穴VS穴VS穴 forライトサイド

「コレは一体…………」


 確か俺はさっきまで穴澤ゴッドハデスとIAGPのベルトを賭けて戦っていたはず。

 全く良い所は無かったが、俺のスペシャルホールド「シャイニング穴ザー」が決まり一矢報いる事が出来た。

 そう思った矢先だった。


 廻りを見渡せば一面真っ白な世界。

 その世界にぽつんと真っ白なリングがあった。

 ポールも白ければロープも真っ白。

 俺には、その白いリングが神々しいまでに輝いて見えた。

 ふらふらとまるで餌に釣られる魚の様に俺はその白いリングへと向かって行く。

 何故俺がリングに向かうか、難しい事なんて分からない。

 俺は馬鹿だから。

 でも分かってる事はある。




 俺は―――――




 ―――――――穴戦士。



 だから、俺は何度でも立ち上がる。

 俺には覚悟がある。

 必ず俺が穴澤ゴッドハデスを倒し、世界穴グランプリ王者IAGPチャンピョンに成るんだ。



 そう!覚悟とは暗闇の荒野に!進むべき穴を切り開く事だ!!!!



 ○●○



 どうやら向居は立ち上がってきた様だ。

 不本意ではあるが流石の私も此処から独力で脱出する事は出来ない。

 光の穴戦士であるアナーキー向居、彼の力が必要だ。


 ギシッ――――


 ロープを跨ぎアナーキー向居がリングへと登ってくる。


「来たか」

「此処は一体…………」

「フン、そんな事も知らんのか愚か者が――――




 ―――――――――――此処は穴世界だ」

「穴世界!まさか!!」

「嗚呼、そのまさかだ」

「なんてこったい!!それじゃあ伝説の穴神が存在したのか…………」


 この穴世界から脱出するには、伝承通りだとすれば穴神、穴流カダル鷹を倒す必要がある。

 その為には―――

 

「――――最強の証明」

「俺こそが―――」「私こそが――――」

「「最強だ!!」」


 両者がリング中央で激突しその互いの巨軀がぶつかり合う。

 握り合った両の手は血管が浮き出し全くの均衡を中央で保つ。

 滴り落ちる汗。

 歯が削れる音が響く。


「ぐぬぬぬ…………」

「どうしたアナーキー向居!その程度か!!」

「くっ!まだだ!!まだまだぁぁあああ!!!!!!」


 徐々に均衡が崩れ始める。

 アナーキー向居が穴澤ゴッドハデスを押し始めたのだ。


「ふっ、やるじゃ無いか、だが!トランスフォーーーームッ!!!!」


 説明しよう。

 トランスフォームとは力比べで押された時、相手の力を利用してブリッジングを行う事である。

 穴澤ゴッドハデスはこのトランスフォーム時にその強靱な腹筋でトランポリンの様に敵を真上に弾く事が出来るのだ。

 弾かれた敵は空中で思う様に身動きが取れず格好の的となってしまうのだ。


「がっはぁ!」


 腹筋により弾かれ空高く舞い上がったアナーキー向居。


「そぅれ!がら空きだぞ」

「ヤバい!この体勢は…………48の穴殺法!!」

「喰らえ!!!アルティメット穴ライドードライバーーー!!!!」


(この技にはたった一つだけ弱点がある。その弱点にアナーキー向居が気づければ)


『アルティメット穴ザードライバー!この技は師匠のフィニッシュホールド!!!このまま落ちれば俺は穴戦士としての一生を此処で終える事になってしまう。高高度からの落下の衝撃と穴澤ゴッドハデスの右踵から繰り出されるアンマの衝撃、待っているのは廃人化という結末。天に召します我らが穴神よ、何か妙案――――は!そうか!!天地を逆転できれば!』


「どうした!!もう諦めたのか!!ならばこのまま恐怖に打ち震え続ければ良い!!!」


『俺に――――俺に、返せるのか!?師匠の技を!?いや!!出来るかどうかじゃない!やるんだ!!!!!』


「勇気とは怖さを知る事!恐怖を我が物とするこだぁぁああああ!!!うぉぉおぉおおおおおお!!!!」


(ふっ、そうだ。それでいい)


「コレが!!!!アルティメット穴ライドードライバー返しだぁぁあああああああ」


 ドガガガガガァァァアアアアン



「勝ったのか…………」


 俺の足下にはあの恐ろしい穴澤ゴッドハデスが横たわっていた。



 パチパチパチパチ。


「良い戦いだったよ」


 声の方に振り向くと、そこには真っ白な長髪に仙人の様な髭を蓄えた筋肉隆々の男が居た。


「まさか!穴神!!!穴流カダル鷹!!!!!」

「…………如何にも!穴戦士アナーキー向居、貴様にこの儂が超えられるか!!」

「真・穴流アナーキー向居………いざ参る!!」

「カモーーンッ!」

(何故英語………)

「真・穴流奥義!穴ザースカイ!!」


 説明しよう。

 穴ザースカイとは、所謂ヒップアタックである。


「こんな只のヒップアタックの何処が………まさか!よ、汚れている、だと!!!」

「そうさ!これは師匠の放ったスーパーファナティッククライシス、その余りの快感に思わず脱糞しかけた先走りの汚れ。いわばこの穴ザースカイは子弟合体技なのだぁあああああ!!!!」

「ば、馬鹿な!!くっ来るな!!!」

「フハハハ穴神恐るるに足らず!!」




 まてまてーー。

 ぴょーん。

 ぴょーん。

 ぴょーん。


 うわーーー、にげろーーー。

 ぐるぐるぐるぐる。

 ぴょーん。


 まてまてーー。

 ぐるぐるぐるぐる。

 ぴょーん、ぴょーん。




「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ………まさかこんな大技をいきなり使ってくるとは意外だったよ」

「文字数の関係だ!!!!」

「な、なんだと!!!!吃驚マークや絶叫と言った無駄な使い方しかしてない癖に、文字数制限に言及するとは言語道断!!!こうなったら儂の本気を見せてやる!!!!」


 穴神、穴流カダル鷹の身体が黄金のオーラを纏出す。

 それに伴い筋肉隆々だった穴流カダル鷹の身体が更に大きく膨らむ。

 禍々しさすら感じる身体は大きく異形の形を取っていた。


「ふしゅるるるる~~~~………120パーセントだぁぁ!!!!」

「ま、まさかこれ程とは………」


『ほ、本当に勝てるのかこんな化け物に!』


(信じるんだ、師を。そして自分自身の穴を!!!)


「そうだ!このアナーキー向居には正しいと信じる穴がある!!こんな所で負ける訳にはいかない!!!!」


「喰らえ!神穴技!!!!!!穴ザーディメンション!!!!」


 突如真っ白だった時空に黒いシミが現れた。

 シミは大きな穴を形取ると、正に俺を一息で飲み込もうとしていた。

 その時だった。


「この時を待っていたぞ穴神、穴流カダル鷹!!!!」


 穴澤ゴッドハデスの声がリングに響いたのは。


 

      Return to the dark side


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