6月18日(火)放課後

 放課後、僕は寝たふりをして教室に残る事にした。


 淳子があまりの「頼み事」の多さにバイトを休み、一人で残って作業をするというのを小耳に挟んだからだ。



 淳子の事が心配だったこともあり、誰かがいなくなったタイミングでこっそり手伝ってやろうと、机にうつ伏せになりながらタイミングを待った。



 だが、この寝たふりもそろそろ2時間に到達しようとしている。



 由美という女が一向に帰るそぶりを見せないのだ。


 淳子と由美という女は、一緒におしゃべりをしながら膨大な量の「頼み事」を二人で少しずつ消化している。


 薄目を開けて観察を続けているが、その様子は今までと変わらない様に見えて、やはりどこかぎこちない。



 その空気に耐えきれなくなったのか、淳子が


「大丈夫だよ。そんなに無理して気を使わなくても。私は平気だから」


 と、由美という女に笑顔で静かに言った。



 由美という女の動きがピタッと止まり、その後少しずつ震え始めたが、淳子の方は笑顔のまま、せっせと「頼み事」の文化祭での看板に色をつけている。



 由美という女は、二、三分は細かく震え続けていたが、そのまま何もなかったかの様に再び動き出した。



 僕は、帰るタイミングも起きるタイミングも見失ってしまい、そのまま眠りについてしまった。



 起きた時にはすでに二人の姿はなく、夕暮れに「頼み事」の看板が照らされていた。




 「3-4 みんなHappy!パンケーキ!」




 普段の淳子の描く絵と比べ、地味な茶色と無理やり派手にされた装飾が鼻についた。

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