別れ 11

二人は女子寮の前にいた。


彼女は、僕の顔を見つめて言った。


「キスしてもいいわよ」


僕は一瞬どうしようかと迷い、ほとんど彼女を抱き寄せようとしたが、思いとどまった。


彼女は心からそう言っているということは、目の色でわかった。


「やめとくよ」


彼女は、一瞬僕を見つめた。


「口紅が取れてしまうよ」


彼女は、さよならと言うと、小走りに門の中へ消えて行った。


僕は、彼女の瞳にキラリと光るものを見逃さなかった。

終わり。

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別れ ミッソー @mittsoo

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