第5話
♯5....鬼を食らう者
リゼル率いる二番隊は、リゼルが能力を開放し黒夜の塔の第一ゲートから出て来た重量型ヒューマンノイドを駆逐していた。二番隊突撃長のセーマがリゼルに走り寄ってくる。リゼルは、「どうした?何があった!」とセーマに声を掛けた。慌てた様子でやっとリゼルに「ゲートの中から呻き声が聞こえて来て武装したヒューマンノイドが倒れていってます。」リゼルは、腑に落ちなかった。イデアルの部隊で今最前線にいるのは、間違いなく俺達二番隊のはずだ。リンクスは、退路を作る為に最後尾で戦闘中のはず?と考えているとゲートから呻き声が聞こえズズン、ズズンと足音が響いてきて緑色の光が十個ユラユラ動いている。そしてゲートから五人の巨躯が姿を現す。その容貌は、まるで鬼の様にそして威圧感を漂わせている。そう彼らは、オプスキュリテの殺戮鬼兵ボルケーノである。イデアルの戦士達も殺戮鬼兵ボルケーノは、知っているし、かなりの被害にも遭っている。今まで優勢に戦闘を進めて来たイデアルの戦士達が一気に戦意を失っていく。
そんな中イデアルの二番隊突撃兵団とリゼルだけは、違っていた。二番隊突撃兵団は、リゼルがイデアルに参加する時にリゼルが信頼出来る仲間十二人を特別に招集した猛者の集まりが二番隊突撃兵団である。二番隊突撃兵団は、リゼルを囲む様に陣形を組みセーマが先陣を斬ろうとしている。その様子を観ていたオプスキュリテの殺戮鬼兵ボルケーノのゲドが鼻で笑い「赤目ヤローは、いねぇのか!お前ら観たいな下級サイキックソルがいくら集まっても俺達殺戮鬼兵ボルケーノの相手にならねぇんだよ!」と罵った。リゼルが「自分の仲間をなぎ倒しながらご登場のウドの大木鬼兵などリンクスが相手にする必要はない!」と一蹴する。殺戮鬼兵ボルケーノの五人が大きく笑いだす。そして殺戮鬼兵ボルケーノのギタが笑いながら「お前、ビビりすぎて頭おかしくなったんじゃねぇのか?ションベンちびる前に赤目ヤローを呼んでこい!」と怒鳴り散らす。リゼルは、小さな声で「ゲスどもが!」と吐き出しセーマに「リンクスがここに近付かない様に見張っていろ!」 と大きく命令し、「こいつらは、俺一人でやる!」と宣言した。リゼルは、ゆっくり殺戮鬼兵ボルケーノに近付いていった。セーマは、ボルケーノよりリゼルの事が大きく不安になった。リゼルがアレをやるのでは、ないかと....
リゼルが近付いてくるのを見て殺戮鬼兵ボルケーノの五人は、戦闘体制にはいる。リゼルは、完全に能力を開放し始める。そして人が変わったかの様な言葉を発した。「オイ!糞ヤローども、俺様がちょっと近付いただけで戦闘体制に入ってんじゃねーよ!オイそっちのションベンが何たらぬかした木偶の坊!テメーだよ!テメー!ビビって糞たらしてんじゃねぇぞ!テメーらみたいな雑魚がリンクスと戦うなんて百万年はえーんだよ!さっさと掛かってこいやー!こねぇんならこっちからいくぞ!」と言い終わる前に走りだした。殺戮鬼兵ボルケーノのゲドが頭に血管を浮かび上がらせながらリゼルを迎え打つそれに併せてギタがゲドの逆に回る。他の三人ザザ、ボル、ガガがさらに周りを固める。リゼルは、ゲドとギタの間を一瞬で走り去る。まさに疾風の如く過ぎる瞬間リゼルは、「疾風風来」「ウインド.フル」と続けざまに技を繰り出す。ゲドとギタの脇腹が無数に切り刻まれ血が噴き出し身体を仰け反らせる。ザザ、ボル、ガガは、「ウインド.フル」で吹き飛ばされ体制を崩す。過ぎ去ったリゼルは、急旋回しギタの頭上に降り立つ、そのままギタの両目にウインド.フルを叩き込む。ギタは、両目を失い咆吼を挙げてふさぎ込む。そこにすかさず蹴りを何発も叩き込む。後ろからゲドが襲い掛かる。リゼルは、それすらも見透かして跳躍し空中でクルリと回転し交わす。そのまま後ろにいた三人ザザ、ボル、ガガにウインド.フルを乱れ打つ!ウインドフルが起こした無数の竜巻がザザ、ボル、ガガを飲み込み空中に吹き飛ばす。そのまま踵を返しゲドを蹴り飛ばしギタの前に走り右腕を剣で叩き落す。ギタの右腕が宙を舞いギタの目の前にドサリと落ちる。そしてギタに馬乗りになり目を失った顔面を殴りだす。ギタの顔面から血が噴き出しすでに咆吼も挙げられ無くなったギタの顔面を狂った様に殴り続ける。セーマ達二番隊突撃兵団十二人が目を背けるほどおぞましい光景が続く。リゼルは、ギタの顔面を殴りながら「中途半端に粋がってんじゃねーぞ!テメーら怪物どもがぁー!」と叫びまだギタの顔面を殴り続ける。そしてギタの頭をわしづかみにしてもちあげ「ウインド.ランス」と叫びギタの頭を身体から切り離した。切り離したその頭を片手に持ちユラユラと立ち上がりゲド、ザザ、ボル、ガガの方を睨みつける。まるでその様は、鬼人のようである。ガガが何かを思い出す。そして凍り付き震える声で話し出す。「鬼を喰らう、疾風のリゼル.....」それを聞いたゲド、ザザ、ボルが震え上がる。その後ろで傍観している二番隊突撃兵団の十二人も「疾風のリゼル」の言葉に震撼する。勿論、知ってはいるが目の前であの殺戮鬼兵ボルケーノのギタの凄惨な姿を目認し「疾風のリゼル」の言葉を耳にすると、知っていても震えがくる。今でこそ、イデアルの二番隊隊長にあまんじてはいるがリゼルがイデアルに入る数年前は、疾風のリゼルといえば、知らない者がいないほど恐れられた存在だった。端正な顔立ちで貴族じみた外観からは、想像も付かない程の残虐性と横暴さ、そして恐ろしく言葉使いの悪さを兼ね備えていた。リゼルの能力と同じく風のように流離い自由気ままに生きて来たのである。リゼルが気にいらなければ良い悪い関係なく全滅させていた。そんな中イデアルと出会いリンクスにボロクソに殺られイデアルの部隊に入隊するのである。それ以降、鬼をも喰らう、疾風のリゼルの姿は、聞かれなくなっていた。勿論リンクスに止められていたからである。だから、この殺戮鬼兵ボルケーノとの戦闘に入る前にセーマにリンクスがこないか見張る様に命令したのである。まぁこうなったら誰も止めようがないが。....セーマの悪い予感は、見事的中したのである。リゼルは、ギタの変わり果てた頭を殺戮鬼兵ボルケーノ達に投げつけた。そして不敵な笑みを浮かべながら「鬼を喰らう、疾風のリゼルなんて良く知っているな。テメーら怪物でも疾風のリゼルは、怖いか!さっきまでの威勢は、どうした?こんな姿、リンクスに観られたらどおすんだよ!まぁ今更知った事じゃねーけどな。お前ら鬼を喰って喰って食い捲ってやるぜ!糞ヤローども!」とまた汚い言葉を殺戮鬼兵ボルケーノ達に浴びせ戦闘モードに入っていく。殺戮鬼兵ボルケーノ達もゲドを中心に陣形を作ろうとしたが疾風のリゼルの名前どうり疾風の速さで殺戮鬼兵ボルケーノ達の中心に入り込む、そしてザザの足を「ウインドランス」で切り落とし後ろから迫るガガにかなりの近距離から「ウインドフル」を浴びせる。ガガは、諸にウインドフルを受けて幾つもの竜巻を抱き込む形で身体を切り刻まれ朽ち果てた。ボルが巨躯を活かしてリゼルに掴みかかりリゼルを捕獲した。捕まえてしまえば、力でねじ伏せられると思ったのか「このまま握り潰してやるわ!」と叫ぶ!リゼルは、「汚ねー手で俺の身体を触るんじゃねーよ糞ヤロー!」と捕まれたボルの腕をウインドランスで切り落とす。ボルは、斬られた腕から大量の血を噴き出し後ろに後ずさる。リゼルは、その動きに併せて距離を詰め「ウインドボム」と発した。風がボルを包み大きく爆発し身体が粉砕した。黒く焼け焦げたボルの亡骸にリゼルは、また汚い言葉を吐き捨てる。「焼き豚の出来上がりだな!そっちの豚も焼いてやろうか?ああん!」とゲドの方に歩み寄る。ゲドは、額から溢れる程の汗が滴り落ちる。「オイ!豚ヤロー!最初の勢いは、何処に行きやがったんだ、ああん!テメーらの相手は、俺で十分なんだよ!」とリゼルは、言葉を吐き捨てる。ゲドは、跳躍し間合いを取った。かなりリゼルから離れる事に成功した。リゼルは、「がたいの割りには、動きが速いじゃねーか」とまたゲドの方に歩を進める。数歩あるいた時に地面から呻き声が聞こえる。それは、始めにリゼルに足を切り落とされたザザが身動き出来ずに呻き声を挙げていた。今までの凄惨な光景を目の当たりにし、すでにリゼルに恐怖し戦意喪失しているザザは,リゼルに懇願の目を向ける。リゼルは、歩を進める。ザザの頭の脇をリゼルが通り過ぎる。ザザは,助かったと安堵の表情を浮かべる。その刹那リゼルの脚がザザの顔面を踏み砕く。バキボキボキバキと鈍い音が響き渡りぐぎゃーという叫びが戦場に鳴り響いた。「そんなでけー声で叫ぶんじゃネェよ!テメーらの大好きなリンクスに聞かれるじやねぇか!糞ヤロー!」二番隊突撃兵団突撃長のセーマは、すでに戦意喪失している相手にそこまでするのかと身震いする。本当ならリゼルを落ち着かせ体力を温存させなければならない立場だがとても間に割って入れる状況でも度胸もない。セーマは、戦ってもいないのに、自分の非力さを痛感する。リゼルは、何もなかったかの様にゲドの方に歩を進める。ゲドも覚悟を決めたのかゆっくりひと呼吸し構える。その姿を見たリゼルは、「もう鬼ごっこは、終わりか?逃げてみろ!テメーは、簡単には、殺さねぇぞ!」と更に歩を進める。ゲドは、意を決してリゼルに突進する。リゼルもまたゲドの突進する方に突進する。ゲドとリゼルがぶつかるギリギリでリゼルは、ゲドを交わしゲドの背中に疾風風来を浴びせる。ゲドは、疾風風来を受け背中から胸を貫かれた。そしてそのまま膝をつく。そしてまたウインドランスでゲドの左腕を切り裂くそしてゲドが震える声で口を開いた。「さすがは、鬼を食らう 疾風のリゼルだ。我々殺戮鬼兵ボルケーノを子供扱いとはな。さぁ、ゲートを潜って先へ進め!お前も俺達と同じ運命になる。」そこまで言って口から血を吐き呻いた。リゼルは、「さすがは、殺戮鬼兵ボルケーノだ。命乞いするかと思ったがたいしたもんだ!それに免じてひと思いに殺してやる!」と言って持っていた剣でゲドを真っ二つに切り裂いた。ゲドは、声を出す事も出来ずに朽ち果てた。リゼルは、剣に寄りかかる様に立ち尽くし殺戮鬼兵ボルケーノとの戦闘は、終結した。そして肩を揺らすほど息を切らし能力の開放が終わる。リゼルの周りを漂っていたオーラの様なものが瞬時に消え失せた。そして剣に縋り付く様に膝をついた。それを目にしたセーマ達二番隊突撃兵団の十二人は、先ほどまでの凄惨な戦闘に動くことすら出来ずに固まっていた身体が目覚めたかの様に二番隊隊長シャルム リゼルに走り寄った。
............to be continued
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