金髪の少年(7月)

保健室まで俺は走る。

行列だ、先生だ。邪魔だ!そこをどけ!


ふっと、さっきの薄気味悪い執事達を引き連れた、金髪の俺より年下のような風貌の少年が、笑って立ちふさがった。


「いい加減諦めろよ、憂鬱メランコリー少年ボーイ。そこで黙ってみてろっ!」


そう言われた瞬間、相手から素早い蹴りが繰り出された!


「っ!あぶねっ…!」


間一髪でよける。

相手が蹴る瞬間、一瞬黒い陽炎のようなものが見えた。

…気のせいだろうか?


『アイツ…只者ただものじゃないぞ!気をつけろ、一撃が重めだ!』


「っく…、どいてくれねーと困るんだよ!」

「どくわけないじゃん!もうあの子は…俺の姉ちゃんなんだから、さっ!」


俺のパンチとキックをすべて避けてから、的確に腹にひじ打ちを放ってきた!


「がああああっ!?」

「【悲報】メランコリー・ボーイ、終了のお知らせ~!なぁ?春樹健治?」


何とそいつは俺のフルネームを出してきた。そのことには別にあまり違和感を持たなかったが問題はその前の発言だ。


「はぁ…、はぁ…誰が、お前の姉だって?」

「あれ?知らないの?ウケる…うわっ」

俺は思い切り少年の胸ぐらをつかみ、

「まさか、四季のことなのか?言え!!!」

「仕方ないなぁ…、慶王四季は俺たちの協会…エンチャント協会に迎えられ、僕の姉となるのさ!」


「…は?」


「何を言ってるんだ?って顔をしてるね。いいね~、その顔!慶王四季は、いや四季姉は俺の新しい家族へと…ひっ」

「四季姉?…四季を姉なんて呼ぶなっ!!!」


おもいっきり顔面にグーパンチをお見舞いしようとした、瞬間。

振り上げたこぶしが誰かに止められた。


「ケイン、そこまでにしてください。あとは、私に任せて」

灰理だった。後ろの方にはみっちゃんとレオっちもいる。


「でもっ…」

「ここで危害を加えたら相手と同じになります。穏便にことを済ませましょう。ロナン=カズマさん」

どこで調べたのか相手の名前を言う灰理。

「ふーん。そっちの人、わかってるじゃん。まあ、四季姉はもうここにはいないけどね!」

「何!?おい、四季はどこだ!」

「ケイン、落ち着いて。では、今から三つの質問をします。その質問をした後は逃げるなりなんなりお好きにどうぞ」

「なっ!?灰理、それじゃあ…」

俺が不安そうにすると灰理は

「大丈夫です。こちらにも作戦がありますから」

と、こっそり俺だけに言った。


そして少年―――ロナンに向き直ると

「まず、一つ目。あなたたちエンチャント協会の目的はなんですか?」

「ふうん、そこからか。まあ、それなら答えてあげてもいいかな。今回はこの学校に慶王四季を回収しに来た。…現段階ではそれしか言えない」

後ろでみっちゃんたちがメモを取っている。

しかしなんだ、コイツの上から目線は。


「ほう、では二つ目です。四季さんをさらってどうするのですか?」

「第一は僕の姉さんになってもらうことだけど、それ以外はわからないし、知らないよ」


「なるほど、ありがとうございます。では最後に…慶王さんの居場所はどこですか?」

「灰理…」

「ダメもとで聞くのは百も承知です。ですが、聞かずして逃げられるのは納得いきませんからね」

「へえ、そんなになってあの悪魔の宿り主…姉ちゃんを取り戻したいんだ?まあ、無理だと思うけどね!」

そういうロナンの肩にそっと手を置き、灰理はこう言った。

「無理だと思うのは勝手ですが、私たちは決して諦めません。わずかな可能性に賭けて…ね」

「そうだそうだー!」

「次、会ったら俺たちがシメる。な?ケイン」

「みっちゃん…レオっち…」


「ふん、心強い仲間がいて、いい気になってるとこ悪いけど、僕はこの辺で」

ロナンはそういうとボン!と煙幕を出し、消えた。何だよあれ。忍者かよ…。


「さて、私たちも帰りましょう」

「逃げられたけど、どうするんだよ?」

「大丈夫!灰理さん、さっき肩ポン!てした時にGPSつけたから!」

「!?」

「ちゃっかりしてるなあー」

なんて言いながら帰路についた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る