第二章 七夕祭り

ミオと二人で神社を目指して歩いていた。

神社まではそれなりに距離がある。

珍しくミオが黙ったままなので俺は話しかけた。

「そういや今日はどうした?ミオにしては珍しく準備に時間かかってたみたいだけど?」

「あ、いや、その…」

ミオは少しうつむく。

「どうした?」

「いや、その…実は…ぎりぎりまで寝てた…」

「ん?珍しいな?ミオのことだから遅いって怒られるかと思ってたのに」

しっかり者のミオにしては珍しい。

いつもなら待ち合わせ時間ギリギリになっても怒るのに、そんなミオがぎりぎりまで寝てるなんて。

「実は…今日が楽しみで寝れなくって…ギリギリになって寝ちゃってたみたいで…」

「あーそういうことか。てか、楽しみで眠れないって子供かよ(笑)」

「うっ…ち、ちがうもん!もうおとなうーるふ…なんだから…」

「大人、ねぇ?」

かくいう俺も実は眠れなかったことは言わないでおこう。

「そ、それはともかく!もうすぐ神社だよ!」

ミオはごまかすように言った。


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神社は大勢の人でにぎわっていた。

沢山のカップルや子連れの親子などなど、毎年たくさんの人であふれかえっている。

「うわー!たっくさんいるねぇ!」

「そうだな~迷子になるなよ??」

「迷子になるわけないじゃん!むしろそっちが…」

「みおちゅわ~ん!!!」

突然ミオの言葉をさえぎって後ろから女の子の声が聞こえた。

「げ、この声は…こ…うわっ」

「みおちゅわ~んだ~!!!やっほ~!!!」

「こら、ころね!やめて!」

「ミオちゃんもお祭り来てたんだね~!おや?そちらの男性は?まさか…彼氏?」

「か、彼氏じゃない!何言ってっ」

「隠さなくていいよぉ!誰にも言わないからさ!」

「邪魔しちゃ悪いし、家族も待たせてるからころねは行くね~楽しんでねぇ~!」

そう言うと彼女は去っていった。

「はぁ…初端から大変な目にあった…」

「今のは?」

「後輩の戌神ころねっていうの。めちゃめちゃウチになついててさぁ…」

どうやらミオと同じくVtuber活動をしている子らしい。

「ま、いいや。さ、行こ!」

ミオに腕をつかまれて人ごみの中へと入っていった。

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