佐伯淳子に関する噂の真相

 学校で流れている噂の内容はこうだ。



 1、佐伯淳子の母親は、淳子が8歳の時に保険金目当てで自分の夫を殺し、淳子も犯行に加担していた。あんな可愛い顔して良い人ぶってはいるが、人殺しは何を考えているかわかったもんじゃない。


 2、あの「頼み事」へのお手伝いは、こっちに恩を売るだけ売って裏で何か企んでるのかもよ。



 この噂は半分だけ合っている。違う点は2の「頼み事」に関してで、淳子は何も企んではいない。



 ただ、1についても少し情報が足りない。



 正確には「無理やり殺人と死体遺棄に加担させられた」が正解だ。



 淳子の母親は夜な夜なホスト遊びにはまってしまい、至る所で借金を作った。


 そしてさらに最悪な事に、昔の元彼がヤクザ屋さんの関係だったらしく、ヤミ金融にも相当な借金を重ね、とどのつまりが保険金殺人となった。



 淳子は、その時に寝ている父親の両手を縛り抑えつけるという「頼み事」を母親からお願いされたのだ。



「ママの事が好きでしょ?好きならお願い。ママいなくなっちゃうわよ?」



 この呪文に抗う事ができずに、淳子は必死に父親の手を押さえつけた。父親の手が冷たくなっても、淳子はその手を離せなかった。



 そして父親の体を山に埋める時も、淳子は「頼み事」をされた。



「ママの事が好きでしょ?好きならお願い。ママいなくなっちゃうわよ?」



 だが、8歳と29歳の女が掘った穴はさほど深くもなく、3日後に事件は敢え無く明るみになる。


 

 当時のニュースで、大きく見出しになった文言はこうだ。



「本当はお父さんも大好きだった。お父さんに会いたい。」



 これが噂の真相だ。


 淳子から直接話は聞いたことがないが、僕の調べる限りでは、これ以上の真実はない。

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