3ルート目 親友ポジ的イケメンの月山くん

 俺は泣いていた。寮の2段ベッドの1段目で清潔な枕を涙で濡らしていた。


「そこまで言わなくてもいーじゃん。俺だって太りたくて太ったわけじゃねーのにさっ。なんだよ嫌いって。俺だって嫌いだよブース、ブース」


 俺の恋は散った。なんだよあの神様。何がギャルゲーみたいな世界だよ。ここまで苦しかないよ。これはもはやモブ以下だよ。


「はあ・・・好感度とかとかあれば少しは楽になるのになあ」


 ––––––《ステータスオープン》


 脳内で機械的な音声が響くのと同時に目の前に半透明なウィンドウが開かれる。


 ◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️

 LV:1

 名前:田中 太郎

 身長:160cm

 体重:105Kg

 MP:0/1

 性格:不真面目 頭が悪い 気持ち悪い ピザデブ 残念な思考回路 遅れてきた思春期 高望み 自分勝手 お金好き 変態 スケベ ニート 童貞

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 まさかのステータスウィンドウ出現に目を見張るが・・・これ二度と開かないわ。


 なんて意味のないステータスだ。ニートと童貞に関しては性格ですらないし、俺も目を向けていない自分のダメな部分もしっかり記載されている。てか5Kg増えてる。


(MP?MPってなんだ?)


 この世界は現実でファンタジーではないはずだ。MP・・・マジックポイント?


 わけわからん。気に入らん奴がいたら燃やせるとか?殺人鬼になりたくはないんだけども。


「う〜ん、う〜ん」と唸っていると上のベッドから声を掛けられる。


「田中、お前マジうるさい。独り言も大概にしてくれよー」


 話しかけてきたのは、ルームメイトの月山つきやま しゅう。イケメンであり、学年一の頭脳を持つ秀才である。天才ではないというところがポイント高い。発言にも嫌味がないので、学年底辺の頭脳である俺とも仲良くしてくれる。俺的親友ポジ。


「聞いてくれよ〜、今日はかくかくしかじかでさ〜」


 ここは謎にゲーム仕様である。『かくかくしかじか』と言えば、今日の様子を端的に伝えることが出来るのだ。


 とりあえずMPのことは置いておく。1しかないし。役に立ちそうにないし。


「・・・まあ、言い過ぎかな、とも思うけど田中も田中だな。ストーカーは犯罪だからな」


 ストーカーは言い過ぎだろ、と不貞寝するピザデブ。


「それに、ぽっちゃり好きな女子は一定数いるかもだけど、田中が好きになった女子がぽっちゃり好きという確率は中々に低いと思うぞ」


「・・・俺は俺を外見ではなく内面で好きになってくれる心の綺麗な女の子が好きなんだよ。その点、久遠 幽花ちゃんは違かったわけだ」


「まあそういうこと言ってる時点で好かれる内面でもないわけだけど・・・」


「今は正論なんて聞きたくないな」


 耳を塞いで「あー、あー」とはぐらかす。上から僅かに溜息が漏れるが聞かないフリだ。聞かないフリ。


「ダイエットしてみようぜ。俺も付き合うからさ。コンプレックスが無くなれば他人の見る目も変わるし、もしかしたら九龍院さんも見直してくれるかもよ?」


 ふんっ、九龍院 麗羅がなんぼのもんじゃい。あんな量産型ツンデレに好かれたところで・・・好かれたところで・・・っ!!


「よし、俺ダイエットするわ」


 俺はダイエットを決意した。あの生意気な金髪ロリを攻略してやんよ!!


 攻略してやんよ!!!

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