第14話 なんてきれいなんだろう

★???視点★


「ぅ……」

 ここは、どこだろう……?

 記憶を辿るも、いまいち記憶が判然としない。

 目覚めた場所は薄暗く、足元には……鉄格子??

 首には大きな首輪がはめられ、鎖が垂れ下がっている。


 そうだ。

 奴隷商に馬車に乗せられて、売られて行くところだったんだ。

 それが何か騒がしいな、と思ったら突然横倒しになって……。

 うっ……意識がはっきりしてくると同時に頭と腕に痛みが出てきた。

 思いっきり叩きつけられてしまったみたいだ。


「ウグォアアアァ!!!!!」


 この囲われた空間の外から、突如雄叫びが聞こえる。

 馬車が横倒しになった原因の魔物だろうか。


 逃げなきゃ……!


ジャラッ


 けど、この鎖に檻だ。

 残念ながら囚われの身である私は、ここから動くことはできない。


 せめて檻が開きさえすれば……って、開いてる!!!!!

 そっか、倒れた拍子に壊れたんだ!

 鎖は……うん、どこかに繋がってはいない。

 聞こえる音は、魔物のものと思われる叫び声だけ。

 いや、これは、悲鳴??

 てことは、誰かが戦ってるの?


 鎖を手繰り寄せ、できるだけ物音を立てないように檻から出る。

 そっ、と外を伺うと――


 そこには、不思議な鎧を着て、踊るように二本の剣を振るい、巨大なトロールを圧倒している人がいた。


 なんてきれいなんだろう。

 流れるような動きには一切の淀みがなく。

 一振りごとにトロールの腕が裂け、血しぶきが舞う。

 それすら美しいと感じてしまう。


 急いで逃げなければいけないのに、思わず見惚れてしまう。

 そうしてる間に舞台は終わりを告げ、トロールの首と共に幕が降りた。

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