逢魔が時。

月城 紅

第1話 逢魔が時。


 逢魔が時


 貴方の隣の人は、本当の人?



 ある所に、双子の女の子が居ました。

 姉は平凡、妹は美人・・・似ても似つかぬ二人。

 周りの人々は笑いながら言います。


「きっとお腹の中で、良いところを妹に取られたのでは?」と。



 二人は両親の愛を受けて・・・いえ、両親の愛が平等とは言えません。

 全ての事柄において、妹が優先されるのです。


 そして姉は認められる為に、内面が美しい女性に。

 妹は何もかもを得て来た為に、外は美しく、内面が歪んだ女性に。

 それぞれが、それぞれに成長をしていきました。


 この二人、傍から見れば仲が良い姉妹に見える。

 だって妹は姉を使うのが当たり前、姉は妹の言葉を受け入れるのが当たり前。


 それがこの双子。

 だから誰も気が付かなかった。

 二人の歪さを・・・。



 ある日、娘が恋をした。

 恋をしたのは姉。

 姉は恋をしているが為か、どんどん綺麗になっていく。

 それに周りが気が付かない筈はない。

 平凡ではあるが、気立ても良く愛嬌もある姉。

 次第に人気が出る様になってくる。


 だがやはり妹はそれが許せなかった。

 姉を取られると思ったからなのか、それとも嫉妬か・・・。


 姉が恋をした相手を、自分のものにした。

 それは妹にすれば簡単な事だったのだろう。


 姉は愛しい男が妹と寄り添う姿に、落胆した。


「やっぱり美人な妹の方が、みんな好きなのね」と。


 だが・・・姉の知りたくない事がまた起こる。


 ある日、妹が姉が愛している男を連れて家へ来た。


「結婚を考えています。娘さんを下さい」


 そう、姉の目の前で男は頭を下げた。

 姉はこの時に男性を、妹を祝福しようと心に決めた。

 愛した男には幸せになって欲しい。

 例えそれが、自分ではなく妹とだったとしても。


 あの時に、妹よりも先に自分の気持ちを男に伝えなかった自分が悪いと・・・そう思って自分の気持ちに折り合いを付ける事にした。


 だが、姉は聞いてしまった。


「特にあの男を好きじゃないんだよね。結婚相手としてはそこそこは良いけど。ただ姉から奪って、姉の落胆し、嫉妬で歪む顔が見たかった。そうならなくてツマラナイ」


 あの時、目の前で頭を下げた男を見て、決意した気持ちが壊れた。


「何故?何故?!彼は妹を選んだの?!外見ばかりで、あんなにも内面が醜いのに!いったい私が何をしたと言うの!!」


 姉は嘆き、世界を、自分を産み育んだ両親を、妹を呪う。

 例えそれが自分をも呪う事だとしても。



 姉は消えた。

 何処を探しても、見付からない。

 両親は嘆くものの、妹が居るから・・・と言う。


 そしてある新月の夜、誰も知らない所で妹が姿を消した。

 心配する両親の元に妹が戻ったのは、数日後だった。

 たった数日だったが、両親の心配は姉の比では無かった。


 そして再び、男と妹の幸せな生活が始まった。


 少しずつ、ゆっくりとだが妹は変化していく。

 愛しい貴方の為に。



 あの日から姉は姿を変えた。

 そして妹の真似をする。

 両親の腹の中から一緒だった二人。

 真似るのは得意だった。

 ただ・・・邪魔なものが一つあったのだが、それも今は居ない。



 逢魔が時。

 貴方の隣を歩くのは、あの時に欲した人ですか?

 貴方が知る本当の人ですか?


 逢魔が時。

 隣を歩く人の顔を見るのが難しくなる時間。

 貴方の手を引く人は、本当の人?


 知ってか知らずか、幸せな時を歩めれば良いね。


 呪わば穴二つ。

 それでも、私は貴方が欲しい。

 願いを叶える為に私は修羅になろう。


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