第15話 そうか、これが『魔法』か
「ふぅ、やっと終わったか」
トロールの首を切り落とした所で、一息つく。
再生する、というのがここまで厄介だとは思わなかった。
やれやれ。
ぴろりん
スキル:『剣舞』を習得しました
お? なんだ?
刀についた血を振り払っていると(一振りでキレイになるとか、アダマンタイトは撥水性にも優れているようだ)、間抜けな音とともに謎のアナウンスが頭に響く。
と、同時に、スキルリストが勝手に開いた。
スキル『剣舞』 熟練度5
:
発動条件→刀剣類を振るう際、途切れることなく4連撃を決めること
刀剣類を踊るように振るうことができる。熟練度とともに、動きに無駄がなくなっていき、長く続けられるようになる。
エクストラスキル……おいおい、まだこんな秘密機能が隠れていたのか……。
文字の消費はないし、マイナスにはならないからいいが、説明書にも一切出てこなかったぞ……。
まぁ、
カタナや二刀などのスキルの消費SPは抑えられるし、何より攻撃が続けばダメージが上がっていくのはいい。
あの動き、忘れないようにしよう。
さて。
長い長い戦闘も終わり、すっかり夜も更けてしまった。
この疲れの中、野営しないといけないのも辛いものがあるな。
っと、その前に。
あの馬車の様子を見ておいた方がいいな。
せめて一人くらいは生存者が――
「イウシ・シキ・シアロマ
ンアラリ・マルケイ!」
ボアッ!
謎の言葉とともに体の横を『炎の塊』が通り過ぎる。
まだ敵がいたのか!?
……『炎』の『塊』、だと?
なんだそれは、炎がひとかたまりになって飛んでいくとか、超常現象にもほどがある。
……そうか、これが『魔法』か!
くそっ、いくらチートスキルがあるからって、連戦な上、得体にしれないモノを相手にしなければならないとか、どんだけハードモードなんだよ、この世界。
一度鞘に収めたカタナを抜き、臨戦態勢をとる。
油断なく炎が飛んできたほうをじっと見つめると、倒れた馬車の近くに一つだけ動く影が。
後ろで燃え盛る炎のおかげで、街灯など存在しないながらも様子を伺う事ができる。
油断なく見つめるが、他に動く者はない。
馬車まではおよそ30m。
警戒を緩めず、少しずつ近づく。
どうやら動いていたのは少女のようだった。
くすんだ茶色がかった長い髪、尖った耳に青い瞳。
布に穴を開けただけの貫頭衣だけを身に着け、足は裸足のまま。
薄い布地のせいか、ほとんど肌が透けて見えてしまっている……む、やせ細っている割に意外と胸がおおk……って、そうじゃない!
いや、別に本当は大きくない、というわけではなく、しっかりと重量感があって張りもある立派なものだというのは間違いないんだが、そうではなくこんな簡素な服しか与えられていないことが気がかりなわけであってな!
決して、薄汚れている割にきれいな顔だな、とか、腰ほっそ! とかそういうことに気を取られているわけではなく!
……待て、俺は誰に言い訳をしているんだ?
……落ち着け、俺。
と、とりあえずそれは置いておいて。
気になるのは、鎖のついた金属製の大きな首輪だ。
この世界の常識はわからないが、人に鎖を繋ぐ、などという行為は普通ではありえない、はず。
と、なれば……いわゆる『奴隷』というやつなのだろう。
チラっと荷台に目を向けると、檻らしきものも見える。
つまり、売られていく途中だった、ということか……。
「君だけか?」
辺りに動く気配がないことを確認し、威圧的にならないようしゃがみこんで目線を合わせながら声をかける。
「イークキーカキーシミーッ?」
……そうだった、言葉は通じないんだった。
できるだけ残っている文字でなんとかならないか、と考えてみるも…… くそ、翻訳スキルを作るにはどうにも文字が足らない。
なにかを
ある程度熟練度を稼いだスキルはそのまま残しておきたいし……と考えていると、不意にその少女が口を開く。
「ア=ンイ・コカラカロン」
先ほどと違い、歌うように言葉を紡ぐ。
同時に右の人差し指を自分の唇に、左の人差し指を俺の唇に当てる。
「なっ!?」
驚いている間に、指と指を光の糸が結び、消えた。
「これで、言葉、わかる?」
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