その7

 俺とおっさんが表を開けて外に出ると、案の定そこには、 さっきの三人と、その仲間と思われる連中が、手に手に物騒な得物を持ってこちらを睨みつけていた。


『大げさなもんだねぇ。たかがチンピラ風情が嫌がらせをして、あっけなくあしらわれたからって、其の仕返しに来るとは・・・・』


『やかましい!俺達はな!たとえ相手が誰だろうと、牙を剥いてくる奴には容赦しねぇんだ!』


 先頭にいた、さっきの兄貴分らしい、黒いジャケットを着た男が吠えた辺りに その時、俺の後ろにいたおっさんが前に出ると、斜めに構えた散弾銃を一発、空に向けて発射した。


 辺りに銃声がこだまする。


『やっぱりここは俺の街だ。あんたにけて貰うわけにはいかん』


『・・・・』


 しかし、俺は構えた拳銃を下ろそうとしなかった。


『強情だな・・・・』


 どのくらいにらみ合いが続いたろう?

 

 太陽がじりじりと照り付ける。


 汗が額、頬、顎を伝って地面に落ちる。


(暑いな・・・・)


 俺は思った。


(こんなもん、早く片付けて風呂に入って一杯やりてぇ・・・・)


 腹の中で俺はそう呟いた。


 俺は拳銃を握り締めた手をゆっくりと上げようとした。


 次に発砲すれば、間違いなく銃撃戦になる・・・・


 そう思った瞬間だった。


 パトカーのサイレンが遠くから響き、T字路の真向かいから猛スピードで二台走ってくると、俺達の間に割り込んだ。


『お前ら!武器を捨てろ!パトカーから降りてきた不動明王みたいな顔つきの、がっちりした体型の男が、割れ鐘のような声で叫ぶ。


 パトカーからは四人の警官が降りてきて、俺達と、あっち側の双方に拳銃をつきつけた。


 こうなっては無駄な抵抗はそれこそ『無駄』だ。


 従う時には黙って従った方がいい。


 おっさんも黙って散弾銃を投げ出し、手を挙げる。


 ガタガタと騒ぎまくっているのは、だけだ。



 結局、俺達は後から来た別のパトカー(というより、大型のワゴン車だった)に

押し込められ、警察署に連行された。


 俺が探偵だというのは前もって分かっていたし、先に嫌がらせをしてきたのはあっち側だというのが分かったから、警察も俺達に対しては嫌な顔をして、定番の『説教』を垂れただけで済んだ。


 但しおっさんの散弾銃は押収されたらしいが。


(これは後になってから、渋々と言った体で警官おまわりが話してくれたところによると、何でもこの町は以前からここを仕切っていた『組』と、後から入って来た与太者連中が最近あちこちで揉め事を起こしていたので、警察もそれでピリピリしていたらしい)


 おっさんの食堂はその両方から度々嫌がらせを受けていて、警察にも何度か訴えたが、一向に相手をしてくれなかったという。


 まあ、警察の方としても、そういう『負い目』があったから、俺達に対してあまり居丈高な態度がとれなかったんだろう。


 

 


 


 

 

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