5ルート目 麗羅と莉々愛

 あれから結局、迎えに来た銀髪妹の莉々愛と両親と食事に行ったが、結局、俺と両親にある見えない溝は埋まらなかった。初対面だし仕方ないだろう。


 そしてどうやら両親は俺に期待などまるでしてないことはわかった。久々に会った息子に罵詈雑言の数々。むしろ好都合だ。変なプレッシャーなどいらぬわ戯けめ。


 帰り道、隣ではトボトボと覇気をなくした莉々愛が「ごめんね兄上・・・」と謝ってきた。どうやら莉々愛は両親が俺をどう思っているか聞かされていなかったようだ。


 いやいや、どういう設定だよ。妹じゃないのかよ。義妹か?逆に燃えねーな、おい。


 莉々愛を慰めつつ歩いていると向かい側から数メートル先に見慣れた金髪が目に入った。


「おーい!麗羅ー!」


 思い切り呼び捨てで呼んでみた。初めての試みである。


 すると、ズダダダダダダッと勢いよく駆け寄ってきた。


「あ、ああああアンタに呼び捨てで呼ばれる覚えはないんだけどっ!?」


 そういう九龍院 麗羅は赤いドレスを身にまとっていた。ツインテールを下ろしているせいか少し大人っぽい。


「あれだな。ツインテールもいいけど下ろしてるのもいい感じだな。普通に可愛い」


「はぁあああ!?か、か、可愛いとかなんなの!?あんたどうしちゃったの!?」


 いやいや、お前がどうした。


 顔を真っ赤にしながら慌てふためく様子はなんだかマウントとったみたいで心地良い。やはりツンデレだったか、他愛ないぞ。


「どうした・・・って、いつも思ってたよ。どう見ても学園中でもトップクラスに可愛いじゃん。麗羅のそんな姿を見れて俺は幸せだよ」


「いや、それは普通にキモい」


 ここぞとばかりに決める俺。キラッと輝かせる歯と油肌から滲む汗のコンビネーション。


 さっきまであんなに顔を赤くしていたのがまるで嘘のように真顔である。マジ主人公補正ないな、俺。いや、あるか。マイナス方面で。


「なんなのじゃこの失礼な女子おなごは。兄上の知り合いかの?」


「は?兄・・・上・・・?」


 自身を指差す設定妹と俺を見比べる九龍院 麗羅。信じられないとでも言いたげだ。大丈夫だ信じなくても。俺も信じてないから。


「ありえない・・・。アンタみたいなピザにこんな可愛い妹って・・・」


 おい、ピザとか略すな。いちいち口撃しないと気が済まないのか。


「兄上の女子おなごの趣味にどうこう言うつもりは無かったが、このように口の悪い女子は頂けん。兄上にはもっと淑やかな女子が似合う」


「おい、莉々愛りりあ。一応俺の同級生だから敬語でだな・・・」


「・・・兄上は冗談が上手い。こんな平原のような慎ましい胸しかない女子おなごが兄上と同級生などと」


「は、はぃいいいいいいい!?」


 莉々愛の目はドレスでくっきりと浮き彫りになった細身の体躯の一部分に目をやると、クスッと笑う。


 どこを見られて笑われたか気づくと再び顔を真っ赤にする九龍院 麗羅。

 そして自分の胸と莉々愛の胸を見比べると、口を開きかけてやめたたようだった。


 まあ、莉々愛の方が大きい。圧倒的勝利というわけでもないが、それでもはっきりとわかるぐらいには発育していた。


「ぎっぐぐぐぐぐっ・・・死ね!轟き死ねっ!」


 そう俺に吐き捨てると寮の方へと駆けていってしまった。


 ・・・あ、こけた。「キッ」と睨んできたかと思ったら今度こそ駆けていってしまった。


「お前、結構口悪いのな」


「兄上はもっと見る目を養ったほうがいいのじゃ。あんな下品な金髪の娘にうつつを抜かすなど」


 うつつは抜かしてないけどね。いや、いつかはラブチュッチュしたいけれども。


 俺達もゆっくり歩きながら寮へと向かう。さっき走っていった九龍院 麗羅に追いつかないように。これで追いついてしまったらもう色々気まずい。

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