第十一章 Out of the  shadow

「やっぱり、小鳥遊たかなしさんって貴方だったのね?」と亜紀が言った。

「なんだ? 気付いていたのか? いや、まだそう決まった訳じゃ無いよね? 俺が此処に来た理由わけは『小鳥遊たかなしさん来ないよ』って伝言を伝えに来ただけなのかも知れないし、そもそも小鳥遊たかなしなんて人は知ったこっちゃ無いけどアンタみたいなビッチを犯りたいから来たのかも知んないしね」彼はへらへらと笑った。

「そんな屁理屈聞きたくないわ」亜紀は身の危険を感じて後ずさった。

「おっと、ごめんな。犯るなんて冗談さ。この俺が一時の欲情のためにそんな危険は犯さないさ。したとしても、いずれは足着くだけだもんね。マジで話すと、あんた達、俺の周りをいろいろ嗅ぎまわっているみたいだから、何故なのか問いただすつもりだったんだけど」彼は肩をすぼめた。

「まぁ、面倒臭いからね、ここで俺の慰み者になってくれよ」彼は指を口に持っていき、そのまま、けたたましい音で指笛をならした。指笛が鳴り終わると同時に草むらに潜んでいた、おびただしい数の黒い影が飛び出してきた。カラスだ。

 亜紀は「紫雨!」と叫び、一瞬で袴姿になると同時に紫雨を掴み、目に留まらぬスピードで回転させる。カラスは流石に高速に回転する紫雨には歯が立たず、次々とはじき飛ばされた。

「ウッハッハハ、あんたまじ凄えわ! なんか能力者とかなの?」と綾人はゲラゲラ笑ったが、その顔には、この非現実的な彼女の立ち居振る舞いに愕いた様子を見せなかった。むしろ、ごく当たり前に受け入れている。まるで、中高生がケンカで木刀を振り回すかのように。

「でもよう、いつまでそのおもちゃ、クルクル回してんの? こっちはここら辺のカラス総動員してんだよ。数百羽のカラスを避け『よけ』きれる?」さっきまでのへらへらした態度はなりを潜め、いつの間にか険しい表情に変わっていた。まさかこんなにも、たくさんのカラスを自在に操れるような能力も持っているとは…。これでは、この程度技ではこけおどしにもならない。それに彼の言うとおり、こんな事、あと十分も続けられない。とりあえず少し攻撃が落ち着けば…。せめて詠唱出来る時間さえ有れば音響攻撃で鳥共を一網打尽にしてしまえるのだけれど…。だけどさすがに一人でそれを実行するのに、今は厳しい。美紀が来るまで何とか持たせないと。

「あんたが悪いんだよ、俺の周りを嗅ぎ回っていやがるから。それにしても何時の間にそんなコスプレしちゃってるの? あんた正義の味方なの?」綾人が続ける「でも、意外な大物釣っちゃったみたいだね。あんたみたいなかわいい子がぐちゃぐちゃになった死体でオナニーしたらどんだけ気持ちいいか思ってさ、最近やるのはおっさんばかりで飽きちゃっていたんだけどね」彼は一瞬恍惚とした表情を見せた。実際に彼女がそういう状態になって絶命している所でも想像しているのだろうか?

「うわ、アンタかなりの重度なサイコ野郎ね」と亜紀はつぶやく。だが、彼はそんな罵倒にめげるような人間では無かった。

「まー、何とでも言って下さい。でも今はそんな余裕無いんじゃないか? もう息切れしてきてるじゃん」

 日の入り時刻が近づき周りはもう暗くなってきた。夜になればカラスの目も効かなくなって攻撃も弱まるはず、その時がチャンス、と亜紀は考えた。既に周りはカラスの死骸の山になっている。その時プゥーとけたたましいサイレンの音が聴こえ、赤色灯が見えた。数台のパトカーだ。

「おい、君たち何やってる?」パトカーのスピーカーから発せられた警官の声が大音量であたりに響き渡る。

「くそ、やばいな」と綾人は再び口笛を吹き、カラスを散らせた。警官二人パトカーから降り立ち亜紀たちの方へやってくる。

「うわ、なんなんだこのカラスの群れは!」警官の一人が鳥を追い払うように手にした書類をパタパタと振った。

「暴走族同士の喧嘩と通報を受けてきたのだけど、なんか違うみたいだな」ともう一人の警官はつぶやく。やがて異様なまでの数のカラスの死骸がちらばってる様をみて「何なんだこれは? 君たち何をしてたんだ⁉︎」と綾人に尋ねた。

「いや、何でもないっすよ。この子がカラスに襲われていたから、助けに来たんですよ」と彼はうそぶいた。

「おい、君大丈夫か?」警官は彼が指さした亜紀の酷い有様に驚いて近よった。彼女はさっきまでカラスの攻撃に晒されていたので、疲労でぐったりとし着衣も乱れていた。

「おまわりさん、そいつ捕まえて。私を殺そうとしたのよ」彼女は息を絞るように訴えた。

「何? どう言うことなの? 詳しく聞かせてくれる?」彼等は突然の彼女の話に面食らった。そして肩に留めてある無線の受話器を取り外すことも無く発話スイッチを押した。

「あー、あー、こちらフタマルロクバン、応援頼む」彼は無線受話器に向けていた顔を他の警官に向け、「ちょっとこの二人に事情聞くからさ、二人残って手伝ってくれる? あと、他の2台は通報の有った暴走族の喧嘩を見てきて。場合によっては本署から交通課の応援頼んで」と命じた。無線機からは「了解、了解フタマルナナ番、フタマルハチ番、現地向かいます」と今更ながら先ほどの応援要請の返答が聞こえた。

「高寺さん、そっちの男の子任せたから頼むよ。山ちゃんは俺と来てくれる?」その警官は仲間の警官に命じた。

「お嬢ちゃんは取り敢えず、こっちのパトカー入ってくれる?」彼は亜紀にパトカーに押し込んだ。

「斎藤さん、ちょっと待ってて。カメラ取ってくるから」山ちゃんと呼ばれている警官は、そう言ってグラウンドの脇に止めてある走ってパトカーに戻っていった。斎藤はパトカーに乗り込み、亜紀に質問を始めた。

「まず名前と住所を教えて下さい」

「一乗寺亜紀、十九歳。埼玉県河越市鯨井です」亜紀は振り絞るような声で答えた。「君、巫女さんか何かなの?」警官がメモを取りながら彼女に尋ねると、

「いや、学生です。これはちょっとコスプレの撮影をしようと思って」彼女はそう誤魔化した。

「まあいいや、ところで何があったの? あのカラスは撮影の小道具かなんかなの? 小道具にしては随分多かったようだけど」斉藤は訳がわからないという調子で彼女に尋ねた。

「彼奴に殺されそうになりました。ちょっとこれを聞いてください」彼女はまるで全力疾走してきたマラソンランナーのように息を切らせ、懐から取り出したアイフォンのボイスレコーダーアプリの再生ボタンを押した。再生されたのは先程の綾人とのやり取りだった。当初は男女の痴話げんか程度と思っていた彼もこの生々しいやり取りを聞き、ただならぬ事が起きているのを理解した。

「あー、こちらフタマルロク番斎藤です。高寺さん、どうぞ〜」と無線で連絡するが返ってこない。

「どうしました〜? 中野〜? 高寺さんどうした〜?」中野というのは高寺の相棒らしいがこちらも返事なかった。異変に気づいた斎藤は、彼の相棒の山ちゃん〜山下にも連絡したが、こちらも返事ない。

「ちょっと、君、ここで待ってなさい。絶対に外に出ないで」異常な兆候を感じた彼は彼女にそう言い残してパトカーの外に出た。彼女は彼を止めようとしたが瞬時の差で間に合わなかった。彼はドアを閉めた直後にくるまの脇でバタリと倒れた。彼の首からどくどくと出血し、周りに血だまりがみるみる大きくなっているのが窓越しからでも伺えた。

「ああ、なんてことを!」亜紀は両手で口を抑えた。この因果な宿命上、人の死は何度も見ているが、やはりショッキングだ。命が失われそれまで、笑ったり泣いたりしていた人々が、単なる炭素、窒素などで構成された物質と同等になってしまうのだから、その喪失感は例え関わりの無い他人であっても、悲しいことには変わりない。その人々に大切な家族や恋人が居ると思うとなおさらだ。それにしてもここで警察に犯人を引き渡すというもくろみも泡と消えたわ。美紀とヒデ君がなんとか巧く事を運んでくれることに期待するしか無いわ。

 本来であれば、綾人が一連の事件の真相に関係あるかを確認して、関係あれば、自首か、警察に協力を促すつもりだったのだが、綾人がこんな想定外の行動をとるとは…。せめて序盤を征していれば、犠牲者をださずに済んだはずなのにと後悔した。彼女がパトカーの車内で自責の念に捕らわれていることなどお構いなしに綾人が窓コツコツ叩きパトカーの外に出ろと合図した。

「出ねえとカラスたちに命令してオマワリさんたち食ってもらうぜ」と綾人がニヤニヤして言う。よく見れば全員かどうか不明だが、かろうじて命は取り留めているようだが、予断を許さない状況なのは確かだ。

「いまから救急車呼べば、助かるよ、こいつら。まぁ、後遺症とか残るかも知んねえけど」綾人は警官のひとりを足で小突いて吐き捨てた。まだ命をとりとめているなら、救護するのが優先だ。亜紀は彼の脅しに屈するしか無く、しぶしぶと車から出た。

「おっと、その物騒なもの、こっちに渡しな」綾人は彼女から紫雨を奪った。

「うわ、糞重いな。こんなもんよくぶん回せるね」神器じんきには契約者、准契約者以外はパワーアシストが働かないため、物理的重量が直接かかるためだ。それでも彼は見事な手さばきでくるくると振り回す。まるで槍の使い手のようだ。

「さ、そこに座りな」綾人は倒れている警官のポケットからピストルと手錠を抜き取る。「そこの柱に手を回して自分でかけろ」亜紀に手錠を渡し命じた。彼女は警官達の命がかかっているため、大人しく彼の命令に従って

柱に手を廻した。

「そうだ、柱に抱っこするようにして」彼はピストルを片手で構えながら、彼女に命じた。紫雨はパトカーに立てかけたままだ。

「こんなことして何しようって言うの?」亜紀は彼を睨みつけた。周りは日没で既に薄暗くなっている。あと三十分持ちこたえられれば、カラスの夜目※が効かなくなるわ。その時がチャンス。でもそんなこと、綾人も十分承知しているだろうから、その前にあっちもけりをつけてくるわね。

「さて、どうやって犯ろうかなあ」と彼は警官から奪ったピストルで、彼女の頬をなでる、さらに胸元に這わせてくる。そして彼女の耳元に顔を近づけると「ねぇ、知っている? 男の子ならピストルって皆欲しがるもんなんだよね。何故かって言うとピストルは男根の象徴なんだよ。だから皆太くて大きいピストルを持ちたがるのさ」とハァハァ言いながら囁き、ピストルを彼女の股間に押し付ける。彼女は恐怖よりも彼の不気味さで気持ち悪くなった。紫雨を取り戻すのは一声呼べばいいだけだし、紫雨があれば手錠なんて簡単に破壊できるけど、それをやるとオマワリさんたちが危険だわ。あれだけ出血していたら、早く助けないと危ない。先ずはあのピストルを何とかしない、と思った。この絶望的な状況で彼女は賭けに出ることにした。

「わかったわ。どうにでもしていいわ。だけど約束して。この人達に救急車を呼んであげて」と彼に言った。

「おお、妙に聞き分けがいいね。でも俺が楽しんでからだ。さてどっからやるかな? 先ずはその顔から切り刻んでやるか?」と彼が言う。

「待って。私まだ男の子とエッチな事したこと無いの。死ぬ前にせめて一度はしてみたいの。良いでしょ? それに綾人くん、お世辞抜きにイケメンじゃない? 私の最初の人としてふさわしいと思うの」彼女は懇願した。

「おお、いいね。クククッ、コスプレプレイなんて、やったことねえしな」彼はチャックを開き、いきり立った男根を露出した。彼はいきなり彼女の袴を脱がそうとしたが、腰紐がきつくて脱がせることが出来ない。

「あわてないで、それより先にキスしてよ」彼女は焦る彼をたしなめる。彼は興奮して、彼女の後ろから抱きつき、その豊満な胸をもみはじめた。そして彼女の耳にハァハァと息をかける。

「早くキスして!」と彼女は彼の方に向いて目を閉じてキスを求める。彼は子犬が母犬の乳を貪るように彼女の唇に吸い付いた。彼女はそれに応えるように唇を開き、舌を彼の口の中を這わせる。彼女はキスをしながら、「ねぇ、あそこがジンジンするの。かわいがってくれる? セックスの前に触ってくれると女の子は男の子を迎えやすくなるの」と彼に囁く。彼は舌を積極的に彼女の口中の舌に絡めながら、右手で袴の上から彼女の股間を弄った。そのとき、彼は手をすべらしピストルを落としてしまった。その瞬間を彼女は見逃さなかった。

「痛っ!」彼が叫び、彼女を突き飛ばす。

「へめへ! はにふんだ(てめえ、なにすんだ)?」彼の口から大量に出血している。彼女が彼の舌を思い切り噛んだので舌が切れたのだ。彼は慌ててピストルを探すが、彼女が舌を噛み切ると同時に蹴飛ばして、手が届かないところに飛ばしてしまったのだ。すでに周りは真っ暗になっているせいですぐに探すのは難しい。彼は怒りに燃えて、指笛でカラスを呼びだしたが、彼女のほうが一瞬早かった。

「紫雨!」と彼女が呼ぶと車の後部座席のガラスを突き破って彼女の手元に飛んできた。

「手錠を破壊して!」と彼女が叫ぶと紫雨はその剣で一瞬にして手錠を破壊した。

 彼が呼んだカラスの大群が近づいてくるのに気づいた彼女はすぐさま紫雨を地面に突き刺し「建御雷たけみかづち!」と叫んだ。すると不思議なことに、空には満天の星が輝いているにもかかわらず、バリバリっ! ゴーン! 耳をつんざくような大音響とともに彼女の持つ、紫雨の剣先に滅多に見れないほどの閃光とともに落雷した。


 美紀は陽奈を自宅近くの亀屋駐車場で下ろすと秀明を乗せて、GPSの示す方向へ車を走らせる。現場近くまで来た時、突然大轟音とともに雷が落ちるのが見えた。秀明はあまりもの轟音と閃光に思わずびくりと身体が痙攣したかのようになった。

「うわ、凄え雷! あれ、でも月出てるよなあ」彼は滅多にない大きな落雷に驚き、つい大声で叫んでしまった。

「亜紀姉ぇ、建御雷たけみかづちを使ったな」美紀がつぶやいた。

「何ですかタケミカズ《・》チって?」吉宗を抱えた、秀明が美紀に尋ねる。

「一種の音響兵器だよ。大轟音で敵の聴覚を麻痺させて気絶させる。人間なら一時間位は気絶するし、聴覚が数日麻痺する。場合によったら、鼓膜も破けるし、衝撃波も半端ないからまともに受けると数メートルは吹っ飛ぶ。もっとも使った方もただじゃすまないけどね。シールドと巫女装束でかろうじて守られるから、多少はマシかな」

 彼女らが現場付近に着くと、グラウンドにはパトカー数台が止まっており、大量のカラスの死骸に混じり、警官を含む人が数人倒れていた。美紀はヘッドライトで倒れている人が照らされるように、止めると車備え付けの発煙筒を取り出し着火した。秀明もアイフォンの懐中電灯モードにしてグラウンドを照らした。

「ヒデ君、こっちこっち!」美紀がフェンスのところで倒れている亜紀を発見した。着衣が乱れて、怪我もしている。

「亜紀姉ぇしっかりして。なにが有ったの?」と美紀が亜紀を軽く揺すると、亜紀は「ううん」と声を上げて目を開ける。彼女は気絶していた所為でまだ少しぼーっとしていたが、徐々に正気を取り戻してきた。現場には秀明の嘘電話で暴走族の集会を取り締まりに来たパトカー二台がやってきた。

「おーい、君たち大丈夫か?」パトカーから警官を降りた。彼等もさっきの雷に気がつき此処にやってきたのだ。そして倒れている同僚と綾人に気づくと、状況の説明を求めてきた。美紀は亜紀を抱えながら「すみません、ボク達も今来たところで。それよりも救急車お願いできますか? けが人がいるんです」と答える。

「中野さんはもうダメです。高寺さん、斎藤さん、山下さんはまだ脈があるので救急車に大至急来てもらうようにします。3人共首からかなり出血してるので、これから応急手当します」けが人の状況を確認していた警官の一人が肩の無線を握った。

「あ、こちらフタマルナナ、フタマルナナ、高橋です。斉川緑地で大量のけが人あり、応援と救急車要請します。けが人は五人」

「こっちは口切っているようですが、命に別状ないようですね」綾人の様子を確認した警官は言う。

「そこの三人、怪我は無いか?」と美紀の近くにいる警官が秀明たちに懐中電灯を向けた。

「こっちは一人怪我してます」彼女が警官に答えた。

「どうだ、意識はあるのか? 大丈夫のようだな。ちょっとこっちは三人重体だから、お嬢さんは少し我慢してくれ、いいね。それからそこの二人、ちょっと話聞きたいから署まで来てくれ。そっちののビーエムはお宅のか?」

「ええ、そうです」と美紀が答える。「でも、姉を病院に連れて来たいんです。救急車は来るんですか?」

「大丈夫だ。ただ、怪我がひどい方を優先するから、少し我慢してくれ。いざとなればパトカーで搬送するから」警官の一人が応えた。

「おまわりさん、話が……」亜紀が疲労と体の痛みに絶え絶えになりながら口を開いた。

「これを聞いてもらえますか」亜紀はアイフォンで録音した音声を再生する。

『まぁ、めんどくさいからね、ここで俺の慰み者になってくれよ……(何羽ものカラスの声と羽音でよく聞き取れない)

ウッハ、まじすげえわ……(笑い声と羽音とカラスの声)

あんたが悪いんだよ、俺の周りを嗅ぎ回って。妹のところもいったそうじゃないか? ……

関係ないわけ無いでしょ? ……(カラスの声と羽音)

アンタみたいな可愛い子がぐちゃぐちゃになった死体でオナニーしたらどんだけ気持ち良いか思ってさ、最近はおっさんとかばかりで飽きちゃったんだけどね……(カラスの声と羽音)』

「ちょっと……」警官はその猟奇的な録音内容に戦慄した。

「わかりました。その携帯少しお預かり出来ますか? 証拠として検証したいので。それで、相手の男は?」と言うと、亜紀は綾人の方を指差す。

「わかりました。とりあえずお二人とも怪我されているようなので回復されたら、詳しく事情をお聞きします」と警官は言う。

「おまわりさん、あの男には気をつけて下さい。信じて下さらないと思いますがカラスを訓練して手懐けているみたいで、人を襲わせることができるようです。実際、私も襲われたんですが……」

「ああ、分かりました」警官は少し怪訝な顔をしたが、とりあえずそれ以上は何も言わなかった。そんな空想めいたこと俄に信じられ筈も無い。

「しかし、このカラスの死体、まさかあなたお一人で?」と警官は訝しげに尋ねた。

「さっき大きな雷落ちたとき、皆感電死したみたいです」亜紀はそう言ったきり気を失ってしまった。


 

※亜紀は勘違いをしており、カラスは実際には梟と同じく夜目が効く

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