第6話 炎上

トネガワはある時、いつものように反論・指摘ブログを書いていたが、ちょっと油断したのか、ハナからそう言う思考だったのか、かなりの極論を書いてしまった。前提を書かずに、だ。

困った事に、その発言には少なからず政治的な発言が含まれていた。

最初、トネガワはそれに気がついていなかった。いつもの感じで2ちゃんねるとTwitterで公開しただけ。


いつものようにスマホでリアルタイム読者数を見ると、いつもよりも桁外れに数が多い事に気がつく。


結果、トネガワのブログが悪い方向で炎上してしまう。"バズ"ではない、"炎上"だ。


トネガワは初めて大多数に”叩かれる”側へと転じてしまった。それも今までの界隈の人達だけではなく、政治的な部分からポリティカルに敏感な人達も巻き込んでしまっている。


ポリティカルな発言やブログのエントリーの普及力は大きい。予想以上に大きい。それが過激な発言であればあるほど普及力は指数関数的に増えていく。フォロワーが少なければそこまで影響は無かっただろうが、トネガワはもはや”影響力のある発信者”である。


焦ったトネガワは火消しに奔放する。自分の3000人いるフォロワーが自分を擁護する発言をリツイートしまくっていった。


そして、そう言う意図で書いたのでは無いというエントリーを挙げたが、それが火に油を注ぐ形になってしまう。結果的に誤解をさらに歪曲させる形になってしまった。


トネガワは初めての”炎上”に焦っていた。経験したことがない。着火は得意だが、火消しの経験は無い。


テレビのニュースを見ていればそういう事件で溢れている。現実社会と一緒でネットも初動が大事なのだ。

そう、初動を間違えれば、後手後手で失敗するのは世の常なのである。


そんな彼のブログに対して、それを指摘するブログがついに出てしまう。それはスルメ男のブログだった。


トネガワは自分の位置を確保しようと、いつものようにアンケートをとった。

驚くべき事に、1:9の割合でスルメ男が正しいと言う結果になってしまった。


「さすがにやり過ぎ」

「ウザくなってきた」

「政治に繋げるのは無いわー」

「今回の件で一気に冷めた。さよなら」


彼のフォロワーは一気に激減してしまった。

政治的な発言の部分も一人歩きして、政治団体などからも批判を浴びるようになってしまう。


確かに、政治家でも芸能界でも一緒で、目立つ人は叩かれる。ネットの世界ではそれが一般人にまで及ぶのだ。ネットは一般人対一般人だ。それも匿名性が強い。ミュートしきれない部分だってある。


トネガワはブログを閉じる事にした。Twitterのアカウントも消した。トネガワの精神のキャパシティーを超える批判に、耐えきれなくなってしまったのだ。トネガワはこのままでは精神を壊すと判断した上での結果だ。

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