり、そして倒れているリゼルを吊るし上げる。そのリゼルの前にゆっくりスザクが姿を現す。そしてスザクは、妖刀、死屍でリゼルの身体を縦横無尽に切り尽くす。さすがのリゼルも苦痛の叫びを挙げる。セーマ達二番隊突撃兵団は、リゼルを助けようと陣形を組み動こうとした瞬間、スザクの[死の傀儡氏」で身動きが出来なくなり操り人形の様に立ったまま項垂れる。リゼルは、「セーマ!」と自分の事より部下を思う気持ちが怒りに変わる!そして鬼の形相でスザクを睨みつける。スザクは、「安心しろ。死んでは無い。お前を葬った後、オプスキュリテの戦士として改造してやる。死にぞこない!人の心配より自分の心配をしたほうがいいんじゃないのか?」と言って妖刀、死屍で脚を貫く。ウギャーとリゼルが呻き声を挙げる!リゼルは、殺戮鬼兵ボルケーノのゲドの最後の言葉「お前達も、同じ運命を辿る」が頭を辿る。確かに死神(ししん)と名乗るだけはあるが、決して倒せない相手では無い!と思いつつも、能力を使い過ぎて疲弊しているこの身体では、かなりの厳しさは否めない。倒すなら一撃で倒すしかない。スザクが「次は、何処を貫かれたいかな?胸か首かそれとも頭をひとおもいに貫いてあげましょうか!」と妖刀、死屍でリゼルの頬を撫でる。リゼルは、手首だけを使ってウインドフルを数発発射させた。しかし、スザクは、見抜いていたのか紙一重で全てのウインドフルを交わす。そして「くだらん技だな!そんなそよ風の様な技で私を倒せると思っているのか?」とリゼルに問う。リゼルは「お前には、じゅうぶんだ!」と言葉を返した瞬間さっき繰り出したウインドフルが一斉に戻ってくる。しかしそれすらも解っていた様に軽く跳躍して交わす。戻ってくるウインドフルが諸にリゼルに向かう!スザクは、大きく笑い「お前らの様な下等生物が考える事など手に取る様に解るわ!」とリゼルを嘲笑うそして「自分の技で死ぬがいいわ!」と迫り来るウインドフルとリゼルを凝視する。セーマもスザクに身動きが取れなくされてはいるがリゼルを助けるべく「死の傀儡氏」から必死で逃れようと動いた瞬間、リゼルが目で何かを訴えかける。ウインドフルは、リゼルの前まで迫った瞬間それぞれ別の方向に別れリゼルを呑みこんだ!セーマが「リゼル隊長!」と懇願の目でリゼルを見据える。リゼルがいた場所が霧の靄とウインドフルの竜巻とで白い爆風が朱雀の間を埋め尽くす。スザクは、妖刀 死屍を肩に担ぎ爆風が消えるのを凝視している。セーマ達二番隊突撃兵団は、リゼルが生きている事を切に思い、スザクとリゼルが居た場所を見つめる。次第に爆風が薄れ視界が開かれてきた。リゼルが居た場所からは、気配が感じられない。そして白い爆風が消え、そこにリゼルの姿は完全に無くなっていた。スザクは、大きく高笑いし「自分の技で死ぬ気分は、どんなものなのかな!一片の欠片も残さないとは鬼を喰らう 疾風のリゼルの最後に相応しい最後だ。残ったお前達は、此れから私の部下として働いて貰う。」とまた高笑いし、「次は、赤眼のリンクスを血祭りに挙げてやるわ!」と叫ぶ。その時スザクの首が切り裂かれ転げ落る。セーマ達二番隊突撃兵団は、何がおきたのか解らずその場で立ち尽くす。そこに満身創痍のリゼルが現れ膝を落とす。セーマ達は、リゼルの疲れ果てた姿を目のあたりにし歓喜の声を挙げる。リゼルは、震える声で「 リンクス後はたのんだぞ!」と意識が薄れていこうとする中、切り裂かれたスザクの首が浮き上がりリゼルに向かって言葉を発する。「まんまと騙されたわ!まさかウインドフルをターンさせて攻撃して来るところ迄は、読んでいたのだが、私がそれを避けるのも読み、その帰ってきた竜巻を使って妖気の鎖を壊しさらに身を隠し私に攻撃して来るとはな!対したものだな疾風のリゼル!だが残念だがここ迄だ。」と発した所で切り裂かれた首が身体に戻り元の姿に戻る。さらにスザクは言葉を続ける。「どうだ私の首を切り裂いたと思い勝利を確信した直後に私が幻覚を観せていた事を知った気分わ?絶望に言葉も出ないか、リゼルよ!」とリゼルに言葉をぶつけた。そして朱雀の間にスザクの高笑いが響き渡る。リゼルもそうだがセーマ達二番隊突撃兵団も絶望し目まぐるしく変化する状況についていけずただ立ち尽くすのみだった。リゼルの朦朧とする頭には、既に思考能力は無くなっていた。疲弊した身体で最後の望みの攻撃も交わされ精魂つきはて既に死を覚悟していた。スザクは、リゼルの頭を鷲掴み持ち上げる。リゼルの頭から骨が軋む音がメキメキと鈍い音が する。リゼルには、苦痛で叫ぶ力も既に無くなっているのか呻き声すら出さない。宙ずり状態のリゼルをスザクは、鋼の拳を連打し壁に殴りつける。リゼルは、抗う事無く壁にブチ当たり身体が半分まで壁にめり込んだままの状態になる。スザクが「殺すには、惜しいな。どうだ私の部下として働く気はないか?そうすれば命だけは、助けてやってもいいぞ!」と誘惑の一言を囁く。リゼルは、声にならない声で「お前の手下になるぐらいなら死んだほうがマシだ!糞ヤロー!」と呟く。スザクは、顔中に血管を浮き上がらせ、「憎たらしいガキが!」と叫びリゼルの顔面を掴み壁から剥ぎ取って地面に叩きつける。今度は、地面に埋まり身動き出来ない状態になった。そしてスザクは、妖刀、死屍でリゼルの首を落としに掛かる。


..........to be continued

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