第10話裏工作・其の3

 結局マグナムの言うことに従うことにしたが……そういえば今日は日曜日だったな。あしたからこの子たちのゲームをやることになるのか。やけに都合がいいな。


「本当ですか、おじさん。よかった、じゃあ、あたし、今日はこのくらいにして失礼しますね」

「そう言っていただけると信じていましたわ、おじさま。それではわたくしはこれでおいとまさせていただきますね」

「ありがとう、おやじさん。わたしたちのゲーム、絶対面白いからね。それじゃあまたあしたね」

「僕、ゲームの世界に召喚されてもがんばるからね、おじちゃん。僕たちがいないからって、夜ふかしとかしちゃあだめだよ」

「わるいなあ、おっちゃん。なにからなにまで無理言うてしもうて。あしたまたくるから、からだに気いつけるんやで」


 そんな別れのあいさつを言いながら五人の女の子は俺の部屋から出ていった。部屋には俺が一人取り残された……そういやおまんじゅうの箱が残されている。お近づきのしるしということだったが、ほとんどあの子たちが食べていったな。そう思いつつ、なんの気なしに空き箱を手に取ると、封筒がするりと落ちた。箱の底を見るとテープで軽くくっつけてあったようだ。


 変だな。底に封筒が貼りつけてあるだけなんて、隠し方としてはうまいやり方とは言えない。マグナムがこんな仕掛けをするとも、ほかの四人が気づかないとも思えないのだが……


 みょうに思いつつ封筒の中身を確かめると、一万円札が一、二、三、四、五枚。それに手紙も五枚入っていた。それぞれの手紙の内容はこうだ。




 おじさん。突然押しかけちゃってすいません。カクゲーです。理由はとにかく、あたしたちはおじさんにあたしたちのゲームをやってもらわなくてはならないんです。それには、おじさんがお金に困るような状況では困るんです。で、いきなりおじさんの部屋に押しかけて『金は払うからゲームをやれ』なんて言うのはどうかと思ったから、みんなと話し合ってこう言う形で手紙を読んでもらおうということになりました。ゲームのディスクは置いていきますし、一人でもプレイできるようになっていますから、良かったらおじさんもやってみてくださいね。


 おじさま、前もってアポイントメントも取らずに部屋に訪れてしまったことをおわびします。わたくしはヨコスクです。わたくしの都合により、おじさまにわたくしたちのゲームをしていただなくてはいけないのです。そのため、失礼とは思いましたが、生活費として現金を同封させていただきました。このようにしたほうがおじさまにお金を受け取ってもらえるのではないかとみんなで話し合ったからです。ゲームのディスクはおじさまの部屋に置いておきます。ベルトスクロールアクションは、一人プレイでも二人プレイでも操作性は同じようなものですので、まずはためしにやってみてください。


 おやじさん、いきなりやってきちゃってごめんなさい。シューターだけど……わたしたち、どうしてもおやじさんにわたしたちが召喚されるゲームをやってもらいたいんだ。それで、必要経費と言うか、お礼的なものがいるかと思って、いっしょにいれておいたのがそのお礼的なものです。おやじさんが安心してゲームに専念できるようにするためだから気にしないでね。わたしのゲームのディスクはおやじさんの部屋に置いておくから、プレイしてみてね。別に毎回わたしたちがゲーム世界に召喚されるわけじゃないから、安心してプレイしていいよ。


 おじちゃん。約束しないでおじちゃんの部屋に入りこんじゃってごめんね。僕はスポコンだよ。僕たち五人のゲームをおじちゃんにしてもらわないとだめで、それにはお金がおじちゃんにいるらしいから、みんながするように僕も一万円封筒にいれておいたよ。だから、僕のテニスゲームやってね、おじちゃん。僕のゲームディスクはおじちゃんの部屋にそのまま置いておいてあるから。一回やってみてよ。シングルスでもダブルスでもできるようになってるから、やってみておいてね。


 おっちゃん、マグナムや。もちろん本名やないけど堪忍してな。おっちゃんにとって、うちらはゲーム世界のキャラクターと思っとってもらったほうが都合がいいんや。うちらもゲームの世界観にひたりたいしな。封筒のゼニも初回ログインボーナスくらいにおっちゃんは思っとってや。ゲームディスクはおっちゃんの部屋に置いてくけど、うちのガンシューティングゲームだけやのうて、五人全員のゲームを少しくらいはやっといてな。そのためのゼニやさかい。それじゃあまたあしたな




 と言った五人の手紙を俺は読み終わった。五人ともさんざん俺の部屋でさわいでたのに比べると、手紙ではしおらしい。手紙の内容によると、俺の部屋でのあのあかましさは五人で考えた演技のようだが……たしかに、俺はゲーム世界に召喚されずにこの現実世界でゲームをするんだから、食費やら家賃やらが必要になるけども。


 そんなことを考えながら、俺は五人が手紙に書いたように、五人が俺の部屋に置いていったゲームを一通りやってみることにした。

 

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今日はどの異世界にしようかな @rakugohanakosan

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