第4話一人笑う

化粧室の鏡を見ながら、背の高い美人は一人であははっと何度も笑っていた。

端正で秀麗な顔立ちだけに、大口を開け、高笑いする姿は不気味であった。

ふうっーと大きく息を吐き、トートバッグからポーチを取り出し、素早く、慣れた手つきでメイクをなおしていく。


「うまくいった。うまくいった。うまくいった。うまくいった。うまくいった。うまくいった……」

かすれた低い声で何度も何度もぶつぶつと瑞樹は呟く。


へへへっへへへっと笑い声をもらしなが、スマホの電源を入れた。

その画面にはアキラの連絡先がでている。鈴木彰という名前と彼の携帯番号。次にラインを開きアキラのアイコンを眺める。「無名な彼女は魔王の娘⁉️」フレイのアニメ画像が彼のアイコンだった。


「彰くん、彰くん、彰くん、彰くん、彰くん……」


壊れたラジカセのように瑞樹はスマホの画面に語りかけ、そして、その画面を真っ赤な舌で舐めた。

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