穴VS穴 forダークサイド

「あぁぁぁぁあああおっ!コーーーナァァァアアアーーー!!!百十五パウンドォォォオオオ!!!マスクを脱いだリアル穴リストォオオオ!!





 アナーーーキーーーーィィィイ!!むかぁぁぁぁああああい!!」


「うぉおおお!!むかぁーい!負けるなよぉぉおお!!」

「今日も魅せてくれぇぇえええ!」


 青コーナーにはロープを使い入念にストレッチを行うアナーキー向居の姿があった。

 その大きな背中からは直向きさが感じられる。

 今日というこの日の為に徹底的に造り込んできた。

 そう背中が語っていた。



「対しましてはぁぁああ!あーーーぁかコーナァーーー百二十八パウンドォォォオオ!!IAGP絶対王者ぁぁあ!!鮮血の赤いあなぁあああ!!!






穴澤ゴッド―――――――ハァアアデェエエエエエッス!!!」


 悠然と花道を歩く姿は正に絶対王者。

 ベルベットの赤いマントをはためかせ穴澤ゴッドハデスは入場してきた。

 入場曲である『チャンピョン』のメロディに乗り軽快に走り出すと、一気にリングへと駆け上がる。

 穴澤ゴッドハデスの巨軀が走る。

 それだけで熱波が起きた。

 その熱波は観客達に広まると今日も始まる。


「「「「「うぉっぉおおおおおおおおおお!!!」」」」」

「ハッデッス!ハッデッス!ハッデッス!」


 観客全員が一体となり絶対王者を会場に迎えるべく割れんばかりのハデスコールが始まる。

 通例となった儀式。

 客達は右拳を天へと突き上げる。

 穴澤ゴッドハデスが絶対王者と呼ばれるもっと前の頃、ハデスがリング上で拳を突き上げ『この拳で俺は天を割る』と言った台詞に所以している。


「ご覧下さい!天をも割ろうかと言うこの従者達の突き上げた拳を!!お聞き頂けるでしょうか?大地を割りさも地獄の底からハデスを召喚するかの様なこのハデスコールを!」

「二人ともイイ身体作ってきてますよぉ~好勝負が期待できますねぇ~」

「そうですね。絶対王者の穴澤ゴッドハデスにアナーキー向居が一体何処まで食い下がれるかが見所となりそうでですね。本日のレフリーは桃田直樹、解説は本田直人と元日本穴グランプリ王者」

「原田潤一朗がお送りします」


 カァァーーンッ!


「さぁ始まりましたね、原田さん」

「ええ、やはり最初は力比べと言った所でしょうかね?」

「そう―――おおっと何やらアナーキー向居が穴澤に何か言っているみたいですね。聞いてみましょう」


『――れはアンタに憧れてこの世界に入った。そしてアンタに憧れてアンタの穴を追いかけた。だけどそれも今日で終わりだ。俺は今日、穴澤ゴッドハデス!アンタを倒し―――



 ドゴォオオッン!


 『長い!』



―――――――――ぶふぇらっぼぉおお!!!』


「おおっと!殴った!殴りました!口上の途中であるまじき行為!!」

「いや、コレは師である穴澤ゴッドハデスからの洗礼ですね」

「穴澤が師とは………一体どう言う事でしょうか原田さん?」

「向居は新穴時代穴澤の付き人をしてましてね、そこからヒールレスラーマスクド穴として活躍したんですよ。先程のナックルは残虐皇帝とも呼ばれる穴澤だからこその愛なんですよ」

「なるほど!」


 リング上では強烈な拳を喰らいピクピクとひくついているアナーキー向居の両脚を穴澤ゴッドハデスが持った所だった。


「おっとコレは四の字固めの体勢か!!!!」

「向居危ないですね!さっきのナックルで意識が飛びかけてますね」


 穴澤ゴッドハデスがアナーキー向居の両脚の間に自身の右足を差し込む。


「イヤ、コレは―――四の字では無い!!!




 コレはぁぁあああ!!!!!!



 穴澤ゴッドハデス、48の穴殺法が一つ!!!





 ファナティッククライシスだぁああああ!!!!!」

「いやぁ~コレは強烈ですねぇ。男としては直視出来ないね」

「ゴリゴリと穴澤ゴッドハデスの右踵がアナーキー向居の股間をえぐる!えぐる!さらにぃいい!!えぐるえぐる!!コレは溜らない」

「玉だけにねぇ~」

「なるほど!」


 リング上では電気アンマからようやく逃げ出したアナーキー向居が股間を押さえ立ち上がった所だった。


『来い!そして貴様の技を私に見せてみろ向居!!』

「おおっとコレは穴澤ゴッドハデスが受けてやると言っているみたいですね~原田さん」

「ええ、師故弟子の成長が気になる所なんでしょう」

「動きますよ、試合が」


『アンタの元を離れた後、俺は新穴流を学んだ。そして独自の研鑽を経て生み出したのがこの真・穴りゅぅ――――



 ドゴォオオッン!!!!



 『長い!』



―――――――――ぶふぇらっちっお!!!』


「殴った!また殴ったぁああああ!!」

「コレが子弟あ「なるほど!」―――」

「正に独壇場!正に鮮血の赤い穴!残虐皇帝の名は伊達ではない!!どうですか原田さん?」

「さっき向居が真・穴流と言おうとしたんですが、途中で穴澤が殴るもんだから、真・穴るって聞こ「なるほど!!」―――」



 マットに沈むアナーキー向居。

 力なく横たわる姿。

 絶対王者との隔絶された実力差に誰もが息を呑んだ。

 そっと穴澤ゴッドハデスがアナーキー向居の両脚を掴んだ。


「おおっと、動きがありましたよ。コレはぁ?まさかぁ?」

「何という事だ」


 穴澤ゴッドハデスの右踵がアナーキー向居の股間に添えられる。

 右踵は添えるだけ――――。



「コレはぁああああ!!!スーパーファナティッククライシスだぁああああ!!!!高速でチャンピョンの右足が振動している。コレは凄い!コレはヤバい!アナーキー向居はこのままアヘ顔晒してしまうのかぁああああ?」





『俺はこんな所で負けてしまうのか……?それで良いのか?』


(良いじゃ無いか、相手は絶対王者穴澤ゴッドハデスだぜ)


『確かに…………もう良いか』


(良いわけ無いだろう!!あの修行の日々を思い出せ!!デンマに耐え抜く地獄の日々を!!!!!!)


『そうだ!俺は負けない!まだヤレる!!うぉっぉお!!!』


「おおっと!息を吹き返したアナーキー向居!!!突然アナーキー向居がローリング!一気に体勢が逆転!!コレはぁ?まさかのぉおお?」

「ええ、アナーキー向居の必殺技ですね」

「シャイニング穴ザーだぁぁぁあああああ!!!」


 マットの上ではアナーキー向居が穴澤ゴッドハデスの両足首を極めながら両脚を股間にあてがった。

 その時だった。

 漆黒の穴がマット上に現れたのは。

 深淵の淵を想わせるその暗闇に二人の穴戦士は飲み込まれていった。



 


                Light side to baton touch

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