姉と弟 (?月)

食堂に入ると、食べ物が並んだテーブルがたくさんあり、奥の方に椅子が4つほど置かれているのが確認できた。

入口にはメニュー表が書かれた小さなホワイトボードが壁に立てかけてあった。

私は近くのバイキング用のお皿を手に取り、料理を見て回ることにした。

『おおー!いろんな料理があるよ、四季ちゃん!』

「そうだねー。でも、私は日本食でいいかな…」

『そう?ほらこのミネストローネとか、香りもいいし、具材もおいしそうだよ!』

(さっき、毒がどうこう言ってなかったっけ…)

目を輝かせるレンタンに疑心を抱きながら、バイキングを回ってロナン君に話しかけた。




「ねぇ、いつもこんな感じでジーンさんと2人きりだったの?」

「ん…、そうだね。まぁ、こんな所めったに人来ないし。来るのは僕におせっかいを焼く幽霊ばかりさ」

『それってジーンさんが含まれてるっていう解釈でおっけ?』

『………(そうだと思います)』

首を縦に振るジーンさんを横目に、さらに質問してみる。

「この料理…いったい誰が作ったの?」

「これ?ここにいる幽霊…あ、今は見えないか。夜になると見えると思うけどメイドや執事のゴーストが作ってるんだ」

「そっか。ロナン君は一人ってわけじゃないんだね」

「…。僕が一人に見える?」

「え?」

「まあ、座って話そう。食べ物、落としてしまうと困るから」

そうして、奥のテーブル席へ座った。

「で…僕が一人だって話か。そうだね…でも、ジーンがいるからね、四季姉」

今更ながら、ロナン君の呼び方に驚いてしまった。

「ちょ、ちょっとまって、姉!?私、ロナン君のお姉ちゃんじゃないよ!?」

「え、話してなかったっけ?エンチャント協会に入ると子供は自動的に兄弟になるって…」

「知らないよ!?」

『聞いてないよぉ!?』

彼はやれやれとでも言いたげな表情で私に顔を向け、

「このエンチャント協会っていうのはいろんな支部があって成り立っているんだけど、いくつか決まりごとがあるんだ。その中の一つが子供が元からいた場合、新しく入った子供と兄弟または姉妹となることっていうのが掟なんだ」

『ほうほう…で、寂しくて四季ちゃんをさらった…と』

「違う。慶王四季をさらうことは上からの命令なんだ…」

一瞬ロナン君の目が沈んだように見えた。寂しいのは…本当なんじゃないのかな…。




「…冷めるよ。食べれば?」

『もぐもぐもぐもぐ…あれ、四季ちゃん、食べてなかったの!?』

「何でお前はさも当然のように食ってるんだよ…」

『いーじゃないのさー!別に食べててもー!』

(落ち着いて、食べたいなぁ…)




『っていうかさー、そもそもなんで四季ちゃんをさらったの?上からの命令とか、知らないけど』

「僕にもわからない…。上の方はとにかく命令が大胆でね。こき使うくせに内容が分からないということが結構あるんだ」

「怖く…なかったの?」

「別に。協会の意思は自分の意思、だから…」

目を伏せるロナン君。やっぱり怖かったのかな…。そうだ!

「ねぇ、食べ終わったらゲームでもしない?トランプとかウノとかあるでしょ?」

「え…」

不意を突かれたように彼が目を見開く。

『いいねー!みんなでしようよ!』

『………(僕も!?)』

「ダメ…かな?」

「いや、全然いいけど…」

「じゃあ、決定ね!」

半ば強引に遊ぶ約束をすると、私とレンタンはご飯を食べきってから食堂を後にし、待ち合わせの部屋へ向かった。

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