第27話 ちょっと煽り耐性低すぎじゃないか?
「これからの時間は魔物の動きが活発化してくる。
駆け出しのお前らが死ぬのは勝手だが、死体の回収に駆り出されるのはたまらん。
悪いことは言わん、怪我する前にとっとと帰れ」
外に出るための手続きで門衛にIDタグを見せるなり、こんなことを言われた。
スキンヘッドが眩しい、いかにもって感じのいかついおっちゃんだった。
南側の事務方っぽい門衛とは違って、魔物が出るというこちら側はある程度戦闘ができないとダメなのだろう。
「しかもなんだ奴隷なんぞ連れて。
人気のない場所でしっぽりやりたいなら、街中でヤれよ。
くそ、こっちはむさい男の相手ばかりだってのに……」
……どうやら最後のが本音のようだな……。
「えっと、だな。
色々細かいことは省くが、そういうのじゃあない。
こいつはパーティメンバーだし、外に出るのはクエストのためだ」
冒険者ギルドでクエストを受注した際にもらった、クエスト受注書を見せる。
というか、本来は最初にそれを見せて外に出る手続きをするはずだったんだが、タグを見た瞬間にこれだったからな。
やれやれだ。
「……ふぅむ。
こんな駆け出しに任せるような内容じゃないのは腑に落ちんが、確かに本物だな」
「だろう?
だから、早く手続きを――」
「だが、それとこれとは別の話だ。
多少は鍛えているのかもしれんが……お前みたいなのが今から出ていっても魔物の餌になっておしまいだよ。
餌になるならいいが、血の臭いに魔物をよびよせられたら敵わん。
悪いことは言わん、その依頼は破棄してもっと身の丈にあったクエストを受けるんだな」
そう言って受注書を突き返し、追い払おうとしてくる。
さて、どうしたものか。
一度受けた以上、依頼を放棄するつもりはない。
とはいえ、このままでは外に出ることすらできない。
何を言った所で無駄だろう。
と、なれば……
「なあ、それならあんたと勝負して勝てば文句はないよな?」
「……あぁ?」
わざと、煽るような言い方にしてみたのだが。
あまりにも簡単に釣れすぎだろう。
どれだけ沸点が低いんだよ。
「あのな、わかってんのかお前?」
「もちろん。
俺たちは外に出るためには、あんたに実力を示せばいいんだろう?」
ふ、こめかみがヒクヒクしてるのがよくわかる。
ちょっと煽り耐性低すぎじゃないか?
まぁ、口で説得、なんてやってる場合じゃないか。
調子に乗ってるやつは、力で追い返したほうが早いしな。
「その自信がどこから来るのかわからんが……。
いいだろう相手してやる」
◇
「アキテルさま……」
心配そうにシノアが見ている。
傍から見れば、筋骨隆々のおっちゃんを相手にひょろっとした俺だからな、わからなくもない。
だが、強さとは筋肉ではないことを(もちろんそれも大事だが)見せつけてやろう。
「準備の時間くらいは待ってやる」
大きく弧を描いた獲物を肩に担いで門衛のおっさんが余裕を見せる。
なんというか……見た目にマッチしすぎていて、危うく吹き出しかけた。
門衛というか、山賊の方が似合ってるんじゃないだろうか。
「ふー」
向かい合い、息を整えると腰に履いたアダマンタイト刀を抜き放つ。
すでに『二刀』のスキルは解体済みなので、今回は一本だ。
といっても、今後二刀流で戦わない、ということではない。
そうではなく、『エクストラスキル』の存在が確認されたことで、修練により文字を使わずに習得できるのでは、という目論見による。
実際やってみて手数が増えるのは良かったし、『剣舞』スキルとの相性がとても良さそうではあったし、一度スキルを使ったことでなんとなくではあるが感覚は掴めた気がするからな。
さて。
やるか。
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