第5話プレゼン(シューティング)

「だって、ヨコスクが天の声うんぬんとかわたしたちが考えに考えたゲーム世界とか全部説明しちゃったじゃん。もうわたしたちが召喚されるゲームがどんなものかを個別に説明するくらいしかできないよ。なんというか、全体像をヨコスクがほとんど説明したんだから、自分の召喚されるゲーム世界まで説明しちゃうのはずるいような気がするよ」


 シューターの言いぶんに、ヨコスクをのぞいた残りの三人も同意しだす。


「そうよ、全体像の説明だけで十分長かったわ。それに加えて自分のベルトスクロールアクションについてまで説明するなんて、あたしの話を中断しておいてそれはないんじゃないの。そうよね、おじさん」

「早く僕にまわしてよ。おじちゃんも僕の考えたスポーツゲームがどんなものか知りたいでしょ」

「あんまよくばりすぎんなや、ヨコスク。そんなもんで我慢しとき。それ以上やったらおっちゃんが退屈で寝てしまうで」


 シューターだけでなく、カクゲー、スポコン、マグナムの三人にまで『早く中断しろ』と求められて、ヨコスクが泣きそうな顔で俺を見てくる。


「その、ヨコスクのプレゼンで、レトロゲーム同好会がどれだけ自分たちが召喚されることになったゲーム世界を作り込んでいたかよくわかったよ。そのゲーム世界がすごくおもしろそうだってことも。だから、ヨコスクもそのへんにしてくれないかな。ヨコスクが召喚されるって言う『タッグナイト』はぜったいにプレイするから」

「本当ですのね、おじさま。わたくし以外の四人の世界は楽しんで、わたくしの『タッグナイト』だけは仲間はずれなんていやですわよ」

「わかってる。わかってるから」


 俺に言い聞かせられて、ヨコスクは落ち着いたようだ。それを見てシューターは自分のディスクをヨコスクのディスクと入れ替え、初代プレステの電源を入れた。起動音をバックミュージックにして、シューターがプレゼンし始める。


「わたしはデモプレイだとかまどろっこしいことはしないよ。最初からわたしがプレイするところをおやじさんに見せるからね。ゲームのアピールなんて、実際にプレイしているところを見せるのが一番さ」


 そう言いながらシューターは、タイトル画面が表示されると同時にプレイをしはじめた。これじゃあなんというタイトルかもわからないな。俺のそんな気持ちを見透かしたようにシューターがなにやら言ってきた。


「おっと、あせってタイトル画面をおやじさんに見せられなかったね。わたしが召喚されるゲームのタイトルは『ドッペルアタック』だけど、大切なのは中身だからね」


 そう言いながらシューターは自分が召喚されると言うゲームをプレイし出した。縦スクロールの、どこにでもあるようなシューティングゲームだ。まあ、シューティングゲームなんて縦スクロール、横スクロール、スリーディーぐらいしかパターンがないけど。で、シューターが操作しているらしい自機も普通の戦闘機だが、一つしかないな。


 シューターは『わたしといっしょにプレイしてくれ』なんて言ってたけど、これでどうやって協力プレイをするんだろう。俺の感じた疑問を他の四人も感じたようで、次から次へとちゃちゃを入れ出した。


「あたしにはどう見ても一人でシューティングゲームをやっているようにしか見えませんが。それでどうやっておじさんにいっしょにプレイさせる気にさせるのよ」

「シューターさん、『ドッペル』と言うのはドイツ語で『分身』と言う意味ですのよ。その分身がどこにいるのかわたくしとおじさまに教えてくださらない。それとも、なんとなくかっこうがいいから『ドッペル』などとつけただけで、深い意味はないのかしら」

「おじちゃん。つぎ、つぎだからね。つぎの僕のスポーツゲーム楽しみにしててね」

「やっぱりうちがトリかいな。まあええわ。真打ちは最後に登場するもんやさかいな」


 ああだこうだ言うカクゲー、ヨコスク、スポコン、マグナムたち四人に対して、シューターが返事をする。


「うるさいなあ、これはおやじさんとの本番じゃなくて、プレゼン用の見せプレイなんだからわたし一人だけでやっててもなんの問題もないんだ。シューティングゲームは、一人プレイだろうが二人プレイだろうがゲーム画面はそんなに変わらないからな。ほら、右っかわの上のほうに“push start”って表示されているだろう。おやじさんが2Pがわのコントローラーのスターとボタンを押したら、今すぐにでもおやじさんの戦闘機が画面に出現して協力プレイできるんだ」


 シューターが言うように、ゲーム画面の右上に“push start”と言うメッセージがある。アーケードの二人プレイができるシューティングゲームだと、“insert coin”だな。


「カクゲーさんの格闘ゲームと違って、シューティングゲームなら初代プレステでも十分に二人同時に自機を動かせるからな。ヨコスクさんのベルトスクロールアクションゲームなら二人同時の協力プレイが楽しめるだろうけど、いかんせんおやじさんにゲーム画面を披露できなかったからね」


 そうシューターに言われて、ヨコスクが悔しそうにしている。そういや、ベルトスクロールアクションも二人協力プレイができるのがあったな。なんだか悪い気がしていた。何かヨコスクに声をかけようと思っていたら、スポコンが割って入ってきた。

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