百鬼夜行のような大名行列(7月)

ばん!と保健室の扉を閉める。


出た先はなんと、俺の従兄いとこの灰理がいた。

「あっ…、灰理…」

知り合いの顔を見たらぶわっと涙が出てきた。

「ケイン…。まあ、まずはお疲れ様です」

「うっ…、ぐすっ……、灰理ぃぃぃ!」

俺は灰理の胸に泣き崩れた。


「よしよし。…ちょっと、スマホ借りますよ。おーい、イノ!」

『へーい…、あれ?灰理か?ケインのスマホじゃなかったか?まぁ、さっきの怪現象、録音録画はバッチリだが…』




ケインに代わって私が説明しましょう。

この、ケインのスマホに入っている機能は私が開発したAI《えーあい》である、「イノ」。

本人いわく紫の魔女だそうですが、真偽の程はわかりません。

『よし、動画送ったぜ。あとはよろしくな!メル!」


そして私はポケットから自分のスマホを取り出し―――、もう一つのAIを起動しました。


…え?AIが2つあると聞いていない?


紹介しましょう。


こちらは―――

『了解!さあ、見てください、マスター!』


元気いっぱいでしょう?

この子は「秋風あきかぜ メル」。

私の方のスマホのAIとして稼働しています。


イノはまだ試験段階ですが、いずれは………おっと、話を戻しましょう。ケインの事情ですね。まずは動画を見てみましょう。

「…む?」


動画内でカーテンレールに座る影…レンタンと名乗る悪魔ですか…。


これは厄介そうですね…。いちオカルト研究部の私でも見たことがないのですから…。



「おーい、ケインー!先生に伝えてきたって……え!?灰理さん!?しかもケイン泣いてるし!」

「ええっ!?ケイン泣いてるの!?あっ、灰理さん、こんにちはぁ!」

「こんにちは。えーと、大野君に井上君でしたよね。まずはこれを見てください」


そう言って、駆けつけたケインの友達にさっきの動画を見せる。

「はあ!?レンタン?悪魔だって!?」

「信じられない…。こんなことって起こるの?」


「事実のようですね…。現にこうしてケインも泣いてることですし」

「うう…、お前ら、俺のこと馬鹿にしてるだろ…」

「「「してない、してない!」」」



『はぁ…、あんまりケインをいじめてやるなよ…』

「うお!?なんだこれスゲー!ロボット!?」

『失礼な!俺は紫の魔女だぞ!』

「これ、ケインのスマホからですか?ちょっと見てみてもいいです?」

「ええ、構いませんよ。…おや」


私たちがわちゃわちゃしていると、まるで大名行列のように先生や、学校の偉い人らしき人、そして…

「あれは…?」

たくさんのメイドや、執事などを引き連れた、ケインより幼い金髪の少年が教師たちに守られながら歩いてきた。しかし、そのメイドたちの顔には血の気がない。


いやな予感がする。


私は直感でそう感じ、

「ケイン、もしかしたら、慶王さんは…」

と、そっと耳打ちしました。


何が起こるか、はわかりませんが私の勘は結構当たるものです。


「四季…」

「えっ、もう名前呼び!?すごいなあ…」

「バカ、こういう時は黙ってるんだよ!」

ぽか!と漫画のように叩かれる井上君。

さっきの大名行列がもう保健室のそばまで迫っています。


すると、ケインのスマホからイノが

『ケイン、今いかないときっと後悔する!俺の直感が告げてるんだ!』

と言いつつ、私にアイコンタクトをしました。

「でも、さっきの…」

イノに続けてくださいと私の方から合図を送ると

『さっきの悪魔がなんだ!?っていうがあれば、あとは動けるだろ!?』

と、熱いセリフを言ってくれました。




「…そうか、そう、だよな。よっし!」

イノに励まされ、すっくと立ち上がるケインに私は優しく一言。

「がんばってください、ケイン」

「わかってる!ちょっと行ってくるわ!みっちゃん、スマホパス!」

「えっ、あっ、はい!」

元気に自分のスマートフォンを受け取り、大行列ができた保健室へと勢いよく突っ込んでいきました。



…ふふ、私の説明は以上ですかね。ケイン、健闘を祈りますよ。

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