遺書
これを君が見ていると言う事はきっと僕はもうこの世に居ないのだろう。どうだっただろう?僕との生活。楽しんで貰えただろうか?
僕は楽しかったよ。子宝にも恵まれ、こんな僕にも宝物と言える家族が出来た。それもこれも君が居たから。
有り難う。
本当に感謝してる。
あんまり言った事無かったから此処で書くけどさ、君は僕に対して辛く当ったり、優しく出来ないと悩んでた時あったりしたよね?でも僕はそれも受入れているから悩まなくて良かったんだよ。君は君のままで居てくれて。
君が僕に辛く当ってる時、君は僕に甘えてくれていたんだ。
気付いてたかな?自分の事はあんまり分からないから気付いて無いのかな?知ってる?君は僕以外には強く当たれないんだよ?だから当られるのも僕だけの特権なんだ。
僕はね、君が僕に愚痴を言うじゃない?それを聞くとさ、何くそってその愚痴をバネに頑張って来たんだ。だから君が僕に文句を言うのも僕にとってはガソリンみたいな物で、それが無いと頑張れないからあって良かったんだよ。
だから―――――
―――――文句を言ってくれて有り難う。
君が居たから僕は頑張れた。
頑張れたから幸せになれた。
君が居たから優しさを知った。
優しさを知ったから僕は愛を覚えたんだ。
君の細い目も、薄い唇も、楽しそうに笑う声も、怒った時の無視する癖も全てが大好きだった。僕より大酒飲みで酔っ払うとホント鬱陶しいぐらいネガティブになるけど、そこも結構好きだった。いつも口うるさいけど君がちゃんと愛してくれてるのは知っている。最初の頃は密かに離婚届書いて持ってたのも僕は知ってたよ。内心びくびくしてたけど。
結婚当初は頼りなかったからね。ごめんね苦労ばっかり掛けてしまって。贅沢もさせてあげれなかったね。僕の中では、もう少し良い感じになる予定だったんだけど。理想と現実のギャップは計り知れないね。
僕は………少しは僕は君を幸せにしてあげる事が出来ただろうか?生まれ変わってももう一度僕と結婚したいとか言われるほどイイ男じゃないのは分かってるから、そこまでの言葉は望んでないけど、ただ僕とこの長い道のり過ごして来てくれて君がある程度幸せだったと思ってくれたら嬉しい。
あと、最期だから言うけど世間一般で言うと君は、自分で言う程いい女じゃ無いよ。けど、それでも僕にとってはそれこそ大事なパートナーで、君と居たから今の僕が出来たんだ。それは何よりも凄い事。君の尖った部分と僕のへっこんだ部分、僕の出っぱりと君のへっこみ、それがぴったり形があって今の僕に、今の君になってるんだよ。
君が居たから僕が頑張れたように、僕が居たから君も輝いた。
やっとそう言う関係になれたのに。
なれたのに―――
だけど、僕は先に逝かないといけないらしい。
僕はどうやらステージ4、もう助からないらしい。手遅れなんだって。手の施しようが無いんだって。
神様も意地悪だね。やっと君を幸せにしてあげれる。
やっと苦労掛けた分報いる事が出来る、出来ると言うのに。
これからだって言うのに。
これからだって言うのに。
これからだって…………。
死にたくない。死にたくない。死にたくないよ。
もっと一緒に居たい。もっと生きたい。もっと君の笑顔を見たい。もっと君と言葉を交したい。もっと君を喜ばしてあげたい。もっと君に愛してると伝えたい。もっと素直に生きれば良かった。もっと君を愛せば良かった。もっと生きたいよぉ…………。
ごめんね。
まだ息子も小さいのに。
僕が先に逝ってしまうから、また苦労、掛けちゃうね。
70歳とかになってさ、ゆっくり老後色々旅行とか連れて行ってあげるつもりだったんだけど、それも叶わなくなっちゃったね。
本当にごめん。
その代り、今度、今世幸せに出来なかった分次、来世で上乗せするから、だから次、来世でもう一度結婚してくれないかな?出来なかった事全部出来るように頑張るから。嫌だって言っても絶対探し出してその分幸せにするから。
だから―――――
―――――もう一回僕と結婚して下さい。
ごめんね。ほんとごめん。愛してる。大好きだよ。
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